ポケットモンスターGBA/GC版 通信要素について

GBA版(ルビー・サファイア・エメラルド・ファイアレッド・リーフグリーン版)、
およびそれと連動するGC版(ボックス・コロシアム・XD)における通信プレイに関するレビュー。

本作を代表するシステムであり、複数の要素と密接に結びついている通信対戦と通信交換を中心に解説する。

通信環境の構築:

通信機能を搭載したゲームにとって痛いのは「通信したいけれども出来ない状況」だ。
通信ケーブルのような通信機器は、最初から対人プレイを意識したプレイヤーしか買わない。
せっかくお互いが同じゲームを持っていたが、ケーブルが無くて通信を断念した例は多いだろう。

ルビー・サファイアでは、両バージョンを予約した人に、予約特典として通信ケーブルをプレゼントした。
何と実用的な予約特典か。これによって通信は格段に促されたはずである。
さらに進んで、ファイアレッド・リーフグリーン、及びエメラルドについては、最初からワイヤレスアダプタが同梱。
最終的にはDSのように本体に通信機能を内蔵するように任天堂のハードが進化するわけだが、
その方向性はルビー・サファイアの時点で定まっていた。

初のGC版ソフトはなんとGBAのポケモンデータを管理する専門のツール。
同梱されたメモリーカードと接続用のケーブルの価格を考慮するとソフト自体が実質無料というサービスぶり。
言ってみれば、通信インフラの整備に非常に力を入れていたのがGBA期のポケモンである。

通信対戦と育成システム:

従来通りのシングルバトルの他に、ポケモンを同時に2体ずつ繰り出すダブルバトル、
ダブルバトルと同様だが1人1体のポケモンを場に出して4人で戦うマルチバトルが選べる。
通信対戦の結果は本編に全く影響を及ぼさないという点も1作目から変わらない。
…対戦システム自体はこれだけだが、それを取り巻くゲーム内の事情は大きく変わった。

まず、通信対戦を促す仕組みとである「バトルタワー」の存在がある。
経験値などが入らず、アイテムも使えない、通信対戦に似た戦闘をひたすらCP相手に繰り返す施設。
CPの行動がランダムなので単独での出来はいまいちだが、
それでも本編に「通信対戦風」のイベントを入れたのは画期的だった。

バトルタワーのルールがゲーム内ではっきり示されているおかげで、
見知らぬ人と対戦するときでも「Lv50タワールールで」等と言えば一発で通じるため気軽に勝負できる。
従来も公式ルールは存在したが、64版やテレビ番組に触れていない人には知る由も無かったので、
コミュニティ外の人と対等な条件で通信対戦を行うのには骨が折れた。

さらに、通信対戦を促すポケモン育成の仕組みも大幅に変更された。
まず今作の新要素である「特性」の追加と、覚えられる技が制限により、種族ごとの個性が強くなった。
加えて(隠し要素ではあるが)ステータスにプレイヤーの個性を反映させることができるようになった。
たとえステータスで劣った種族でも、持ち味を生かした(他のポケモンの「劣化」ではない)戦い方ができる。
プレイヤーの選択肢が増えたことで、定期的に対戦を重ねると「流行」や「対策」が自然と現れてくる。
このような状態になると、別の集団との交流がまた非常に面白くなってくる。
育成自体が短時間でできるようになったのでパーティの試行錯誤がやりやすくなったのも大きい。

このように、ルビー・サファイア単独でも十分完成されていたのだが、
発売から1年後、コロシアム、ファイアレッド・リーフグリーンが相次いで発売され、
カードゲームの拡張パックのように、システムはそのままに使用できるポケモンや技が徐々に追加された。
これにより「GBA版ポケモン」という一つの環境を、非常に長期に渡って遊び続けることができた。
ルビー・サファイアの時点で、内部データには全ポケモンが存在しているので、
「出し惜しみ」とも非難されかねない展開だが、環境に変化を与えるという点は面白さに直接結びついていた。

通信交換と協力システム:

2人のプレイヤーが花一匁式の交換を行う。システム自体は1作目から全く変わっていない。
しかし、育成システム(より具体的に言えばタマゴシステム)の変更が間接的に重要な影響を及ぼす。
従来は自前で通信環境を揃えてしまうような人にとっては、他者との通信交換がほとんど意味を成さなかったが、
今作では(詳細は述べないが)「育成環境の構築を分業する」という方向で、
他人との協力して「親」となるポケモンを集めることが重要となっている。

もっとも、余計な手間がかかるようになったと言ってしまえばそれまでである。
だが、これによりやり込みプレイヤー同士の交流の輪が広がったことは間違いない。
GBA版のポケモンでは、他のプレイヤーと協力することで大きく有利になるシステムが多い。

例えば、新たな通信要素「秘密基地」。任意の場所に作った秘密基地が、
通信によって相手データにも出現し、その時のパーティと戦闘ができるというもの。
(残念ながらファイアレッド・リーフグリーンには採用されなかったのだが)
「金銀」経験者には、部屋の模様替えとトレーナーハウスを一体化させたシステムといえばわかりやすいか。
秘密基地での戦闘(経験値なども入る)というのは、悪用も含めて様々な可能性が考えられる。
タマゴの「親」集めと同様に育成環境の分業と言える。
面白いのは通信相手のみならず、「通信相手の通信相手」の基地も入り込むこと。
つまり、「通信相手が以前他の人と通信した時に入り込んだ基地」も連鎖的に入り込む。
一度のデータの中に同時に存在できる基地の数は限られ、
通信時に上限を超えるとほぼ入れ替わりになるが、お気に入りの基地は登録することで保護される。
便利な基地は好まれて、本人の知らないところで果てしなく拡散していくことだろう。

ポケモンの1作目が出たばかりの頃の開発者のコメントで
「BさんがAさんからもらったポケモンをCさんにあげると、
CさんはAさんに会ってもいないのにAさんのポケモンを持っているというのが面白い」
というようなものがあった。ポケモンは手放すといなくなるので上記のように事が運ぶのはあまりなさそうだが、
相手のデータにコピーされる秘密基地であれば手軽に上記の状況を作り出せる。

その他、通信人数が多いほど有利になるポロック作り(ルビー・サファイア・エメラルド)や
木の実クラッシュ(ファイアレッド・リーフグリーン・エメラルド)などのミニゲームを搭載。
こちらはより明確に「共同作業」という形をとっている。
両ミニゲームで使用する木の実は入手手段が限られている物が多いが、栽培で増やすことができるので、
プレイヤー同士でそれを分け合うという段階から既に「共同作業」は始まっている。

まとめ:

携帯ゲーム機のソフトでは、他のプレイヤーとの通信が行えるゲームが数多い。
それも、あらかじめ用意されたデータでの通信対戦のような一過性のものではなく、
プレイヤー双方のデータが相互に影響しあうようなものである。
しかし、ポケモンほど上手に機能している例はあまり無いと思う。

なぜか?それはもちろんプレイ人口の差もあるのだろうが、通信をさせる動機が欠けているからではないか。
機能として対戦ができる、交換ができるというだけでは見向きもされない。
プレイヤーを惹きつけ、さらに引き留める周辺システムを考える必要がある。
その点、ポケモンは非常に上手い。

1作目から積み重ねられてきたノウハウが花開いて、
一つの完成形となったのがGBA版における通信システムではないだろうか。


最終更新日:2008/07/20

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