TOYOTA WiLL CYPHA 1300 2WD (4AT) 2003年1月

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  不可解な恰好も好き好き?
この試乗記コーナーのメニューページに「印象に残っているものを…」と書きましたが,CYPHA,もう無茶苦茶印象的でした。まぁデザインについては,人の好みはそれぞれだから良い悪いは言い難いのですが,少なくとも私には理解できないものでした。まるでデザインスクールの課題を,嫌々やっつけ仕事で済ませたらこうなった,といわんばかりのデザインって?と思っていたのですが,カタログを見て疑問氷解。四隅にホイールをつけた四角い板状のシャシーに,卵形のボディを乗せたデザインスケッチが載っているんですね。いわば30年前の「未来の車」風。それにしても,実車にするのに何処をどうやったらこんな不可思議なデザインになるのか,やっぱり不思議不思議。もっとも,もう50に手が届こうかという以前の上司がこれを買いましたから,ほんと,人は好き好きですねぇ。

  パッケージングetc.
運転席は外観にたがわず,比較的アップライトなポジション。シートのホールド性も,大衆車としてはそう悪いものではなさそうです。こりゃあエクステリア・デザインよりましかな?と一瞬は思いました。しかし四隅の見切りの悪さはどうしたものかと。アイポイントは高いのにフロント先端の感覚は掴みにくいし,リアはウエッジが強いウエストラインのせいで見切りが悪いことこの上なし。これじゃァ,スーパーの駐車スペースに真っすぐ入れられないケースが増えるんだろうなぁ,ブツブツ…。一方,リアシートは座面の前後長があっけに取られるほど短いもの。膝裏が浮いて,落ち着きが悪いの何の…では子供用かというと,さにあらず。床から座面までは高さがあるので,子供では足の裏が床に届かない状況になります。その上,トランクスペースはほとんどないし,このパッケージングって…?

  エンジン,サスペンション…
走り出してみると,まずステアリングは軽めの印象。パーキングスピードでの操舵の感触は悪くありません。比較的路面のいい幹線道路を40〜50km/hで走っている限り,2NZエンジンにも特に不満はありません。以前,ファンカーゴに乗ったとき同様,まずまず静かだし,パワーもそこそこ出ていて,上り坂でもそれほどストレスは感じないし。柔らかめの乗り心地もあって「スーパーカー(買い物車の意)としてはまずまず」と感じていました。でも,ひとたび舗装の荒れた裏道に入れたら…マンホールを踏んだだけで,リアサスが全く動いていないんじゃないかと思うくらい,ドシンドシンと突き上げます。フロントサスはかろうじて入力をいなしているのですが,リアが全く駄目。乗り心地はもう最悪…これって何?

そのサスペンションのせいか,ちょっとしたワインディングでは怖い思いをしました。トヨタ車にありがちなバーチャルなステア・フィールのせいもあるのでしょう。コペンでは80q/hで平然と抜けたゆるいS字を60q/h弱で切りかえしたら,背筋を羽根で撫ぜられたかのような,肌が粟立つ不快感,不安感。アウト側がつっぱり,イン側が伸び上がるような妙なロールの出方。ステアリング操作への反応の遅れ。ライントレース性なんて,話題にしたくもありません。“こんなコンパクトカーで,そんな走り方をするんじゃない!”と言われるほどのスピードじゃァないんですよ。流れよりわずかに速いかな,という速度域でこれです。ほんとに,もうっ!

  車に何を求めるのか
このCYPHA,「携帯電話(ケータイと書くべきでしょうか)を買ったら車が付いてきた」,という豊田章夫取締役発案のコンセプトでできた車とか。まさか,オマケだからこんなもんでいいでしょ,というわけなのでしょうか。エクステリア,インテリア,ユーティリティー,走行性。どれをとってもマトモとは思えません。G-BOOKだって,新世代NAVIと連呼する割には,少なくとも現時点ではたいしたことなさそうです。「育てる車」だそうですが,いくら「氏より育ち」っていても,限界が…。WiLLブランドの車もこれで3台目になりますが,だんだんひどくなってゆくような気がします。ね,すっごく印象的でしょ?