ビリー・ザ・キッド映画


『チザム』(1970年/監督:アンドリュウ・V・マクラグレン)

保安官や知事を買収してリンカンの町の新興勢力となったマーフィ(フォレスト・タッカー)は、大牧場主チザム(ジョン・ウェイン)の土地も狙っていた。チザムは、マーフィの悪どい商売を妨害するために、親友のタンストールと雑貨店と銀行を開くことにする。マーフィは無法者のジェシー・エヴァンス(リチャード・ジェッケル)を雇ってタンストールの積荷を襲うが、パット・ギャレット(グレン・コーベット)とビリー・ザ・キッド(ジョフリー・デュエル)の活躍で無事に店を開店する。しかし、タンストールは保安官助手に殺され、チザムが犯人捕えるが、復讐の一念に燃えるビリーは彼らを殺してしまう。そして、保安官まで殺したビリーはお尋ね者となり……

リンカン郡の一連の戦いが描かれていますが、その全てにチザムが絡み、ラストは自ら牛を暴走させてビリーを助け、おまけにマーフィと大格闘するのですから、史実を知る者としては目がテンになります。清水の次郎長が荒神山に乗り込んで黒駒の勝蔵を叩っ斬る東映時代劇のようなものですね。まさに理屈ぬきの娯楽西部劇です。ジョン・ウェインの西部劇は、やっぱりこうでなくちゃ。

ジョフリー・デュエルのビリーは、若々しい中に屈折した感じが出ていて良かったですよ。

 

『ヤングガン』(1988年/監督:クリストファー・ケイン)

リンカンの町で、タンストール(テレンス・スタンプ)は追っ手に追われている若者ビリー(エミリオ・エステベス)を助けて牧場に連れ帰る。牧場にはブルアー(チャーリー・シーン)、ドク(キーファー・サザーランド)、チャベス(ルー・ダイヤモンド・フィリップス)、スティーブンス(ダーモット・マローニー)、チャーリー(ケイシー・シーマスコ)といった若者が暮らしており、ビリーも一緒に暮らすことになる。その頃、リンカンの町はマーフィ(ジャック・パランス)が支配しており、タンストールはマーフィの不正と戦っていたが、マーフィ一味に殺される。ビリーたちはマーフィへの復讐を決意し……

部分的にはおかしいところもあるのですが、レギュレーターズとサンタフェ・リング一派の対立などリンカン郡の戦いを史実に最も近い形で描いています。何といってもエミリオ・エステベスのビリーが抜群です。まさに不良少年そのもので、深く考えずに暴走するところはビリーの実像に一番近いような気がしますね。

銃器や衣装にも凝っており、リアル派西部劇ファンを嬉しがらせる傑作です。ビリーが使っていたと云われるコルト・ライトニングが登場するのは、テレビ西部劇の『西部の対決』でクルー・ギャララガーのビリーが使っていたのがあるだけで、映画ではこの作品だけですからね。

映画としての演出面は、マクラグレンやペキンパーの方が優れていますが、現代感覚にマッチしたという点では、この作品に軍配を上げざるを得ません。

 

『ヤングガン2』(1990年/監督:ジェフ・マーフィー)

リンカン郡の戦いの後、ビリー(エミリオ・エステベス)は保安官や賞金稼ぎに追われていた。昔の仲間だったドク(キーファー・サザーランド)とチャベス(ルー・ダイヤモンド・フィリップス)も捕まり、ビリーはマーフィ一味の悪業を証言すれば自由にするというウォレス知事の約束を信じて自首するが、知事はビリーを見捨てて検察官に全てを委任してしまう。ビリーは脱獄してドクとチャベスを救い出し、仲間となったデイブ・ルダボー(クリスチャン・スレイター)と一緒にメキシコへ逃げることにする。資金をチザム(ジェームズ・コバーン)から提供してもらおうとするが、チザムが断ったためチザムの牧童を殺し、チザムの牛を盗んで資金化しようとする。怒ったチザムは、ビリーの昔の仲間だったパット・ギャレット(ウィリアム・ピーターセン)をシェリフに推薦し、ビリー逮捕に向かわせるが……

リンカン郡の戦い以後を描いた物語。最初から二部作で企画されたのでなく、前作がヒットしたので、改めて続編を作った感じですね。そのため、キャスティングで史実的におかしいところが出てきました。

前作と同様に登場人物のキャラと銃器と衣装で見せる西部劇で、内容的には物語に厚みがなく、演出面でも際立った特色はありません。『ヤングガン』があっての、『ヤングガン2』で〜す。

 

 

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