ポケットモンスター ルビー・サファイア

任天堂 2002/11/21

公式サイト

レビュー

言わずと知れた超人気シリーズのGBA第一作目。
基本システムはそのままに大幅なパワーアップを遂げた。
前作までとのデータ互換が無かったり、従来のポケモンの多くが直接出現しなかったりで、
発売当時は不当に低い評価を下された気がする。

まず前作までのGB版と比較すると、当然のように色遣いが格段に鮮やかになっている。
背景はもちろん、新登場のポケモンのデザインも色彩が強くて派手なものが多い。
これはプラットフォームが変わったことをアピールするためのものでもあるだろうが、
(前作まで、ポケモンのグラフィックには背景や輪郭も含めて4色までしか使えなかった)

舞台となる「ホウエン地方」が南国という設定であるため、違和感なく受け止められるのが上手い。

また、表現能力が上昇しながらも、従来通りキャラクタ単位(マスごと)の移動と、
それに合わせて四角張ったフィールドグラフィックを踏襲している。
フィールド画面を一枚絵のように描くやり方よりぱっと見の印象は劣ってしまうが、
システム重視の本作で使うならば実に正しい選択であろう。
同様に、敢えて生楽器っぽさを目指さずに、ゲームらしい電子的な音楽に徹しているBGMにも好感が持てる。
技術に振り回されることなく上手に使いこなしていることの証拠。

しかし技術面の進歩がプレイヤーの快適さに直結しているのはポケモン預かりシステム。
従来のように(メモリの都合か?)移動やボックス変更のたびに強制セーブされることもなくなり、
何よりもボックスの中身がアイコンによって一目で把握できるようになった。
インターフェイスはプレイヤーにとって非常に重要だが、ないがしろにしているゲームが多いように思う。
セールスポイントとして活用しづらいからどうしても後回しになりがちなのだろうか。
それを思うと、ポケモンのように開発者がじっくり考えられる環境は幸せなのだろう。

ゲーム本編をしばらく進めていると、登場するポケモン達が新登場のものばかりであることに気付く。
実際、最初のジムまでは従来作までに登場したポケモンは全く登場しない。
さらにそれらの新ポケモンのいずれも、技や能力、特性などに一癖も二癖もあるやつばかりで、
従来の知識があるプレイヤーも、新規に始めたプレイヤーも、
序盤から新鮮なインパクトを味わえる仕組みになっている。

システム面で前作と比較してすぐ気付くのは、内蔵時計による時間システムを採用しながらも、
ゲーム上では「時間帯」の概念が無くなったことだ。時計に関係なく外は明るいままである。
賛否両論はあろうが、現実とゲーム内では時間のスケールが明らかに異なる上に、
(例えば一瞬で他の町へ移動したり、旅立って数時間で殿堂入りトレーナーになったり)
野生ポケモンの分布以外に時間に関する要素を用意するのは手間がかかるようなので、
(例えば真夜中に平然と人々が歩いている上に会話内容が昼間と同じだったり)
時間の影響を薄くしたのは妥当な判断であるように思う。
時計は日付変更判定や、後述の木の実栽培に関する経過時間判定などに限定的に使われる。

ストーリーに着目すると、従来とは雰囲気が異なってファンタジー色が強い。
陸や海を増やすべく活動する謎のカルト集団と、彼らが狙う創造神を巡る冒険が繰り広げられる。
前作までの悪役、行動が支離滅裂な自称ポケモンマフィアのロケット団よりは行動に一貫性があるし、
何より、平和で満たされた世界における悪役には、マフィアよりも狂信者集団がふさわしい。
大地や海を作ったとされる(少なくとも神話ではそう伝えられている)ポケモンと主人公の出会いは、
物語の中では単なる通過点であり、ポケモン自体も少々強いだけで他と大きく変わるわけではないというのが、
「ポケモン」式のファンタジーの見せ方として実に興味深い。
フィールドマップが広く複雑になって、「そらをとぶ」の入手時期も前作・前々作と比べると遅めなので、
冒険をしている雰囲気はより強くなっているのも本作の特徴。

その他、本作における新要素として「ポケモンコンテスト」がある。対CPでも対人でも可能。
ポケモンの技をアピールに使って、かっこよさや美しさを競うというもの。
必須イベントではなく、コンテストの攻略も本編に何の影響も及ぼさず、
コンテスト用のパラメータは戦闘には一切関わらないというミニゲームだが、
だからこそ本編ではとてもできないような新要素がたっぷりと詰まっている。
技とともに評価対象であるコンディションの上昇が非常にシビアだったり、
その手段であるお菓子「ポロック」の作成がアクションゲームだったり、
さらにその原料である木の実の入手方法が変則的なものばかりであったり。
同じ事をポケモンそのものや戦闘用パラメータには適用できそうにない尖ったシステム。
これだけでもゲームとして成り立つ程の新要素を本筋から切り離したのは潔い。

通信システムやそれに関わる要素については全体的に大幅に強化された。
関連作品のものとまとめて扱いたいので別ページ参照

全体として計算尽くされた完成度の高さが感じられる。GBAを代表する1作。
基本的には、今からプレイするのであればマイナーチェンジ版のエメラルドを勧めるが、
エメラルドを持っている(または手に入れる前提)場合も、主に通信関連で出番が無いわけでは無い。
安く売っていたらこちらから入っても良いかな?と言ったところだ。

2015年10月13日追記:ブログにて、自分とこの作品との関わりについてを総括をしてみたので興味のある方はどうぞ。
ルビー・サファイアという時代


最終更新日(本文):2010/10/20

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