前熊弘法堂(長久手町大字前熊字溝下) ▲長久手MENU
舟形高49cm 一面ニ臂 立像
【左】お顔が燻された馬頭観音 【右】弘法堂全景(右前は道標)
正月は公開中?
長久手町が鳴り物入りで宣伝に努める第3セクターの天然温泉施設「ござらっせ」。そのすぐ南に小さな弘法堂があります。この弘法堂,長久手町誌にも掲載されていますが,普段は施錠されています。取材に訪れた正月には東側の入り口が開けられ,線香の香りが微かに漂っていました。正面には下の写真のように祭壇があり,中央には彩色された弘法大師の坐像が鎮座しています。その右側,花瓶に生けられた南天の小枝に隠れるようにして,一体の馬頭観音が立ってました。あまりハンサムでは…
舟形に対してやや小ぶりに彫られた一面ニ臂の立像です。身体に比べて頭部(というか顔)がやや大きく,面長な印象です。眉は軽くつり上がっていますが,閉じた目は穏やかです。切れ長の目,大きめの鼻に小ぶりな口をしていますが,あまり美形とはいえないようですね(笑)。四角張った形の馬頭は,頭の上に水平に載っています。耳はこうした馬頭によく見られる大きな驢馬の耳に近いもので,舟形に直に彫り込まれています。典型的ななで肩で,合掌した手や衣などの彫りは浅く,簡素な表現です。全体に稚拙な雰囲気がありますが,肘の曲がり方の表し方はとても自然です。衣の裳裾が,まるで十二単のように舟形いっぱいに広がっており,まったく翻っていないのは変わっているといえるでしょう。裾からは,足先がちょこんと可愛らしく出ています。舟形の下部には,蓮華座を表すように彫刻がされています。お顔が燻されて
お正月らしく,鏡餅や蜜柑がたくさん備えられている中に,蝋燭の燭台と線香の器が隠れていました。取材時にはともに火が消えていましたが,馬頭観音のお顔をはじめとする上半身が燻されたようになっているのはこの蝋燭のせいでしょうか。屋内に置かれた馬頭観音の石仏はそう多くはないのですが,それにしても,ちょっと珍しいケースです。形式や造りから考えると,幕末から明治の初期あたりの作かと思われます。きっと,三河へと続く街道沿いにあったものなのでしょう。
【祭壇全景】中央が弘法大師坐像 右の○内が馬頭観音※半年振りに馬頭観音の記事ですねぇ。長久手町の話題としては1年3ヶ月振りになりますか。旧道沿いの路傍にある馬頭観音の例にもれず,ここも駐車スペースがありません。取材直前にも大きなアメ車(マーキュリーかなぁ)が対向してきてすれ違えず,大変でした。徒歩,あるいは2輪での訪問をお薦めします。(2004/01/03取材)