看板のはなし
その1


【蛇杖】

参考:「楽しい医学用語ものがたり」
医歯薬出版株式会社 星和夫 著 ¥2800

医療系施設では,よく蛇の絡まった杖のシンボルを見ることがあります. これは古代ギリシャの医神アスクレピオスの杖と思われます.
アスクレピオスはアポロンの子で,半人半馬のケイロンから医術を習い,ギリシャの医神と崇められるようになった.
この本の表紙に描かれているように,アスクレピオスの杖には蛇が1匹絡まっているだけだが,歯科医院でみつけたものの多くは杖に蛇が2匹絡まっています.
2匹のほうがバランスが良いからとはいえ,少し疑問にも思い調べてみると,蛇杖には他に2匹の蛇が絡まったヘルメスの杖というのがありました.
シンボルとしてはライオンで有名な日本橋三越ですが,その入り口の上にヘルメス(ローマ神話ではメルクリウスMercurius)の像があります.このヘルメスの杖(カドゥーシアcaduseus=Kerykeion)というのは商業のシンボルとされ,またヘルメスはアポローンの飼っていた牛を盗んだりしたので,今でも泥棒の神様としても崇められたりしているそうです.成人したヘルメスは,いつも羽のついた帽子をかぶり,腕には蛇が2匹絡まった黄金の小杖を持ち,足には翼のあるサンダルをはいていた.
三越のヘルメス像はジョバンニ・ディ・ボローニャ作の『飛びかかるメルクリウス』の複製なのだそうだが,頭には羽,また足にも羽が確認出来ます.また杖部分を見ると,羽と2匹の蛇が絡まっていて,これは多くの歯科医院でみた蛇杖と良く似ており,それらはヘルメスの杖とアスクレピオスの杖と混同されて使われたのではないか,と推測しています.
しかしそうとも言い切れないのか,新潟大学第一内科のシンボルマークに関する説明では,「モチーフとなったKerykeionの杖は、幸福と富裕の神ヘルメスの杖で医術の象徴とされてきた。杖に絡む2匹の蛇は、学会の統一理念“ScienceとArtの調和”を現している。」というものもみつかりました. (^^;)
ちなみに左の画像は,八王子市内の動物病院で使われていたもので,杖に蛇が1匹だけ絡まっています.中央のVは獣医師のveterinarianからきているのではと思います.タウンページの広告からみつけた歯科医院の蛇杖11件(12件中)の中には2件が蛇1匹を使っていました.
2001.01.07





蛇杖の看板はあちこちで見かけるようなので,もう少し画像を増やしてみます.


京王線調布駅にあった東府中病院の看板では,蛇2匹のヘルメスの杖が使われていました.
ヘルメスも一応医学の神ということが謳われているようですから,病院でもこちらを使うケースがあるのでしょう.


一橋大学は商業の学校なので,シンボルマークはヘルメスの杖を使っていますね.
画像は国立駅から南に,大学通り右手にある正門の左側門柱にある蛇杖マーク.
一橋大学のページでは講堂?の上にあるマークを紹介しています.


左の東ドイツ発行の切手は,WHOのマークでアスクレピオスの杖を使っていますが,右のセイロン発行のメディカルスクールの切手では,ヘルメスの杖を使っています.
外国でも両方とも使われているのだろうか?


これは上にある動物病院と似ているはず,やはり動物病院のマークです.
神奈川県相原町,町田街道と16号バイパス交差地点そばの青木動物病院.

2001.05.04


看板のはなし その2
表紙 にもどる