大草山三光院(長久手町大字熊張字杁ノ洞) ▲長久手MENU
@舟形高53cm一面ニ臂 立像
A舟形高50cm一面八臂 坐像 持物(独鈷杵・開蓮・輪宝・水瓶・数珠)
@一面ニ臂立像 @の四角いお顔 A一面八臂坐像観音様がいっぱい
2年2ヶ月ぶりに長久手町の馬頭観音の登場です。大草の交差点から集落の中の道を600mほど東へ進むと,この道から左へ半円弧状に別れる道があります。もともと曲がった道があって,近道として今のまっすぐな道が作られたのでしょう。この円弧の真中から北へ少し入ったところにあるのが,大草山三光院です。本尊は本堂に祭られた木造十一面観世音菩薩像で,城東三十三観音の三十三番札所だそうです。境内に入ると左手に観音堂があり,屋根の下には3段に組まれた段の上に,40体の石仏が並んでいます。聖観音,十一面観音,如意輪観音,不空羂索観音etc。立像,坐像,岩座に半跏踏下に腰を下ろしたもの,また文殊菩薩かと思われる獅子に乗った石仏や,役の行者(えんのぎょうじゃ)の像まであります。番号が刻まれた石仏は,観音巡りとして各所に置かれていたのでしょうか。右下から左上へ,番号順に並んでいます。@四角い顔の馬頭観音
40体のうち,馬頭観音は2体ありました。1体は中段の向かって左端,一面ニ臂の立像です。故渥美清さんにも似た(笑),えらの張った四角い顔が特徴的ですが,やや磨耗しているせいもあり表情はぼやけぎみです。腕が細い棒状にあらわされ,天衣はひるがえらずに下に広がっています。冠はかぶらず,馬頭は頭の真上に水平に乗っていますが,耳が大きくまるでロバのようです。周囲の他の石仏に較べ,作風の異なる造形です。稚拙なでき具合といってもいいでしょう。番号つきの観音像とは別に独自に作られ,路傍などに安置されていたものが,ここへ引き取られてきたのもと考えられます。A憤怒面の一面馬頭観音
もう1体は上段の左から6番目。中央に座る役の行者の左隣です。舟形光背に「廿九番」の番号が刻まれていることから分かるように,他の石仏と同時に作られたのでしょう。丸みのある写実的な造形の,一面八臂の坐像です。他の幾つかの像と同じく,衣が赤く着色されているのが目立ち,一面の馬頭観音としては厳しめの,憤怒に近い表情をしています。舟形光背が相対的に大きく,仏像がちんまり座っているように見えます。まるでロケットのノーズコーンのように尖った宝冠には,馬頭が立体的に刻まれていますが,これも上記の馬頭観音同様,耳が大きく表されてます。身体の前の手は立体的で,明らかに馬頭印を結んでいるのが分かりますが,残りの六臂は光背に線彫りで刻まれています。彫りが浅く,そのうえ磨り減っているのですが,持物はかろうじて見分けることができました。
. 観音堂に並ぶ石仏群 変った冠,不空羂索観音?この石仏は…?
さて,下段の真中あたりに変わった石仏がありました。「九番」と刻まれた三面六臂の坐像で,中央の顔は憤怒面,両側は菩薩面と,一見馬頭観音かと思える姿なのですが,蚕の繭のようにまるまるとした被り物には馬頭がありません。錫丈を2本かざし,向かって右下の手には数珠か綱と見えるものを持っていますから,不空羂索観音の可能性が高いのですが…。