TOYOTA CROWN 3.0 ATHLETE (6AT) 2004年01月

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  “いつかはクラウン”症候群
今,うちの職場ではクラウンの話題が異様な盛り上がりを見せています。9年落ちのインスパイアからの乗換えを検討する同僚やら,定年退職を間近に,退職金をあてにしている上司やら…etc. みんな「いつかはクラウン」の世代なんですねぇ。このキャッチコピー,あまねく知れわたっていることには驚くばかりです。それに較べて次ぎの「満ち足りてクラウン」はあんまり知られていないようで… それはともかく,今度の12代目は“Zero Crown”とか。クラウンとしては初めてV6エンジンを搭載し,アスリートを全面に押し出すという「ゼロからのスタート」ということで…40歳台,30歳台の需要を喚起しようとしているんだそうですが,実際の購買層は今のところ,あいかわらず50歳台以上が中心だとか。いくら若向きのイメージを作っても,値段が値段ですから,若年層にはそうそう手が出ませんよねぇ。

  クラウンらしくない
最初に乗ったのがアスリートの3.0。スタートボタンを押してエンジン始動。このボタン,プリウスと同じ部品みたいです(笑)。ところで新しい発見。インテリジェントキーって,スロットに差し込まなくてもよかったんですね,ポケットにいれたままでも(電池があれば)。知らなかったのは私だけ? 動き始めてすぐに感じたのがステアリングの重さ。切り始めはもちろん,切り足しても吃驚の印象は変わりません。225/45R18というとんでもないサイズのタイヤ(交換すると20〜30万円かかるんだとか…!)のせいだけでなく,スポーティーさを演出するためのパワステの設定をしているようです。このタイヤのせいか,ロードノイズがいくらか出るだけでなく,路面の細かな凸凹をこまめに拾ってしまい,「これがクラウン?」という感じがします。もちろんサスペンションの動きは文句無しに滑らかで,大きな入力に対してもドシンバタンといった下品な状態にはなりませんが,まだ洗練が十分ではないな,との感は否めません。タイヤのブランドが変わると,また違った結果が出るのかもしれませんが。ちなみに試乗車はダンロップを履いていました。

  正確なコーナリング,でも
コーナリングは“さすが”の一言。速めのステアリング操作に応じてきちんと向きを変え,アンダーも出さずにグイッと曲がっていきます。しかし,操作と動きの間に全く破綻はないものの,とてつもなく大きな質量の運動方向を,無理やり変えているという感覚が離れません。1.6tの車重は確かにかなりのものですが…ある意味,この走りに残る不自然さが,クラウンらしいと言えなくもないなァという気がします。下りのS字からタイトな道への左折という,ハンドリングテストには格好のシチュエーションを試すことができたのですが,トヨタ車らしくない(笑)安定感でした。アベンシスもこのコーナーを気持ち良く駆け下りましたが,ともにシャキッとした乗り味になっています。

  V6エンジンはすごい!
クラウン初のV6,GR3型エンジンは全く無音といっていい程ノイズは遮断されています。アイドリングでも巡航中でも全くエンジン音が聞こえません。かなりの昇り坂でも,軽くアクセルを踏むだけで80q/h+αまであっさり加速しました。さすがは50s/smのトルク荷重です。うちのBH9レガシィの62s/smとの差はあまりに明確。もちろんトルコンの設定やギア比の違いもあるのでしょうが,そんな違いなんか問題にしない圧倒的な力感です。その加速中もほとんどエンジン音が聞こえてこないというのは…先代モデルを確実に上回っていますね。聞こえるのはロードノイズと僅かな風切り音だけ。もちろん時計の音さえ聞こえません(笑)。アクセルの踏み始めは鈍い設定のようで,多めに踏込まないとクリープに毛が生えたような発進しかしません。ブレビスもこんな設定でしたね。トヨタの高級車共通の方向なんでしょうか。ちょっと踏んだだけでポンッと発進するセリカあたりとは大違いの考え方のようです。6速ATはスポーツモード付き。セレクターのみでのシフト選択ですが,この反応が無茶苦茶速い上,シフトショックが少しも感じられませんでした。ん〜すごいぞ!

  ブレーキの音
パニックブレーキを試みる気になるような車ではありませんでしたので,ちょっと強めに踏んだだけですが,減速感は心地よいと感じました。気になったのはパッドがディスクローターをこする音が聞こえてしまうこと。アベンシスのような“キー”という鳴きではなく,“しゅー”とも“ごー”とも付かない音がフロントブレーキあたりから聞こえます。ブレーキパッドが固いのか,単なる個体の問題なのか,どっちでしょ?

   CROWN 3.0 ROYAL SALOON (6AT)

一方のロイヤルサルーン,こちらの試乗車も3.0でした。動き出して道路へ出るまでの10mを走っただけで,ステアリングの軽さ,乗り心地の柔らかさといったアスリートとの違いが明瞭に分かりました。ロードノイズも少なく,やっぱりクラウンはこうでなくっちゃ,というぴったり似合った乗り味です。ただしサスペンションの設定は先代より硬めで,ロールは思ったより少なく,シャキッとした感じでした。ふわふわした空飛ぶ絨毯のような掴み所のない乗り心地,例のステアリングインフォメーションの乏しいバーチャルな感覚…は微塵もありません。クラウンも随分変わったものです。なるほど“Zero Crown”ですね。

ところで,リアシートに座って気になったのがCピラーの太さ。シートバックにゆったりともたれると,顔は太い太い柱の横に来ていまい,側方の視界は全く遮られてしまいます。囲まれ感,安心感といえばそうなんでしょうがねぇ…閉所恐怖症ならずとも,後席のVIPは不快に思わないのでしょうか。あ,本当のVIPは,そんな些細なこと気にしないし,外から横顔が見えないほうが,テロ対策に好都合だったりして。冗談はさておき,こんどのクラウンは,こうした意味でも運転者優先のようです。(TEST:2004/01/24)