| お忍び
その7 |
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「妹が、こんなにたくさん写真を持ち出しているとはね」 写真を拾い終わった後、セイリオスはベッドの端に腰かけて、 嬉しそうに、自分の写真を一枚一枚めくっていく。 「見ないでください〜」 シルフィスの嘆願を無視して、セイリオスは写真の枚数を数えだした。 「1、2、3、4……7枚。 机の上のも合わせると8枚もあるね」 「枚数なんて、数えないでください〜」 シルフィスは動揺するあまり、上掛けでブルマを隠すのも忘れている。 写真を返してもらおうと、手を伸ばしたが、 あっさりとセイリオスにかわされた。 「さて、これをどうしようか。 不当に持ち出されたものだから、所有権は私にあるね」 楽しげな口調に、シルフィスはセイリオスが冗談を言っているのだとわかった。 「まさか。返せなんて、おっしゃいませんよね?」 本気で返してほしいのなら、あきらめるが、そうでないのなら返したくない。 「きみは、まだ持っていたいのかい? もう十分に見ただろう? そういう跡が残っているよ」 「セイル!」 知られたくない秘密をまたひとつ知られてしまった。 そう、シルフィスは確かに毎晩、セイリオスの写真を眺めていた。 大事に扱っていても、写真には指の跡がついている。 「そんなに、じっくりと見たわけではありません。 ほんの数分だけです」 シルフィスは嘘をついたが、セイリオスには見抜かれているような気がする。 「そうかい? しかし、きみがそんなに写真を気に入っているとは、悪い気はしないね。 譲ってあげてもいいよ」 「本当ですか?」 シルフィスは嬉しくて、足が痛いのも忘れて、セイリオスに近寄った。 セイリオスはにっこりと笑って、シルフィスを引き寄せる。 「写真1枚につき、キス1回でどうだい?」 【小牧】 純真なシルフィスを物(写真)で釣る。これは援助交際? 絶対に援助交際だ。断固としてやめさせるべきだ! ……と言いたいところなのですが、 そうやってセイリオスを煽ると、なんだか嫌なことが怒りそうで怖いです。 「援助交際ではないことを証明するために、 私も、シルフィスの写真1枚につき、キスを1回する」 とか、自分勝手な主張をしそう。 アルバム1冊分のキス……。 ぎゃあああ、シルフィスの唇が減る。 ところで、topページのアンケートについて、 「ナイト・オブ・エーベ」がちょっとだけリードしています。 一昨年から連載がストップしているだけに耳が痛い……。 あの話もシルフィスが次々と不運に見舞われるんですよねーー。 幸いにして、プロット(もどき)が(ウエブ上に)あるので、 続きを書けそうです。 |
| お忍び
その8 |
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「こ、ここは女性専用の下宿屋で、本来、あなたは入ってはいけないんです」 シルフィスはしどろもどろに言って、身を引こうとしたが、 セイリオスに胸元のペンダントを軽く引っぱられて、 逆に、顔が触れ合うほど、近づいてしまった。 「それが理由になるのかい?」 「いえ……」 セイリオスは、シルフィスの鼻に自分の鼻を軽くすりあわせた。 「きみを心配して来たのに、つれないな」 「セイル……」 セイリオスが恋人の証である銀のペンダントに、思わせぶりに触れるのを見て、 シルフィスは完全に降伏した。 【小牧】 次回、またもや、キスです(泣)。 ところで、ブルマ警報のアラート、煩わしくありませんか? シルフィスのブルマ姿を見たくない人なんていないと思うんだけどなー。 止めていいでしょうか? |
| お忍び
その9 |
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「んん……っ」 シルフィスはくぐもった声をあげて、セイリオスにしがみついた。 昨日、ファーストキスを終えたばかりだというのに、 セイリオスはもう大人のキスを教えようとしている。 写真1枚につき、キス1回。 写真はぜんぶで8枚あるので、合計8回のキス。 しかし、シルフィスが回数を数えられたのは、最初のほうだけだった。 息つく間もなく、何度も繰り返し唇を押しつけられ、 そのたびに深くなる口づけに、回数がわからなくなり、 舌を絡め合っているうちに、頭の中がぼーっとしてきて、 ついには、なんのためにキスをしているのかすら、忘れてしまった。 シルフィスは、セイリオスにうながされるまま、 夢中で、唇を開き、舌を動かし、大人のキスを覚えた。 シルフィスがようやく深呼吸ができたのは、 唇を解放され、セイリオスの腕にしっかりと支えられ、 荒かった息が落ち着いてきてからだった。 「ふぅ〜」 それでも空気が足りないというように、シルフィスは口で息を吸った。 その様子に、セイリオスは面白そうに言った。 「呼吸の仕方も教えるべきかな」 息継ぎがうまくできるようになれば、 心臓の鼓動も、あまり速くならないようにできるのだろうか。 シルフィスは、ふと、疑問に思ったが、恥ずかしくて口には出さなかった。 その代わりに、セイリオスの胸に、頬を寄せて、勝手に答えを教えてもらった。 シルフィスの顔に笑みが広がる。 「セイル。好き」 「私もだよ。しかし、こういう場所でそんなことを言うのは危険だ。 きみがあまりに覚えが早いから、私は……」 セイリオスはゆっくりと、シルフィスをベッドに押しつけていく。 しかし、そのとき、扉がノックされた。 「お兄さま。帰る時間ですわよ」 まるでタイミングを見計らったような、ディアーナの呼び出しに、 セイリオスはぎょっとしたように、目を見開く。 しかし、すぐに我に返って、神業のような速さで、 シルフィスの足に上掛けをかぶせ、自らも椅子に戻った。 ディアーナが扉を開けて入ってときには、セイリオスは最初からそこにいたかのように、 優雅に椅子に腰かけていた。 「やれやれ、審判のときがやってきたか」 【小牧】 今回、セイリオスのシルフィス攻略は早すぎます。 グループ交際で手をにぎり、初デートでほっぺにキス、 2回目のデートで合い鍵を渡し、3回目のデートで告白しつつ、 シルフィスのファーストキスを奪い、その翌日にベッドの上でキス。 たぶん、この早さは保護区で過去最高記録です。 セイリオスが君主の場合、最低でも1年は片想いの状態ですし。 でも、君主だったら、セイリオスを止める要素がなくて、もっと危険ですよね。 |