JAGUAR S-TYPE 3.0 V6 (6AT) 2002年9月

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   異次元
このWebサイト始まって以来の“高級車”(価格からいえばHONDA NSXが最高ですが,あれは高級車とはいいませんよね)。いやぁ,さすがジャガー。クラウンあたりとは比較にならないくらいの車でした。いわば次元が異なっています。イギリス本国では「高級車といえばRRかベントレー。ジャガーは成り上がりの車」なんていうんだそうですが,ん〜,十分に高級感,重厚感にあふれ,“高級車”していました。今回はちょっと趣を変え,クラウンとの比較で話をすすめてみることにしましょう。

   コスワース製
エンジンがかかった状態で乗りこんだのですが,本当に静かです。クラウンの限りなく無音に近い静かさではなく,エンジンが回っていることは分かるのに,それが気にならないという感覚。本当にV6なんだろうか,というほどの振動の少なさです。コスワースのブロックにジャガーがヘッドを載せたエンジンなんだそうですね。そうか,ジャガーってフォードに買収されたんだぁ。では発進…あまりに前へ進まないため,こりゃあ2nd発進か?と一瞬思いました。アクセルの踏み始めが異様に重いのが原因です。その部分を踏み越えてしまえば,後は普通に加速しました。1.7tを超えるヘビー級の車重に243ps30.6kgmの出力。加速すれば当然エンジン音は高まりますが,音量は十分に抑制され,かつ音質はなかなかそそるものでした。困るのは速度感覚(^_^;で, 60q/hくらいのつもりが80q/hを軽々と超えてしまうこと。それに,速度計のスケールが260q/hまでなので,80q/hでも「まだまだ」に見えてしまうこと。

   気持ちのいい旋回性
試乗コースはかなりの長さだったのですが,いかんせん街中。いつものことですが,コーナリング云々がコメントできるようなシチュエーションはありません。交差点も全て左回りだし…。でも,走った限りでは非常に素直なステアリングです。操舵力も保舵力も適度な重さ,舵角と旋回の具合の調和,セルフセンタリングの自然さ。レーンチェンジを不必要に繰り返したくなるような…き,気持ちいい(^o^) クラウン(に限らずトヨタ車にはありがち)にみられる現実感の希薄なハンドリングとは,目指す方向が全く違います。つまり,単に移動できればいいという車,また後席でふんぞり返るための車なのではなく,移動の過程が,運転そのものが楽しい車。陳腐な表現ですが,ドライビング・マシーンという言葉がふさわしいようです。

急制動は試しませんでしたが(ABSに効きを試せるような雰囲気の車じゃないです!)ちょっと強めの制動ではきれいに減速しました。踏んだだけきちんと速度が落ち,少ないノーズダイブですうーっと停まる感じです。いいなぁ! かつてのジャガーの「猫足ひたひた」っていうのは経験したことがないのですか,ドイツ車的なしっかり感のある乗り心地でした。クラウンのように接地感のあいまいな,ふわふわした雲か絨毯のようなのではなく,足の動きがしっかり分かる印象です。「路面の凹凸はちゃんと感じるが不快ではない」といえばいいのでしょうか。つまりフラットライドな反面,ハーシュネスは結構感じるチューニングです。225/55ZR16という,今や国産高性能車なら控えめともいえるサイズのタイヤの特性も関係しているのでしょう。

   リタイア後にぜひ(笑)
近年まれな,べた誉めの試乗記になりました。でもね,試乗車の¥6,200,000という,ほとんど天文学的な価格は別にしても,今すぐ欲しいという車には感じられませんでした。上手に歳をとって悠悠自適のリタイアができたら,こんな車も似合うんじゃァないか,そんな印象です。もっとも,平均的サラリーマンの収入&退職金&年金では,最低でも¥5,250,000というJAGUAR S-TYPEは,夢のまた夢ということになりそうです。 (2002/09/07)