映画は映画館で


『北の零年』にみる大スター吉永小百合(2005年1月)

監督:行定勲、脚本:那須真知子、音楽:大島ミチル

キャスト:吉永小百合、渡辺謙、柳葉敏郎、豊川悦司、石田ゆり子、香川照之、石原さとみ

 

明治4年、淡路の稲田家は明治政府によって北海道移住を命じられる。稲田藩士・小松原英明(渡辺謙)は先頭にたって静内の開墾に挑むが稲は根付かず、開拓者たちの生活は困窮してくる。英明は農業技術導入のため札幌へと旅立つが音信普通となる。妻の志乃(吉永小百合)と娘の多恵は、英明を捜しに旅に出て吹雪にあい、アメリカ人の牧場主に救われる。5年後、牧場を作るに至った志乃だったが……

朝イチでカミさんと初回上映を観に行きました。もちろん50歳以上アベック割引でね。平日というのに、ほぼ満席。8割方は女性で、大半は千円で入場できるような人たちばかり。もちろん数少ない男性も千円入場者で〜す。

でもって、これはスターとしての吉永小百合の映画です。主人公が吉永小百合だから成り立つのであって、他の女優だと観るに耐えないものになっていたでしょうね。

内容だけみると、出来の良い脚本とはいえません。“このようにしたい”と思うあまり、あってはならぬ事件や動機をムリヤリ生み出そうとしているんですよ。その空々しさを観客に気づかせず、納得感を持って最後まで見せてしまうのは、スター吉永小百合の存在感です。

例えば、百姓たちが荒地を耕しているのを見て、吉永小百合も鍬を持って荒地を耕しはじめます。武家の妻女が、伏線もなく百姓仕事を始めるのはおかしいのですが、誰もが持っている吉永小百合のイメージと一致するので不思議に思わないんですね。

冬の最中に夫を捜して旅立つのは自殺行為で、吹雪の中で偶然助けられるのは、ご都合主義もいいとこです。だけど、顔に雪が降りかかる吉永小百合のアップ映像を見たら、それだけで感動してしまうんですよ。これが演技云々を超越したスターの魅力ですね。吉永小百合は前では渡辺謙も小さく見えました。吉永小百合のスターとしてのスケールの大きさを感じさせる作品で〜す。

 

 

『アレキサンダー』にみるアレキサンダー大王の真実(2005年3月)

プトレマイオスが残した「アレキサンダー大王史」をもとに描いたアレキサンダー大王の生涯。紀元前356年、アレキサンダー(コリン・ファレル)はマケドニア王子として生まれる。父フィリッポス王(ヴァル・キルマー)と母オリンピアス(アンジェリーナ・ジョリー)は憎しみあっており、孤独な少年時代をおくる。しかし、ヘファイスティオン(ジャレッド・レト)との絆や、アリストテレス(クリストファー・プラマー)のもとで一緒に学ぶ学友たちが彼の心の支えとなった。母を離婚し、若い妻との婚礼の日、フィリッポスは暗殺され、アレキサンダーは20歳で王となる。やがて、ギリシャを統一し、宿敵ペルシャを打倒するために東征を開始する……

アレキサンダーの史実の中で、父フィリッポスの暗殺と、アレキサンダーの突然死が謎とされているのですが、“なるほど”という解答になっています。古代史や史劇の好きな人は楽しく観ることができたんじゃないですかね。

ガウガメラの合戦やインドのジャングルでの象部隊との合戦は見応えがありました。これは映画館の大画面と大音響でないと味わえない興奮です。父の死後、分裂したギリシャ都市国家との合戦もアンソニー・ホプキンス(晩年のプトレマイオスで、この映画の語り部)のナレーションでサラッと流すのでなく、映像で表現して欲しかったですね。アレキサンダー戦史において、ギリシャ統一、ペルシャ征服、インド遠征は大きなポイントですからね。

私としては、若さゆえに一途に理想に燃える英雄(世界を変えるのは若者の行動力だ)としてアレキサンダーを描いて欲しかったのですが、結果としてはノイローゼ気味のアレキサンダーになっていました。監督がオリバー・ストーンでは仕方ないか。

 

テンプル騎士団の財宝は『ナショナル・トレジャー』(2005年5月)

テンプル騎士団の財宝をフリーメイソンが隠し、その財宝を何代にも亘って探しているのがゲイツ家でして、祖父(クリストファー・プラマー)から聞いた“シャーロット”の言葉の謎をベン・ゲイツ(ニコラス・ケイジ)は、人の名前でなく船の名前ということを解き明かし、その船を探しに北極にやってきたところから物語は始まります。シャーロット号は見つかりますが、船中に財宝はなく、出てきたのはパイプ。そのパイプに刻まれた暗号を解読すると、“アメリカ独立宣言書”に財宝へ通じる地図が隠されていることがわかります。ベンに資金を提供していたイアン(ショーン・ビーン)は、独立宣言書を盗んで財宝を奪おうと考え、ベンを船中に閉じ込めて殺そうとしますが……

ニコラス・ケイジの馬面はどこかマヌケな感じがして好きになれないのですが、内容は宝探しの謎解きにアクションを絡めた良質な冒険映画になっていました。ドンパチとガン・アクションばかりが跋扈する冒険活劇が多い中にあって、謎解きに力点をおいたのは嬉しいですねェ。ジョン・タートルトーブ監督の坪を心得た演出で家族で楽しめるディズニー映画に仕上がっています。

父親役のジョン・ボイト(丸顔なので親子に見えない)、FBI捜査官のハーヴェイ・カイテルが渋いところを見せますが、ダイアン・クルーガーが『トロイ』の時より魅力的で良かったで〜す。

 

格闘映画の『ブレイド3』(2005年5月)

ヴァンパイア・ハンターのブレイド(ウェズリー・スナイブス)は誤って人間を殺した為にFBIに逮捕される。相棒のウィスラー(クリス・クリストファーソン)はFBIとの銃撃で死亡するが、ハンニバル・キング(ライアン・レイノルズ)とアビゲイル(ジェシカ・ビール)によってブレイドは救出される。彼らはヴァンパイアーと戦っている“ナイト・ウォーカー”の一員で、アビゲイルはウィスラーの娘だった。ドラキュラとも呼ばれていたヴァンパイアーの始祖・ドレイク(ドミニク・バーセル)が4000年の眠りから目覚め、人類は最大の危機を迎える……

デヴィッド・S・ゴイヤー監督作品。アクションの連続で退屈はしませんが、物語に深みはありませんね。テレビゲームの世界ですな。様式美は端から期待していなかったけど、ドラキュラがマッチョマンというのはねェ。おまけに変身した姿は宇宙怪物ですよ。マッチョマンのウェズリー・スナイブスと格闘するのだから仕方ないかな。それでもキング・オブ・ヴァンパイアには、自ら血を捧げたくなるような色気が必要で〜す。

ヴァンパイアーを殺しまくるジェシカ・ビールは瑞々しくて中々よろしいです。今後に注目する必要あり!

 

 

 

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