シルフィス恋物語
 
 広場
 
 
告白
その7
 
 
「セ、セイル?」
いつのまにか両側から伸びてきた腕に、ゆっくりと引き寄せられて、
シルフィスは、自然に、すっぽりとセイリオスの腕の中におさまっていた。
「あ、あの……」
「しっ。だまって。
今度はきみが話を聞く番だよ」
「は、はい……」
「焦ったよ。先を越されてしまいそうでね。
さっきまでの話だと、きみは誰かに恋をしていると打ち明けたのも同然だ」
「!」
シルフィスの体に緊張が走り、こわばった。
セイリオスはいっそう強く彼女を抱きしめる。
「彼女の気持ちがわかったというのは、つまり、そういうことなのだろう」
「セイリオスは、本当に察しが良すぎます」
すねたような困ったような声だった。
「きみがそいつの名前を告げたら、気まずくなりそうだった」
「そ、そこまではしません。
私は……うまくいくなんて、少しも考えていませんから」
 
【小牧】
あーあ。
毎度のことではありますが、とうとうセイリオスが実力行使にでました。
こうなったら、止めるのが難しいんですよ。
さて、今回こそ、小牧さんはセイリオスを止められるのでしょうか?
「告白」はあと残り2回です。
それにしても、こういう恋愛ものは、もっとも苦手なジャンルなんですが……

 
 
 
  
 
告白
その8
 
「私だって、あなたと気まずくなるのは嫌です。
そ、その人とは友達なので、今までどおり、
話ができたら、それで良いんです。
どのみち、私は……学校を卒業したら、この国をでなければなりませんから。
それまでの間だけ……」
「すまないが、きみの考えを黙って受け入れるつもりはない」
「そう……ですか」
落胆のにじみ出たシルフィスの声を無視して、
セイリオスは重々しい口調で言った。
「きみがどう考えていたとしても、私のものにするつもりだからね」
涙の震えていたシルフィスの肩が、唐突に動かなくなった。
時が止まったかのように、シルフィスは何も言わない。
「こっちを向いてくれるかい、シルフィス。
きちんと向き合って、交際を申し込みたい」
「ほ、本当に?」
振り向いた緑の瞳は、不安そうに涙でうるんでいた。
 
【小牧】
そのとき、強風に飛ばされた看板が、セイリオスの頭を直撃。
たいした怪我はなかったものの、セイリオスはここ数ヶ月の記憶を無くし、
シルフィスのこともすっかり忘れていた。
……という展開にしたいんだけど、納得する人います?
瀕死の重傷を負ったというではダメなんです。
死線を乗り越えて、パワーアップしてしまうので、逆効果。
記憶喪失が妥当だと思うんですが、そうでなければ、
決定的シーンは、いよいよ次。

 
 
 
 
告白
その9
 
「ですが、私があなたに告白したら、気まずくなると……」
「きみの好きな相手が、私ではなかった場合を考えていた。
きみの気持ちを聞いた直後では、口説きにくいだろう?
もし、そうだったとしても、手を引くつもりはなかった」
「セイル……」
信じられない、というように、シルフィスは口元を押さえて、
セイリオスの正面に体を向けた。
向き合ったシルフィスをまっすぐに見つめて、
セイリオスはおだやかに確認する。
「きみも、私と同じ気持ちだと思っていいのかい?」
「はい……でも、やっぱり、ダメです」
「なにっ?」
セイリオスは空中庭園から突き落とされたような気分になった。
「私は、まだ学生ですし、この国の人間ではありませんし、
お金持ちでもなく、家柄も……あなたとは釣り合いません。
私のほかに、もっと相応しい人がいくらでも……」
「そんな理由で、私を拒んむつもりかい」
「ですが……」
「まったく、きみをしゃべらせすぎた。
いつもの私らしくもない。
これがビジネスだったら、とっくに交渉が成立しているところだ。
きみが相手だと調子が狂う」
セイリオスはシルフィスを抱き寄せた。
「言葉で言うよりも、この方がきみに伝わるだろう」
シルフィスはうろたえつつも、素直にセイリオスの胸に顔を当てた。
「セイルの心臓の音、速いです」
「きみに振られたら、止まるよ」
「私なんて、子供っぽくって、相手にされていないと思っていました」
「私は変なところで子供になることは、きみも知っているだろう。
きみは若すぎると自分に言い聞かせていたが、どうしても待てなかった」
「夢を見ているみたいです」
「私もだ。だが、夢では困るな」
セイリオスは大事そうに、腕の中のシルフィスを見つめた。
「好きだよ、シルフィス」
「私も。私も好きです。セイル」
 
【小牧】
ぎゃあああああああああああああああああああああああ。

 
 
 
 
 
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