SUBARU IMPREZA WRX STi (6MT) 2000年11月
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メーカー純正チューンドカー
8月にデビューしたばかりにNewインプレッサに,早々とSTiバージョンが登場しました。三菱のランサー・セディアにエボリューションZ(?)がまだ出ていないだけに,雑誌の取り扱いも大々的です。ランエボと並ぶ“メーカー純正チューンドカー”の一方の雄に,早速乗ってきました。(ちなみに,旧型のSTiには乗ったことがないので,比較はできません(^_^;スバルはWRCに改造範囲の大きな“WRカー”というクラスで出場するということで,“グループA”のホモロゲーションを取らなければならないランエボと違い,より“普通の車”に仕上げることができる,とか…これは雑誌の受け売り。たしかに見た目,特に外観はノーマルのWRX NBとほとんど変わりません。17inのゴールドホイールやSTiカラーのピンク(チェリーレッドというんだそうです)のバッジ類が識別点となるくらい。先代のSTiと違ってリアスポイラーも標準型と同じ物。試乗車にはフロントのリップスポイラーが付いていましたが,これとて標準仕様にも装着可能。よくよく見ればテールパイプやエアスクープが違ったりするようですが,まず分かりませんネ。
見ると乗るとで大違い!
シートの形状も標準仕様と同じ…と思って乗りこむと,座面の硬さにびっくりさせられました。ほとんどクッションの存在を感じられないのです。以前に試乗したWRX NBよりあきらかに硬いことが分かります。でも,小柄(164cm,48kg)な自分でもぴったりおさまって,よほどハードなドライビングをするのでなければ身体がズレることはなさそうです。クラッチを踏んでまたびっくり。NBとの違いがはっきりと分かるくらい重いのです。最近の車で,これだけの重さのクラッチは覚えがありません。これに較べたら私のユーノスなんてフニャフニャです。6速ミッションの動きはとても滑らか(400km余りしか走っていないのに!)で,特にリングを引いて操作するリバースの入り方は快感といっていいほど(だんだんオタクになってます)。
Loに入れてゆっくりとスタート。駐車場から出すときはともかく,道路に出るとステアリングの遊びの少なさが印象的です。なにしろシフトアップに気を取られると進路が乱れるくらい。11年前にユーノス・ロードスターがデビューしたときにこうした表現をされました。実際にロードスターに初めて試乗したときは,それほどにも感じなかったのですが,こちらは文字どおりの敏感さです。こんなところまでチューンしてあるのか…と感心するやら呆れるやら。(あとで資料を見たら,本当にステアリングギアレシオがクイックになっていました)
怒涛の加速
Lo,1,500rpmから踏みこむと3,500rpmくらいまではエッ?と思うほどのモタモタぶりを見せてくれました。この領域ではNBよりも遅いかもしれません。しかし3,800rpmに達するや7,000rpmを越えるまでが一瞬です。2ndにシフトしても,4,000rpm以上にタコメーターの針がある限り恐いくらいに加速しました。実際,いつのもコーナーにいつものつもりで進入して,大袈裟にいえば恐怖を感じるほどでした。コーナー間のストレートでの加速で,車速が思った以上にのっているわけです。もっとも自分の感覚がついていかないだけで,STiはステアリングを切るだけで何ごともなく曲がりましたが…。NBでは試みなかったのですが,スタート時に3,000rpmほど回していっきにクラッチミート。4輪駆動だというのに225/45ZR17のタイヤがずるりと滑り,1,500rpm近くまで回転落ちするものの,息継ぎもせずに加速しました(3,500rpmまでは例のごとくモタモタですが)。もっと回転を上げて発進したら…とは思いましたが,さすがに理性が働いて(?)遠慮しました。NBに対して出力とトルクが12%増し,重量が7%増しということですが,動力性能に関しては数字以上の差を感じました。
面白かったのはREVインジケーター。設定された回転数に達するとランプとブザーで知らせるというものですが,試乗車はわずか5,000rpmに設定されていました。鳴ってからも回し続ける,いや回ってしまうためまったく無意味。レッドゾーンの8,000rpm近くに設定して,はじめて有効な装備でしょう。もっともディーラーとしては「新車だから5,000rpmでシフトアップしてね!」のつもりだったのでしょうね。ごめんなさい。
難しいブレーキ…強力だけど
気になったのがブレーキペダルのストローク。何気なく踏むとカックンブレーキになってしまうくらい,ストロークが小さいのです。遊びの部分は別として,有効なコントロールしろが小さい。ヒール&トゥの際には,つま先にあまり力とストロークを与えなくてもよいから楽といえば楽ですが,コントロールが難しいことには違いありません。もっとも“慣れりゃァしまい”,と言われたらそれまでのレベルです。ブレーキの効きそのものは文句なしに強力。例によって70km/h+αからフルブレーキングを試みたのですが,まるで劇画の擬音語のように“ギョバァッ!!”とタイヤを鳴かせて止まりました。それでもABSはしっかり作動していましたから,制動力重視のABS設定であることが素人の自分にもわかります。そんな減速・停止でもノーズダイブが起きないのもすごいですねぇ。
1430kg!!
WRX NBの試乗記に「あまり感動しなかった」と書きましたが,今回はひさしぶりに「目が点になる」思いをさせてもらいました。ところで,標準仕様のNBより90kg増しの1,430kgという車両重量は,スポーティーカーというには余りにも重いような気がしないでもありません。なにしろレガシィB4 RSKでも1460kgですから。絶対的な性能を追い求めると,恐竜のようにどんどん大きく重くなるというのは昔から言われることですね。R34のスカイラインGT-Rが1,540〜1,560kg。ひところ軽くなりかけた国産高性能車は,またまた肥大への道を歩むのでしょうか。先代インプレッサの(STiでない)WRXも年を重ねるごと高性能化しました。そのうちにWRX E-tuneとかいって,280ps/36kgm(6速MT)なんてモデルが,1,380kgくらいで登場するのかもしれませんね。(笑)