第6回  模様と季節


カット2  着物の模様と季節の関係のお話です。昔の人は、1年365日着物だったわけだから、色と模様で変化をつけるしかないわけです。で、たった1日しか着られない模様、例えば鮎釣りの解禁日のための“網にかかる鮎”とか、見に行く芝居の出し物に合わせたものとか、作らせたようです。でも着物を着る機会の少ない私達は、あまり季節を限定したものだと、なおさら着るチャンスが減ってしまいます。

 とはいえ、やはり季節感は大切にしたいところ。花の模様は一番わかりすい例です。その花が咲く少し前から、散るまで。咲き終わってから着るのは、野暮というもの。でも最近は、温室ものや洋花など、季節のはっきりしない花もあって難しいですが。日本列島は南北に長くて、咲く時期にずれがありますし。因みに、文様化されていたり、違う季節の花や紅葉と一緒に描かれていたら、いつでも着られます。

カット1不思議なのは、夏に着る浴衣に桜やチューリップの模様があること。秋の花を先取りして着るのは良いけれど、前の季節の花を着るのはなんだかちょっと。私は好きではありません。菊の模様を春に着るのも。

 これからくる季節に思いを馳せて、少しだけ先取りするのが美しいのではないでしょうか。
 
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