雨の日置川ツーリング
4.オートキャンプ場で
安宅橋で上陸。川岸にカヌーを乗せ、道路まで歩く。頭がふらふらする。だいぶ酔っている。桂も相当なものだ。
時刻は4時半。うまい具合にバスが来た。バスは無人だったが、ずぶぬれの我々は通路に立った。バスは日置駅で、しばらく停車。この時、濡れた千円札を運転手に見せ、「我々の所持金はこれだけだ」と説明したところ、運転手はいやな顔ひとつせず、駅で乾いた千円札と交換してきてくれた。この運転手、先ほどカヌーで下る我々の姿を目撃していたそうだ。運転手さん、本当にありがとうございました。
この日は、日置川オートキャンプ場でキャンプをすることに。シーズンオフの週末で、他に人影はない。
えびね温泉に行くが、時既に遅し。午後6時の終了時間に間に合わず入浴は叶わなかった。
キャンプ場に戻り夕食の支度に移るが、桂は車の中で寝込んでしまい、全く姿を見せない。ラジオをつけると、「和歌山県地方に大雨洪水警報が出ている」という。キャンプ場は川から数メートル高い場所にありまず問題ないだろうが、置いてきたカヌーが気にかかる。今更取りに行くこともできず、運を天にまかせることに。
夜8時、目を覚ました桂が車から出てきた。入れ替わるように、これまで何とか我慢してきていた僕がテントに潜り込む。テントには激しさを増す風雨にさらされたが、幸い浸水はない。テントの下が柔らかな芝生だったこともあり、瞬時に僕は眠りに落ちた。
午前1時、僕は不意に目を覚ます。雨はやんだ。風も収まっている。テントから出てみるが、桂も海も車の中で寝ている。ラジオは、「天気は快方に向かっている」という。しばらくぼんやりと過ごし、午前3時、再びテントに潜り込んだ。
朝7時、起床。雨は降っていないが雲は相変わらず分厚い。昨夜の大雨で、和歌山市はあちこちで浸水し、交通に支障が出たそうだ。
川の様子を見に行く。水位が増し、茶色く濁った流れは勢いがある。昨日河原に残してきたカヌーは、きっと流失しているだろう。3人ともあきらめきって、さばさばしたものだ、
一応、桂と海野がカヌー探しに向かう。二人が戻ってきてびっくり。驚いたことに、3艇とも無事だという。一番川に近かった桂艇は、その半分を川に浮かべていたそうだ。
5.鯉たわむれるゴール
荷物を片づけ、今日のゴールとなる、国道42号線日置川大橋の手前約1キロ地点に車で移動。車を置いて、歩いて、カヌーのある安宅橋まで歩いて遡る。
出廷した時刻は、既に正午前。ゴールまで距離もあまりないので、のんびり進む。陽がさしてきて、とても気持ちよい。
左から流れ込む支流との合流地点で、静かな水面に時々しぶきがあがる。そっと漕ぎ寄せてみると、一匹の鯉の後を、数匹の鯉が争うように追いかけている。鯉の背びれが時々水面から顔をのぞかせる。雄が雌を追いかけているのだろう。鯉たちは恋の争いに夢中になっていて、僕の存在に気がつかない。みるみるパドルが届くところまで接近した。赤みを帯びた背びれが印象的だ。さすがに気がつき、いっせいに生い茂る葦の中へ姿を隠してしまった。桂と海野が駆けつけてきたが、もうその姿を目にすることは出来なかった。
間もなく無事にゴール。えびね温泉で汗を流したのち、車は一路田辺を目指した。