試乗の心得(?)

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  限界走行禁止?
先日,某自動車専門誌を読んでいたら,ディーラーでの試乗のこつや注意事項を記した記事が目にとまりました。曰く「急発進や急停止,急な転舵など,車の限界を試すような運転はしないのが常識」「冷やかしの試乗はマナーとしてやってはいけない」云々。そりゃあ悪うございましたねぇ。私がやってきた試乗は,全てルール違反でございます…。

確かにディーラーの立場に立てば,この雑誌の言う通りなのでしょう。限界走行をさせれば,当然事故を起こすリスクが増します。人身事故を起こさないまでも,虎の子の試乗車を壊されてはたまらないでしょう。エンジンや足回り,そればかりかボディへの負担が増し,車の寿命も縮むに違いありません。しかし,記事が薦めるような運転をして,何が分かるのでしょうか。ただ「買う前に乗ってみました」というだけの話ですよね。

もとろん,私とて暴走的な運転を善しとしているわけではありません。しかしせっかく試乗をするからには,少なくともどのような性格の車かを判断できるような走り方をしなければ,意味がないと思うのです。特にスポーティーな走りを売り物にしているような車であれば,なおさらではないでしょうか。実は,私がこんな試乗をするようになったのには,こんなきっかけがあるのです。

  R32スカイラインはタイヤが鳴かない…かな?
もう一昔も前の話になりますが,R32のスカイラインが,それこそ鳴り物入りで登場したときのことです。最近の例で言えば,アルテッツァのデビューに匹敵するようなインパクトでした。当時,事故で傷物になったAE86に乗っていた私は,文字通り次期購入車種の筆頭候補にあげて,いそいそと試乗会に出かけていきました。試乗車はGTS-TtypeMでしたから,GT‐Rが出ていない当時としてはフラッグシップ的なモデルでした。

コンパクトな外観,ホールドのよさそうなシート,いかにもスポーティーなデザインのハンドルと,見た目は評判通り。今に較べると,さほど意地悪でなかった(笑)私は,普通にスタートさせて赤信号で普通に減速。いや,さすがにスカイライン,「真綿で締めつけるような」という手垢のついた表現を使いたくなるくらい,気持ちよく減速します。リアシートのセールスマンに素直に感想を伝えると,彼は「そうでしょう,そうでしょう。このスカイラインは徳大寺有恒がサーキットで走らせて,絶対にタイヤが鳴かなかったというくらいですから」とのたまいました。

  ……こじれば鳴きます!
徳大寺有恒がどんな運転をしたのか知りませんが,タイヤが鳴かない車なんて物理的にありえませんよね。で,この言葉にカチンときた私は,次の広い交差点にちょっとだけオーバースピード気味に進入し,スパッとハンドルを切り込みました。当然フロントタイヤが派手なスキール音を上げ,アクセルを踏み込んだら今度はテールが外に出て…。まぁ当たり前といえば当たり前の挙動を示しました。

カウンターをあてて立ちあがってから「タイヤ,やっぱり鳴きますね」と声をかけたのですが,返事がありませんでした。いいかげんなセールストークを真に受ける人ばかりではないでしょうが,こういう広報が日常だとしたら,自動車ってやっぱり自分で試してみなければ実情は分からないと感じた次第です。

  アクセルはレッドゾーンまで,ブレーキはABS作動まで
ということで,爾来交通事情が許す限り,全力加速と急減速(ABS装備が普通になってからは,それが作動するまで),速めの転舵によるレーンチェンジを試すようになったわけです。もっとも,そうした操作をする前に,同乗のセールスマンに「はい,アクセル踏みまぁす」「ちょっと急減速します」「車線変えますから」と声をかけることにしていますが…。

そうやって走ってみると,雑誌の試乗記と同じような評価になったり,ちょっと違うなァと感じたり。車の個体差もあるでしょうし,運転する側の個性,そしてコースや天候の条件の違いもありますから,全く同じ評価になるわけはありません。おまけにこちらは限られた公道という悪条件の中ですから。それでも広報チューンの存在を疑うようなケースも,少なからずありますね。最近は試乗前には雑誌の試乗記は読まないようにしています。

   試乗は車と人の性格に応じて…
ところで最近,ビスタ・アルデオに乗りました。試乗車が2000ccの"S Selection"という一番スポーティーなグレードだったため,自分のBG9と同じようなつもりになってS字コーナーを切り返したら…グラッときました。「思ったほど踏ん張りませんね,あまり足回りの強化はしてないのかな」とセールスマンに問うと,「"S Selection"って,言ってみれば内外装のセットオプションなんで,機構的な部分はいじってないんですよ。基本的にファミリーカーですから,こういう走りをする車ではないですね」といわれてしまいました。ごもっとも。こうしたことは試乗前に確かめておくべきでした。

くだくだと言い訳めいたことを書いてしまいました。最初に挙げた雑誌の記事に,少々意地悪心を刺激されてしまったようです。もちろん,こんな試乗法を人に薦める気は毛頭ありません。良識あるあなたは,良心にしたがって有意義な試乗をしてくださいね!