トミタ夢工場 Tommykaira ZZ (5MT)  1998年5月

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シートを一番後ろまでスライドさせないと,乗降できないコックピット。高く幅広いサイドシル。レーシングカーもかくやと思わせるタイトで硬いバケットシート。小径のステアリングホィール。短く直立した金属製のシフトレバー。レッグルームの奥深く,床からまっすぐ生えるアルミ製のABCペダル。いかにもいかにものレーシーなメーターやスイッチ類。どれをとっても普通ではありません。さすがにレーシングスポーツを名乗るだけのことはあります。“ロードゴーイングレーサー”ってこういうものかな,と思わせます。

「発進不能の場合は試乗を取りやめてもらいますから」セールスマンの冷ややかな声を左耳に聞きながら,タコメーターをにらみつつ,1500rpm付近で恐る恐るクラッチミート。予想に反して,軽量な車体のせいか,あっけないくらいやすやすと前へ出ます。重めのアクセルペダルに足を当てているだけの,アイドリングに近い状態でも,スルスルと進んでゆくのです。もちろん,そんな回転数/速度からラフにスロットルを開ければ,エンジンはゴボゴボと息をついて抗議しますが,これがキャブレター付きのハイチューンエンジンらしさなんですね。

さて,4連の可変ヴェンチュリーキャブレターによって燃料を供給されるエンジンは,低回転・低速域でこそむずかりますが,ひとたび回転を上げてゆけば,なかなかスムーズな加速をもたらします。セカンドではレブリミット近くまで引っ張りましたが,背後からは吸気音,メカニカルノイズ,排気音が混ざり合った快音が一気に高まり,4000〜5000 rpmを越えたあたりから,それこそ背中がシートバックに押し付けられる加速が味わえます。690kgの車重に180psの出力。カタログが謳うパワーウエイトレシオ3.8kg/psは,たしかに非日常の世界を演出してくれます。クラッチペダルはかなりの踏力を必要とし,半クラッチなしでスパッと繋がる方ですが,扱いにくくはありませんでした。

ここ9年ほど,パワーステアリングになれきった身には,ノンパワーでレシオの速いステアリングは手ごわいかな?と覚悟していたのですが,記憶に残るAE86(ノンパワステのGTV)に較べれば,かえって軽いくらい。レーシングカート(ex.ヤマハSL100)ほどではないにしても,遊びがほとんどない,やたらにクイックなステアリングは,文字どおり手首の動きでノーズの向きをかえることができました。試乗コースの距離はけっこうあったのですが,すべてが直線路と直角に曲がる交差点だけだったため,コーナリングについてはあまり記すことができません。

1番印象的だったのがボディの剛性感。試乗コースが比較的フラットな路面中心だったせいもあるかもしれませんが,多少のギャップにもミシリともしないボディは,サスペンションが路面の起伏に応じて上下する様子が感じとれると錯覚させられるほどでした。帰りにユーノスに乗り換えたとき,ユーノスのボディがめちゃくちゃヤワに感じられて驚くと同時に,少々情けなくなりました。(ユーノスといえば,ZZのサイドミラーはユーノスのそれの流用でした)

乗り初めにとまどったのがブレーキ。ストロークではなく,踏力に応じて効くといったタイプで,踏んでもほとんどストロークしないペダルに一瞬「えっ!?」と思ったものの,慣れてしまえば意外なくらいコントロールしやすいタッチでした。効きそのものは強力。軽量+ワイドタイヤのおかげか,かなりのハードブレーキングにも音を上げず,確実に減速したのはさすがでした。

並みの車とは一線を隔したTommykaira ZZ。手に入れれば,本当に楽しいオモチャになりそうです。ただし,しっかりした車庫,自由に操れるだけの腕,それに十二分に性能を引き出せるシチュエーションがそろうなら…。

   生産&輸入中止?
衝突安全基準を満たしていないZZ,輸入中止になってしまいました。人命尊重の観点からは,当然といえば当然ですが,高根の華とはいえ,楽しい車が消えるのはちょっとさみしいですね。試作中というクローズドの軽量スポーツ,ZZVに期待したいところです。

⇒なんと!安全基準をクリアして,輸入継続になりました。ZZUになるのも時間の問題でしょうが…。そういえばオートバックスの“我来也”も,解良氏の手によるそうですね。日産のSR20エンジンを積んで,スペックもほぼ同一。英国で生産という手法も一緒。チャンスがあったら乗りたいものです。