シルフィス恋物語
 
 広場
 
 
シルフィス
その4
 
 
「家まで送っていただいて、ありがとうございました」
シルフィスはぺこりと頭を下げた。
「いや、遅くなったのは私のせいだからね。
それより、今日は楽しかったかい?」
「はい。とっても」
シルフィスは心の底からそう言った。
生まれて初めてのデートだったのに、緊張することもなく、
セイリオスとうちとけて話すことができ、あっという間に時間が過ぎていった。
まだまだ話し足りなくて、帰りたくないほどだ。
しかし、セイリオスはどうなのだろう?
学生の話など、退屈ではなかっただろうか?
シルフィスが不安になって見あげると、セイリオスが顔を近づけてくるところだった。
頬に、セイリオスの唇がそっと触れた。
「では、また誘ってもかまわないね?」
シルフィスは思わず左手で頬を覆い、セイリオスの問いにこくこくと頷いた。
「おやすみ、シルフィス。また会おう」
セイリオスはタクシーに乗り、暗い夜道を去っていった。

【小牧】
たばことお酒とキスは二十歳を過ぎてから……。
しくしく。
描いておいて言うのはなんですが、シルフィスの頬が奪われて悲しい。


 
 
 
  
 
視線の先
 
 
 
「やっほー。シルフィス、昨日のデートどうだった?。
……っと、聞くまでもないみたいね」
1限目が終わると同時に、自分の教室を飛び出してきたメイが見たものは
黒板消しを持ったまま、窓の外をぼーっと眺めているシルフィスだった。
「シルフィスは朝からあの調子ですのよ」
近寄ってきたのはディアーナだった。
彼女も、唯一、事情を知っているメイと話をしたくて、うずうずしていたのだ。
「何かあったの?」
メイは興味津々で聞いた。
「別れ際に、頬にキスをされたそうですの」
「さっそく手を出したか……」
「あら、お兄さまにしては遅いほうですわ。普通だったら、食べられていますの」
「食べられてる……ってね、ディアーナ。
親友にそういう男、紹介する?」
「大丈夫ですわ。そのときは、シルフィスをわたくしのおねえさまにしますの。
もう一人、おにいさまがいたら、メイとも姉妹になれますのに」
「……あたしにはキールがいる」
メイは憤慨したように腰を当てた。
「でも、シルフィスはディアーナのおねえさんに立候補するんじゃないかな〜」
「メイにも、そう思います?」
「思う、思う。だって、シルフィス、桜見てるじゃん」
「桜? もう6月ですのよ。葉っぱしかありませんわ」
「シルフィスにとっては、満開なのよ」
「ああ、そういうことですの」
つまり春である。

【小牧】
強引ですが「視線の先」ということで……。


 
 
 
 
 
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