シルフィス恋物語
 
 広場
 
 
告白
 
 
「うわっ、すごい眺め。学校も野球場もあんなに小さく見える」
シルフィスは空中庭園の展望台から地上200メートル下の地面を見下ろし、感嘆の声を挙げた。
クライン市の新名所となるであろうこの空中庭園は、まだ一般には公開されておらず、
関係者以外立ち入り禁止で、また、工事もほとんど終わっているので作業員もいない。
つまり、絶好の散歩日和に、最高の場所を、セイリオスと二人で独占しているのだ。
「セイルも早く上がってきてください。風が気持ちいいですよ」
セイリオスは展望台の階段をゆっくりと上っていた。
楽しそうにはしゃぐシルフィスの姿に目を細め、
自分の選択した場所が正しかったことに満足していた。
レオニスの喫茶店を出た後、シルフィスが浮かない顔をしていたので、
元気づけようと、この場所に誘ったのだ。
そうでなくとも、日曜日はどこもかしこも混雑していて、
人混みが苦手なシルフィスは、つらそうだった。
お弁当を買い、建設中のビルに来たところ、
幸いにも、顔見知りの警備員がいて、あっさりと庭園に入ることができた。
「気に入ってもらえたようだね」
「ここが気に入らない人なんて、いませんよ」
シルフィスの幸せそうな顔に、セイリオスもつられて、笑みを浮かべるのだった。
 
【小牧】
さあて。
いよいよ、決定的シーンへ向けて、秒読み段階にはいりました。
あと何枚で、シルフィスはセイリオスに落とされてしまうのでしょう。
止めてあげられない小牧さんを許して、シルフィス。しくしく。

 
 
 
  
 
告白
その2
 
    「お弁当にするかい?
それとも、先に庭園を案内しようか?」
「できれば、もうしばらく、ここでこうしていたいです。
でも、セイルはお昼がまだ……」
シルフィスは、レオニスコーチ特製ストロベリーソーダに浮いていた、3段重ねのアイスクリームを全部たいらげたので、空腹を感じていなかったが、セイリオスは砂糖の入っていない紅茶を1杯飲んだだけだ。
「私は平気だよ。あと1時間やそこら食べなくとも、飢え死にしそうにない。それに……」
セイリオスは階段を上りきると、シルフィスの横に立って、ほほえみかけた。
「ここにいたい気持ちはわかるよ。
私も初めてここに立ったとき、そうだったんだ」

 
 
 
 
告白
その3
 
 
「このビルは、私がサークリッドの資力に頼らずに、独力で手がけた最初の大規模プロジェクトなんだ」
シルフィスが見た、セイリオスの横顔は誇らしげだった。
そんな人が何故、6畳の賃貸アパートに住んでいるのかという疑問がよぎったが、
シルフィスはあえて、口にしなかった。
「ビルの中に入れるようになって、初めて、この展望台に来たときは、
仕事を忘れて、自分が生まれ育った町を見入ったものだよ。
世界には、もっと巨大な高層ビルがいくつもあるし、
飛行機やヘリコプターでこの町の上空を何度も飛んでいる。
だが、それでも、苦労して建てたビルから見る景色は特別でね。
プロジェクトの障害が小さなことにように思えてきて、イライラも霧散したよ」
「……焦ったり、心配したりすることがあるのですか? セイルでも?」
「意外かな?」
「セイルはいつも落ち着いていて、余裕もあって……
私のわがままな子供のような振る舞いにも、動じることはなくて、
ですから、感情を抑える術をお持ちなのかと思っていました」
「そう思ってくれていた方が、私はうれしいよ。
感情を顔に出さないことは、ビジネスで成功する一つの条件だからね。
ところで」
セイリオスはこほっ、と咳払いをして、付け足した。
「私は、今まで、レオニスが奥さんを見てたような顔をしていたことがあったかな?」
「え?」
シルフィスは首をかしげた。
「そうですね。セイルは、レオニスコーチと違って、もともと朗らかですから比べられません」
「そ、そうかい?」
厳しいビジネス界において、他の誰よりも、無口で怜悧であることを自負してきたセイリオスは、
意外な返事に戸惑った。
 
【小牧】
文を書くのに2時間を要しました。
真似するのに資料が必要だったので(汗)。
シルフィスを高台に誘って弱音を吐いてみせるのは、
サークリッド王家の血なのでしょうか、
もしくは、はやり不老不死……??

 
 
 
 
 
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