映画は映画館で(2005年)


SF大作?『宇宙戦争』(2005年7月)

離婚しているレイ・フェリエ(トム・クルーズ)は、ボストンの実家に行く身重の元妻から息子のロビー(ジャスティン・チャトウィン)と娘のレイチェル(ダコタ・ファニング)を預かる。ところが、宇宙人の侵略が始まり、彼らはボストンに向けて脱出を図るが……

スティーブン・スピルバーグの演出は、観客を怖がらせる映像テクニックは素晴らしいのですが、人間ドラマの部分はウ〜ン。家族愛がテーマなんでしょうが、表面的なもので深さはありません。薄っぺらく、ご都合主義。とにかく、全体的にアレレという箇所が多すぎます。

まず、宇宙人が地球侵略マシンを百万年前に埋めていたという設定なのですが、何故かそのことを市民たちが知っている。普通、何がなにやら解らないんじゃないですかね。それと、百万年前だとかなり地層が変っていますよ。海底になっていたら使えない。

マシンが現れた時、全ての自動車が動かなくなるんですが、主人公の自動車はコイルを換えたので動きます。他にもそれに気づいた人がいそうなものだけど、アメリカ人はバカばかり……?

助けてくれたオギルビー(ティム・ロビンス)が狂信者だからといって殺すのは、主人公の行動として頂けません。

ネタバレになりますが、あの状況で死なずに、離ればなれになったロビーが主人公より先にボストンに辿り着いていたのは何故なんだァ。

地球を自分たちの星に変えるため赤い草(レッド・ウィード)を繁殖させるのですが、原作は侵略者が火星人だから意味があるんですよ。火星は赤い星ですからね。オマージュになっていませんよ。

オマージュといえば、1953年の『宇宙戦争』のジーン・バリーとアン・ロビンソンが祖父母役でカメオ出演していたのは嬉しかったで〜す。

 

『フォー・ブラザーズ 狼たちの誓い』は『エルダー兄弟』のリメイク(2005年12月)

食料品店で殺された養母の家に肌の色が違う4人の兄弟(マーク・ウォルバーグ、タイリース・ギブソン、アンドレ・ベンジャミン、ギャレット・ヘドランド)が集まる。孤児で名うての不良だった彼らを我が子として育ててくれた養母の復讐をするために、犯人を捜し始めるが……

原案は西部劇の『エルダー兄弟』で、『シャフト』で先代シャフトのリチャード・ラウンドトリーをそのままの役で出演させるという粋な計らいを見せたジョン・シングルトン監督なので、『エルダー兄弟』へのオマージュ・シーンを期待したのですが、残念ながらそれはなかったですね。

『エルダー兄弟』は実の兄弟でしたが、義兄弟にしたのは正解でしょうね。『エルダー兄弟』の兄弟全員が牧場を捨てて旅に出ているという設定には無理がありましたからね。兄弟の性格の違いも、この作品の方が明確になっています。

食料品店の防犯ビデオに映った映像から、強盗殺人に見せかけた殺人と気づき、偽証目撃者を探し出し、さらに殺し屋を見つけて復讐するマーク・ウォルバーグの荒っぽいこと。殺し屋を殺してしまって手がかりが無くなったと思ったら、養母が都市開発の不正を究明していたことを刑事から知らされますが、保安官から父親が殺されたことを知らされてJ・ウェインが黒幕に気づくのと似ています。兄弟が秘密を嗅ぎつけるのを恐れた黒幕が殺し屋をさしむけて銃撃戦となり、兄弟のひとりが死ぬところは同じ。『エルダー兄弟』で保安官が殺されたように、この作品でも刑事が殺されます。ラストもJ・ウェインが黒幕と1対1で火薬の置いてある銃砲店で射ちあったように、割れ目のある氷上でのマーク・ウォルバーグと黒幕の殴りあい。こんなふうに『エルダー兄弟』と比較しながら観ていると、結構楽しめるんですよ。

兄弟たちのガラの悪さと、行動パターンにロマンを感じられないのは、西部劇とはスピリットが違うから仕方ないでしょうね。それでも、ドラマ作りはしっかりしているので、最近のCG中心のアクション映画と比べたら、面白く観ることができました。

 

 

 

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