| シルフィス
その4 |
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「家まで送っていただいて、ありがとうございました」 シルフィスはぺこりと頭を下げた。 「いや、遅くなったのは私のせいだからね。 それより、今日は楽しかったかい?」 「はい。とっても」 シルフィスは心の底からそう言った。 生まれて初めてのデートだったのに、緊張することもなく、 セイリオスとうちとけて話すことができ、あっという間に時間が過ぎていった。 まだまだ話し足りなくて、帰りたくないほどだ。 しかし、セイリオスはどうなのだろう? 学生の話など、退屈ではなかっただろうか? シルフィスが不安になって見あげると、セイリオスが顔を近づけてくるところだった。 頬に、セイリオスの唇がそっと触れた。 「では、また誘ってもかまわないね?」 シルフィスは思わず左手で頬を覆い、セイリオスの問いにこくこくと頷いた。 「おやすみ、シルフィス。また会おう」 セイリオスはタクシーに乗り、暗い夜道を去っていった。 【小牧】
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| 視線の先 |
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「やっほー。シルフィス、昨日のデートどうだった?。 ……っと、聞くまでもないみたいね」 1限目が終わると同時に、自分の教室を飛び出してきたメイが見たものは 黒板消しを持ったまま、窓の外をぼーっと眺めているシルフィスだった。 「シルフィスは朝からあの調子ですのよ」 近寄ってきたのはディアーナだった。 彼女も、唯一、事情を知っているメイと話をしたくて、うずうずしていたのだ。 「何かあったの?」 メイは興味津々で聞いた。 「別れ際に、頬にキスをされたそうですの」 「さっそく手を出したか……」 「あら、お兄さまにしては遅いほうですわ。普通だったら、食べられていますの」 「食べられてる……ってね、ディアーナ。 親友にそういう男、紹介する?」 「大丈夫ですわ。そのときは、シルフィスをわたくしのおねえさまにしますの。 もう一人、おにいさまがいたら、メイとも姉妹になれますのに」 「……あたしにはキールがいる」 メイは憤慨したように腰を当てた。 「でも、シルフィスはディアーナのおねえさんに立候補するんじゃないかな〜」 「メイにも、そう思います?」 「思う、思う。だって、シルフィス、桜見てるじゃん」 「桜? もう6月ですのよ。葉っぱしかありませんわ」 「シルフィスにとっては、満開なのよ」 「ああ、そういうことですの」 つまり春である。 【小牧】
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