TOYOTA MR-S ”S EDITION” (Sequential M/T) 2001年01月

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   シーケンシャルマニュアルトランスミッション!
鳴り物入り(?)で登場した,クラッチレスのマニュアルトランスミッションですが,2000年の夏に登場したのに,なかなか試乗車に出会えませんでした。年が明けた今回,ようやく試乗することができました。オートマ免許が普及してきた現在,けっこう売れ筋だと思うのですがどうなんでしょう。試乗車を置かなくても売れるのか,置くほどには売れないとふんでいるのか…どっちなのでしょう?

さて,そのシーケンシャルミッション。金属の玉のついた,まるでフェラーリのようなシフトレバーです。リバースとニュートラル,そしてマニュアルのポジションはスポーツモード付きのオートマチックとよく似ています。一番の違いはパーキングのポジションがないことくらいでしょうか。操作感は軽めで,シフトレバーはスコスコと動きます。

トランスミッション以外は旧来のMR-Sと全く同じ。ぐっと高めのドアやインパネに囲まれて,身長のない私には少々閉塞感が感じられるのはこれまでどおりでした。“タイトな着座姿勢”という表現も可能なのかもしれませんが…季節柄ソフトトップを閉じたままだったので,よけいにそう感じたのかなぁ。

   シフトアップはこつが必要
問題のシーケンシャルM/Tですが,マニュアルトランスミッションに慣れた身としては,左足をフットレストに置いたままでマニュアル操作に挑むのは,やっぱり少なからず違和感があるものの,発進はごくスムーズ。断続的な半クラッチを機械が自動制御するとかで,AT車のように滑らかに動き出します。しかし,シフトアップには,少々こつや慣れが必要なようです。アクセルをONのままシフトアップをすると,一瞬遅れてがくんと繋がる感じがするのです。こうしたところはやっぱりマニュアルミッションか…と,アクセルを抜いてからシフト操作をすると,今度はOKでした。あとでカタログを見たら,「シフトアップの際には、少しアクセルを緩めることでよりスムーズな変速が可能です」と書かれていましたネ。本当にその通りでした。

   シフトダウンは上手
一方,シフトダウンの際には自動的にブリッピングを与えながら,上手にギヤを落としていきます。ヒール&トゥに慣れた当方としては,思わず右足の踵でアクセルを踏みそうになるのですが,そうした操作は百害あって一利なし。かえってぎくしゃくした動きを招くだけでした。機械任せにするための慣れが必要なのかも…これはこれで困ったものです(この仕様を買う人は困らないか)。ステアリングホイールのシフトスイッチでも,操作の手順は同じです。フロアのシフトレバーと違い,「普通のマニュアルミッションとは別物」との意識化が図りやすいせいか,こちらの方が妙なギクシャクなしに“セミ・オートマ”を体験することができそうです。

当たり前のマニュアル車でのシフトダウンが“アクセルOFF→クラッチ断→ギヤをニュートラル→クラッチ接→アクセルをあおってブリッピング(回転合わせ)→クラッチ断→ギヤをダウン→アクセルを踏みながらクラッチ接”という手順を(ほとんど無意識とはいえ)必要とすることを思えば,“シフトダウン”のひと手間で済むMR-Sのシーケンシャルミッションは優れものといえるでしょう。

   アルファより賢い? でも…
以前に乗ったアルファロメオ156のセレスピードより,微速での前進やバックははるかに楽でした。セールスさんが自慢していたように,電子制御による半クラッチの使い方が上手なせいでしょう。上り坂をパーキングスピードでバックしても,不安感・違和感はありませんでした。アルファ156の,がくがくぴょこぴょこしたバックとは雲泥の差といえます。

でも,アルファと違ってオートマチックモード(アルファではシティモード)は付いていません。マニュアルオンリーなら,クラッチワークを駆使したノーマルのクラッチ付きマニュアルトランスミッションの方が楽しいかな,と思えます。ちょとした練習で,クラッチワークなんて身につくものですから…。どうしてもクラッチが使えないというケースで,でもマニュアルで走りたいという場合に限りお勧めというところでしょうか。

いくらブリッピングが上手でも,それをドライバー自身が行なうことがドライビングの楽しみなのですから。