シルフィス恋物語
 
 広場
 
 
お忍び
その4
 
「むしろ、私の方が……
きみに相応しくないのではないかと不安になる」
「え?」
セイリオスの意外なつぶやきに、シルフィスははっとして顔をあげた。
「今のきみは、年相応に見える」
服装のせいだと、シルフィスにはわかっていた。
セイリオスを好きになるまで、自分を良く見せようと考えたこともなく、また、おしゃれにかける金銭的な余裕もなかった。
「私は、普段はこういう服ばかり着ているんです。
セイルと会うときは、友人に服を借りているんです」
恥ずかしかったが、シルフィスは思いきって打ちあけた。
「きみと同じ年の妹を持つ兄として、だいたいわかるよ」
セイリオスはシルフィスを安心させるように頷いた。
そして、声を落として、控えめに付け足す。
「きみと妹では、性格がかなり違うが……」
こほっ、と咳払いをして続ける。
「きみも、服のことで、いろいろと悩むのだと思う」
「はい」
シルフィスは、メイに指摘されるまで、デートの前に着替えるとは思いつきもしなかったが、今では十分に意識している。
「でも、どんな服を着ていても、きみはきみだ。
普段着でも気にすることはないんだよ。
むしろ、きみが無理をすると、私は年寄りになった気がする。
同年代の相手なら、服を借りてまで、おしゃれはしないだろうとね」
「そんな!
セイルが年寄りだなんて、そんなことはありません。
それに……デートのために、
服を貸し借りするのは、女の子の間では普通なんですよ
同じ服ばかり着るわけにはいきませんから」
「そうなのかい? だったら、私も年の差を気にするのはやめにしよう。
それに……」
セイリオスはイタズラっぽく付け足した。
「少しばかり大人びて見えた方が、キスをしやすいしね」
昨日のことを思い出し、シルフィスは頬が赤らむのを感じた。
セイリオスは笑って彼女の顔を見ていたが、ふと、目を転じて、机の上にある物に気づいた。
「おや? これは……」
セイリオスが手を伸ばして、触れた物を見て、シルフィスははっと息をのんだ。
「そ、それは……!!」
隠しておけば良かったと思ったが、すでに遅かった。

【小牧】
進み方が遅くなってすみません。
きわどい展開になっていますので、考えながら書いています。
ベッドとか、ブルマとか、材料が揃いすぎていて……。
セイリオスの悪い癖が出てきそうです。
苦情があるときは、一言ご意見番にお願いします。
あの掲示板はそのためにありますので(汗)。

 
 
 
 
  
 
お忍び
その5
 
  「この写真はどうしたんだい?」
セイリオスは信じられないというように目を見開き、机の上に飾ってあった自分の写真をまじまじと見た。
「ディ、ディアーナにもらったんです」
シルフィスは顔を真っ赤にして答えた。
「3年前、家族でクルージングに行ったときの写真だよ。
私が船の中にまで仕事を持ち込んだから、妹が面白がって撮ったんだ」
生意気盛りの若造を絵に描いたような昔の自分に、セイリオスはうめき声をあげた。
「言ってくれれば、もっと新しい写真をあげたのに」
シルフィスはますます真っ赤になった。
「その写真をもらったのは、みんなでゴルフに行った翌日なんです」
セイリオスから直に写真をもらえるほど親しくはなることはおろか、告白することすら夢のまた夢だと思っていた頃の話である。
「写真を見るだけなら、ご迷惑にはならないかと思いまして」
「迷惑ではないよ。しかし、きみだけずるいな」
「は?」
シルフィスが目をあげると、セイリオスはにんまりと笑っていた。
「私もきみの写真がほしい」
「え? あ、はい……」
シルフィスは何がなんだかわからないまま、セイリオスにうながされて、アルバムがしまってある場所を教えた。
セイリオスは、最初の数ページをパラパラと見ただけでアルバムを閉じた。
「ゆっくり選びたいから、借りて帰ってもいいかな」
「ええ、かまいませんよ」
「では、しばらく借りるよ」
プロの写真家に頼んで、すべての写真をデジタル化するつもりだと知ったら、シルフィスはなんと言うだろう、と考えながら、セイリオスは膝の上にアルバムを置いた。
「あ! 待ってください」
「なんだい?」
やはり貸さないと言われるのかと、セイリオスは身構えた。
「ちょっとだけ、そのアルバムを……」
慌てた様子で、シルフィスはアルバムに手を伸ばした。
その弾みで、上掛けがまくれあがり、ブルマから伸びた白い太股が露わになる。
「わっ!」
動転したシルフィスは、急いで上掛けを引き上げ、バランスを崩した。
「シルフィス!」
ベッドから落ちそうになったシルフィスを、セイリオスは支えようと手を伸ばした。
 
【小牧】
ブルマ警報発令。
次回、ブルマが出てきますので、苦手な方は閲覧を避けてください。
 
 
 
 
 
お忍び
その6
 
 
「大丈夫かい」
セイリオスはとっさに椅子から身をのりだして、シルフィスを受け止めた。
髪留めがセイリオスの手に引っかかって外れ、
シルフィスの肩を豊かな金髪が覆う。
セイリオスの膝の上にあったアルバムは床に落ちて、
写真が何枚か散らばっていた。
シルフィスは、セイリオスの左膝に手を付いて、なんとか自分の体を支えた。
「す、すみません」
シルフィスは顔を上げて謝ったが、上着がめくれて、
セイリオスの指が直に腹部に触れているのを感じて、すぐにうつむいた。
セイリオスはそしらぬ顔で、上着の裾を元通りにし、シルフィスがベッドに戻るのを手伝った。
「足は痛めなかっただろうね?」
「はい、おかげさまで。ありがとうございます」
「いや、それにしても、何をそんなに慌てたんだい?」
「それは……」
「おや?」
セイリオスはアルバムを拾おうとして、手を止めた。
シルフィスが答えるまでもなく、床の上に散らばった写真を見て、
その答えがわかった。
「私の写真だ。他にも持っていたんだね」
ディアーナが家族のアルバムから抜き去ったと思われる写真が、数枚落ちていたのだ。
家族旅行の写真の他にも、ディアーナの学校の学園祭や体育祭の見学に行ったときや、
セイリオス自身も忘れていた学生時代の記念写真まである。
興味深いのはゴルフに行ったとき、誰かが隠し撮りしたと思われる
シルフィスとのツーショットの写真もあったことだ。
「机の上に飾るのなら、この写真の方がよかったんじゃないのかい?」
「それを飾るのは、あまりにも図々しい気がしたんです」
シルフィスは照れたように言った。
「そんなことはない」
セイリオスは写真を1枚1枚拾いながら、顔がほこぶのを止められずにいた。
 
【小牧】
女子寮に忍びこみ、シルフィスの弱みを握ったセイリオス。
うぬぼれたセイリオスは、ますます大胆な行動に出る……。
はたして、シルフィスの運命は。
って、
そんなに一気に突っ走りません。
シルフィスの子孫かもしれないとはいえ、
セイリオスに良い思いばかりさせるわけにはいきませんからね。
 
 
 
 
 
 
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