| セイリオス
その7 |
| 「送っていただいて、ありがとうございました」
セイリオスに続いてタクシーから降りると、シルフィスは礼を言った。 この前と同じように、彼が顔を近づけてくる。 シルフィスは目を閉じて、頬にキスを受けた。 右頬だけでなく、両頬に1回ずつ、セイリオスは優しく口づけた。 「おやすみ、シルフィス」 「おやすみなさい」 セイリオスはうなずくと、タクシーのドアに手をかけた。 「あ、あの……」 シルフィスは思わず呼び止めていた。 セイリオスの広い背中を見て、何か言わないではいられなかったのだ。 「なんだい?」 彼はシルフィスの言葉を待っている。 薄暗がりの中で濃度を増した、彼の紫紺の瞳に吸い込まれるかのように、 シルフィスは半歩近づき、彼女の胸を締めつけている想いを口にした。 |
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| 「また遊びに行ってもいいですか?」
玉砕したとしても、後悔はしないと思った。 【小牧】 ぎゃあああああああ。 シルフィスったら、シルフィスったら、 やっぱり鮫のいる海で、泳ぐつもりでいます(泣)。 次回は、次回は…… シルフィスは、また、とんでもない窮地に陥ります。お楽しみに。 ところで、 何日か前に、アンヘルのお茶についての昔話を挿入しましたが、 それが歴史上の事実であれば、 この物語のセイリオスは、シルフィスの子孫ということに。 そう考えると、急にセイリオスが可愛く思えてくるから不思議。 父親の血が濃く出てしまったのは、子供の責任ではありませんものね。 |
| セイリオス
その8 |
| セイリオスは一瞬、驚いたように目を見開いた。
「かまわないが、あの部屋にはあまり帰らないんだ。 出張が多くて、たいていはホテル暮らしでね」 「そうですか」 落胆を隠せずに、シルフィスはうなだれた。 断られる覚悟があったつもりでも、胸の痛みはどうしようもない。 「だが……」 |
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セイリオスは背広の内ポケットから、何かを取り出した。 軽い金属音が、シルフィスの耳をつつく。 やがて、目の前に出てきた小さな銀色の金属を、シルフィスは声も出せずに見つめた。 「あの……」 「手を出して」 「は、はい」 シルフィスの手に、小さな金属の塊が落ちてきた。 その冷たくて固い感覚が信じられず、シルフィスは手の中にある物を見つめた。 「鍵……?」 「きみさえ良ければ……
私の帰る日に、部屋の中で待っていてほしい」 シルフィスは両手で鍵を包みこんだ。 「本当に私が持っていてもいいんですか?」 「もちろんだよ」 「あ、ありがとうございます」 「礼を言うのは私の方だよ。今日も楽しかった。また会おう」 「はい」 セイリオスは今度こそ、タクシーに乗りこみ、去っていった。 【小牧】 身分差がないと……とんとん拍子に関係が進んでしまうんですね……。 しくしく。 こういうときの呪文。 このセイリオスはシルフィスの子孫。 このセイリオスはシルフィスの子孫…………ああ、やっぱり許せん。 がおーーーーっ。 |
| セイリオス
その9 |
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「若い人たちは良いですね」 話し相手がいなくなったセイリオスに、タクシーの運転手が声をかけてきた。 普段なら適当に受け流し、会話を打ちきる彼だが、この日は違っていた。 「若すぎるよ」 セイリオスは考えこむように言った。 「彼女はまだ学生だ」 【小牧】 解説しましょう。 ……学生じゃなく臣下だったら、遠慮なく行っちゃってたのに(どこに)、と セイリオスは言いたいのです。(マジ?) セイリオスが王様だった時代から、500年はたっているはずなのですが、 その程度の時間では、セイリオスの遺伝子は変わらないようですね。 シルフィスの子孫という話は無し(えーーーっ!!!) セイリオスは不老不死になって500年間生き続けているか、 もしくは、呪いをかけられて眠りにつき、現代に蘇ったのです。 このセイリオスはあのセイリオス殿下だ!!!(マジですか) さて、「第8話 セイリオス」はこれでおしまいです。 もっとセイリオスのことを書きたかったのですが、あんまり入れられなかったです。すみません。 次回はガゼルが登場します。17歳のガゼル。 ちなみに、シルフィスは5月生まれなので18歳。 セイリオスはまだ誕生日がきてないので25歳。 ついでに、レオニスは28歳。30歳を過ぎると、若返るんです……。 |