BMW 120i (6AT) 2004年10月

MENU


実際の試乗車は,シドニー・ブルーという銀に近い色でした

  滑らかなエンジン
さすがBMW,国産車とは一線を隔す乗り味でした。エンジンは4気筒ながら6気筒かと勘違いするほど滑らか。゛Silky six"ならぬ゛Silky four"ですか(笑) 先代3シリーズの318tiとは随分違いますね。1,370sと軽からぬ重量に150PS/20.4smですから,馬力荷重,トルク荷重ともにたいしたことはないのですが,ストレスなく回転を上げていくフィーリングは凄いですね。アクセルの踏み具合に対する回転の上がり方の自然さが,良好な加速感を生んでいるのかもしれません。また4,000rpm以上まで引っ張っても実にバランスがいい感じで,音量は高まるものの“騒音”という感じではありません。本当に気持ち良く車速が上がりました。6速ATはほとんどショックレス。マニュアルモードも試しましたが,こちらでもショックは感じられませんでした。そうそう,マニュアル・セレクトはもちろん欧州流のポジションで,押すと−,引くと+です。停止すると自動的に2速に落ちました。つまり2速発進。したがって6速とはいっても,普段は実質的に5速で走っているんですね。ひさしぶりにBMW(というかドイツ車)に乗って,ヘッドライトのスイッチの場所やらにとまどっていました(^-^;

  良好なハンドリング
パワーステアリングはかなり重めの設定です。しかし変な抵抗感ではなく,良くいえばどっしりとした安定感。発進時のような極低速では重さが気になるものの,タウンスピードでは全くといっていいほど苦にはなりませんでした。慣れれば低速でもどうということもないのかもしれません。パワステがついていなかった時代,例えばAE86レビンのGTVのことを思えば随分軽いのかも…。ほとんど前車軸の後まで下げられたフロントミッドシップ4気筒エンジンの効果か,ステアリングに対して極めて素直にスゥッと鼻の向きを変えます。ロールをしないわけではありませんが,転舵とロールのタイミングがいいのか,それが全く感じられません。本当にフラットな姿勢のままか,と錯覚しそうでした。まぁ,全幅1,750o,トレッドがF1,485o,R1,495もあるところへ,205/55R16というぶっといタイヤを履かせれば,これくらいの運動性は出てくれないと,とは友人のコメントです。

  乗り心地もまずまず
「ランフラットタイヤなので,乗り心地は硬いですよ」とセールス氏は言っていましたが,同様にランフラットタイヤを履いたミニ・クーパーSのようなブルブル感はなく,特に気にはなる振動等はありませんでした。もちろん,タイヤの問題以前に足回りのセッティングが硬いのですが,芯のしっかりした足との印象が強く,スポーティーな割には角がとれた良好な乗り心地です。リアシート・インプレッションを試みた友人によると,右席の振動が一番ひどく,腰の後ろから突き上げるように感じられたとのこと。左や中央はそれほどでもなかったそうです。おおむね良好だけに,些細なことが気になるという程度のことらしいですが。

  パッケージングと品質感は
ということで,走りに関してはほぼ手放しの賞賛になったのですが,パッケージングや仕上げに関しては疑問符がつきます。まず後席に乗り込むのは結構大変。ドアの切り欠きが不足しているためか足を入れるのが一苦労ですし,シートバックがホイールハウスの膨らみを覆う造形のため,腰を納めるのもヨッコイショ。年寄りを座らせるのは,まず無理ですね。おまけにこの膨らみのためか,1,750oも幅がある車なのに3人掛けはちょっと…ということになってしまっています。前席は最近の欧州車の流れに忠実なのか,座面の前後長は充分なのに幅が極端に狭いというもの。164p48sの私が座ってぴったり。170p85sの友人が座ると太ももが座面からはみ出しそう…。タイトでホールドが良好といえば聞こえはいいのですが,これまで小さいとちょっとねぇ。スポーツ走行にはよくても,日常使いや長距離は辛いのかも…と思いました。

前席シートレールは左右の幅が狭いため,長時間つま先を入れておくのはちょっと辛そう。また,レールはカバーのない切りっぱなしの鉄材のため,靴を傷つけそうです。その他にも展示車両のステアリング・ホイールは,スポーク部分の表皮が浮き上がって左右非対称になっているとか,高級車らしくない品質が目に付きました。BMWとしてはロゥエスト・レンジに当たるとはいえ,税抜き価格349万円の車としてはちょっと悲しい出来でした。(Test:2004/10/03)