TOYOTA FunCargo 1300X (4AT) 1999年9月
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ワゴン?それともミニバン?
10年前にAE92,つまりカローラのセダンGTを買ったディーラーに,ひさしぶりに顔を出しました。ヴィッツのワゴン版,ファンカーゴの売れ行きは,発表以来2週間足らずで2ヶ月分のバックオーダーを抱えているという景気のよい話でした。トヨタの”世界戦略車”ヴィッツの好調を横目に,モデル末期のカローラUやターセルで悪戦苦闘していたカローラ店やビスタ店には,まさに待ちに待った慈雨でしょう。上記のようにヴィッツのワゴンという位置付けですが,今時のクルマ雑誌風にいうと2列シートのミニバンといったところ。運転席からラゲッジルームまでひとつながりの移動可能な空間(なぜか携帯空間と称しています。どういう意味かよくわかりませんが)で,なんだかワンボックス車みたいです。それを可能にしているのが,例の”リトラクタブルリアシート”とやら。
リンクの魔術!リアシートのたたみかた
クルマ雑誌に書かれていた「フロントシートの下に格納」はさすがに嘘(これは断言できますね)。ちょうど現行のビスタ/アルデオのように,後席足元の床が二重底になっていて,その隙間にしまうというのが本当のところです。運転席の下には,せいぜいヘッドレストが入るくらい。からくりは違いますが,後席足元を利用するという点では,ワゴンRと発想がちょっと似ているかもしれません。このリトラクタブルリアシート,格納に要する時間は,私がはじめて挑戦して30秒ほど。担当のセールスマンはおのおの数秒で格納と再セットを実演してくれました。さして力も要らず,実に巧妙な仕掛けであることは確かです。さすがにリヤセンターシートは床下には入らず,ラゲッジルームにカーゴネットで固定するようになっていました。これが結構邪魔っけ。最近の軽自動車のように,スペアタイヤを廃して,ラゲッジの下に入れてもよさそうに思います。ランフラットタイヤが普及したら,実現するかもしれませんね。私のようにマンション住まいだと,気楽に部屋に運ぶという訳にはいきませんから…。
足元がポコポコ!?
ビスタ/アルデオでもややそうした傾向がありましたが,後席の足元が取り外し可能な板(フロアボード)のため,足を動かすたびにポコポコした感じがするのは否めません。おまけに靴の泥がフロアボード下の空間(フロアボックス)にたまりそうです。なんとかならないものでしょうか。もうひとつ気になったのがトノカバー。オプションで,2本の棒(ユーティリティーバー)の上にトレイを載せるタイプなのですが,出先で急に大きな荷物を積むはめになったら,トレイはどこにしまうのでしょう?それにいまどき,トノカバーが標準でつかないというのも考えものですよね。小中学校の学期末になると,通知表が盗まれるという事件が決まって報道されますが,スーパーマーケットやパチンコ屋(!)の駐車場で,カバンなどが外から見える状態だったという例がほとんどだそうです。
走ってもみました(笑)
スペースユーティリティーとシートの話題に終始してはならじと,ちゃんと試乗もしてきました。展示車はステアシフトのついた1500のGでしたが,試乗車は1300Xで,一般的な4速のコラムシフトでした。こうした性格の車にステアシフトって,ちょっとミスマッチかな?と思います。運転席はヴィッツ同様に小ぶりなものの,表皮がパンと張ってしっかりした感じです。ちょっとドイツ車っぽいといったら誉め過ぎでしょうか。サイドの隆起も適度で,私のような小柄な人間にはまったく問題がありません。しかしヴィッツの助手席を底着きさせた,体重80kg+αの我が悪友のように,ゆたかなお尻のもち主にとっては…一度聞いてみたいですね。
さて,ちょうど1トンの車重に88ps/12.5kgmの2NZでは力不足かな?とも思いましたが,街乗りに関しては大丈夫でした。かなり急な上り坂も試してみましたが,ストレスなく登っていきました。現代の水準では少々しょぼく見えても,自分が昔乗っていたKE20のカローラと同じ位の馬力過重なのですから,そんなに不足するわけはない道理です。ATの効率もよくなっていることだし…
意外に静か!
高回転までまわすとちょっと辟易というヴィッツの1SZとは大違い。かなりの加速を試みても,そんなにうるさく感じません。エンジン自体の特性なのか,遮音対策のちがいなのかはわかりませんが,これなら十分合格点が出せそうです。妙な振動もなく, NVH対策もまずまずといったところ。けっして長距離を走ろうとは思いませんが,日常の買い物車としては十分以上でしょう。背の高い車ゆえ,振りまわすような走りはしませんでしたが,ちょっとしたワインディングを流したところでは,初期のヴィッツにみられたようなヒョコヒョコ感はありませんでした。ブレーキもABSが効くまで踏んでみなしたが,不安感はありません。ABSの介入がやや早いかな?という気もしましたが,横に乗ったセールスマンによると,ABSが作動してもさらに踏みつけると,より大きな制動力が得られるということでした。
街中で困りはしないものの…
小回り性能はまずまず良好。交差点近くに駐車車両があるという,ちょっと嫌なシチュエーションでも,何のことなしにすり抜けました。最小回転半径は5.1mですからけっし優秀な数字とはいえませんが,前後のオーバーハングの小ささが功を奏しているのでしょう。普段乗っているのがオーバーハングの大きなBG9ですから,差が目立ったようです。アイポイントが高いのも,取りまわしのよさに貢献しているようです。ただ,ヴィッツに比べて,ホイールベースが2.37mから2.5mに1.05倍伸びただけなのに,最小回転半径が4.1mから1.18倍にも拡大しているのはいただけません。タイヤが155/80R13から175/65R14へと幅広になった分だけ,前輪の切れ角が減ったのでしょうか。こうしたところに金をかけてくれないのが,いかにもトヨタだったりして…
宣伝戦略はお見事!
いつものようにわずかな試乗でしたが,街乗り+αという条件では,買って損のない車だと思いました。さて話は変わりますが,ヴィッツにしろ,このファンカーゴにしろ,宣伝の主要な媒体が新聞なのだそうです。若者向けの自動車雑誌ではなく,大人の男性に照準を合わせると新聞が最適という話でした。両車の売れ行きを見ると,トヨタの”販売戦略”,恐るべしですね。FunCargo追記 1999年9月
例の体重80kg+αの友人から電話が入りました。こちらの予想した運転席ではなく,リアシートにだめが出ました。折りたたみのために小ぶりで華奢(というよりチャチ)な作りとなったのが理由のようです。彼は私より脛が長く,またシートの沈み込みも大きいため,膝裏が浮き,尻だけで体重を支える状態になるそうです。床と座面の高低差が小さすぎることと,座面の構造や材質が問題ということ。さすが30数台を乗り継いだ猛者,着眼点が鋭いですね。小柄な人,あるいは子ども専用と割り切るべきなのでしょうか。