雨の日置川ツーリング
3.酔って沈、沈、沈
こんな雨の中でも変わらないのが、燃料アルコールのカヌー内持ち込み。各自、缶ビール1本とお酒1号瓶の携行に加え、「しぼりたて」とかかれた五合入り酒パック1本を用意した。
いつもながらピッチが速く、たちまち各自携行した分を消化してしまい、「しぼりたて」の配給が始まった。互いのパドルを握りあい、空になった一合瓶に酒を移す作業はなかなか愉快だ。 こんなことが愉快とは、それだけ酔いが回っていたのだろうか。
「少し飲み過ぎたかな」と思った時、前方に漂う、沈してカヌーを手に泳ぐ桂に気づく。何でもない静水での沈だ。岸に上がり何があったのか聞いてみるが、「わからへん、何で沈したんやろ」と繰り返す。
桂は濡れたTシャツを脱ぎセーターに着替える。沈を予感していたかのように、ドライサックからセーターを取り出した。セーター以外は全部ずぶぬれ。今の3人の唯一の所持金、千円札2枚も例外ではない。
一息ついて再スタート。2人は勢いよく出発したが、今度は僕がダメだ。少々息が苦しい。「しぼりたて」がきいてきたようだ。朦朧としながらしばらく流れに身を任す。気がつくと遙か前方に、岸に立つ海野と、そのそばに接岸した桂の姿が見えた。ずいぶん遅れたとは思ったが、「まいっか」で、そのまま目を閉じる。
昨夜は夜行バスでの移動だったので睡眠も十分ではない。スーッと意識が遠のく。頭が右に振れハッとして気づく。このままでは危険だと思いつつも、どうにもならない。今度は左に大きく振れカヌーが揺れた。進まなきゃ!
海野は更に下流へと向けて漕ぎ出している。桂は先ほどと同じ格好だ。どうやら居眠りをしているようだ。
桂の横を静かに漕ぎ抜け、待っていた海野とやっと合流。その時、桂は目を覚まし、周りに誰もいないのであわてている。下流の我々を見つけ、猛スピードで近づいてきた。「やーびっくりした!気がついたら誰もおらへんし、どっちが上流でどっちが下流かも分からへんかった」恐るべき「しぼりたて」効果だ。
3人合流してすぐに追ヶ芝の橋にさしかかる。ここは一昨年桂と海野がゴールとした場所だ。一昨年は底に潜むタニシも見透かせたと言うが、今日は叶わなかった。
次の瞬間、激しい水音が響く。今後は海野の沈だ。ここも全くの静水。海野に説明を求めと、「岩場に咲いた花を摘もうと思い、バックで漕ぎ寄せ飛び移ったんだけど…。」海野はこの後もう一度静水で沈した。