陣屋町 (瀬戸市下陣屋町/安戸町) 瀬戸MENU

舟形高44cm 三面八臂 坐像 持物(輪宝・宝剣)

 
【左】三面八臂の馬頭観音坐像      【右】塀を切ってまで,馬頭観音を保存

   追分近くの飯田街道
瀬戸市役所北の「追分」交差点から東北東に向かう道が旧「信州飯田街道」です。名鉄瀬戸線の線路を渡り,桜川(陣屋川)にかかる陶原橋を渡ってさらに進むと,右側の大きな家の塀が一部分切れてているのが目に入ります。追分から700m足らずの距離です。中を覗くとコンクリートブロックにスレート波板を載せた簡単な祠の中に,馬頭観音が座っていました。

舟形高が44cm,三面八臂の坐像です。右手には鉞斧(えっぷ)と三鈷(さんこ)を,左手には蓮の花と宝刀を持っています。顔は正面両側ともやや憤怒形風ですが,そんなに怖い表情ではありません。特に正面の顔は,口を「へ」の字に曲げていなければ菩薩面と見まがうほどです。両側の顔の彫りが浅く,また真横を向いているため,初めは一面かと思ってしまいました。

   個人の建立
光背には「明治廿八年八月吉日 加藤作衛門」と刻まれています。馬稼ぎに携わった人が個人的に建立したもののようです。そういえば,このお宅には「加藤」の表札がかかっていました。作衛門氏の子孫が住んでいらっしゃるのでしょうか。そうであるなら,わざわざ塀を切ってまで保存したことも頷けます。

ところで桜川を渡った東十三塚町あたりで,立ち話をしていた二人の年配の女性(70歳くらいかナ?)に馬頭観音の所在を尋ねたのですが,「聞いたことないなぁ。年寄りの人に聞かんと分からんでない?」との答えが返ってきました。ん〜,十分お年を召していらっしゃると思って声をかけたのですが…(^o^; あまり知名度は高くないようです。もっとも撮影の後,通りすがりの老婦人が立ち止まって手を合わせていらっしゃいました。知る人ぞ知る存在なのでしょう。


こんなに大切にされています