千曲川 2007.9.29

千曲川は、甲斐・武蔵・信濃の境、甲府盆地を隔てた富士山のちょうど真北にそびえる、標高2475メートルの甲武信岳に源を発し、佐久、小諸、上田、長野と信濃路を流れ下り、新潟県ではその名を信濃川と変え、新潟にて日本海に注ぐ、総延長367km、日本最長の大河です。

今回は、この千曲川の中流域、小諸辺りから上田までを下ろうという日帰りツーリング。参加者はくぼっち、井上くん、私の3名。まだ夜が開けぬ東京を出発。激しい雨が降りしきる関越道・上信越道をひたすら駆け進み、千曲川を目指しました。この日の長野地方の予報は曇りとはいえ、激しい雨の中にあっては、正直言ってあきらめモード。雨が降っていたらカヌーは中止し、上田の史跡を散策しよう。「風林火山」ツアーでも良いではないかと話したりもしましたが、ありがたい事に、碓氷峠を越えると雨はあがりました。

憧れの千曲川ツーリング。いよいよスタートです。

 

滋野駅〜これじゃぁカヌーは出来ん
午前7時40分、滋野駅に到着。当初は、駅の裏道から千曲川に降りスタートしようと考えていましたが、無理でした。水はほとんど流れておらず、丸い石がごろごろと転がっています。駅の下、赤い滋野トラス橋を渡るだけで、車を降りることもせず通り過ぎてしまいました。

やむなく予定を変更。今度は、駅から川までが近いということで、2駅下の大屋駅を目指します。途中、道100選にも選ばれている、北国街道の宿場、海野宿(うんのじゅく)に立ち寄りました。朝早い時間でく人影のない町並。しっとりとして素敵なのですが、先を急がなくてはなりません。またしても車を降りることもなく駆け抜けてしまいました。

滋野駅

海野宿入り口 白鳥神社

海野宿

 

大屋橋 スタート地点
程なく大屋駅に到着。駅のすぐ下から対岸に向けて架けられた大屋橋。駅から近いし、河原まで簡単に車で降りることが出来る。水量も十分。ここは、まさにうってつけのスタート地点だ。

そーれ、急いで準備に取り掛かるのだーぁ

 

 

いよいよスタート
9時30分。全ての準備が完了し、いよいよ出発。我がHIVIX艇に井上くんと私、スターンズ艇にくぼっち。2艇に分かれて、いざスタート! いつもながら、胸ときめく一瞬です。

「右、左、右、左」 井上くんと声を掛け合い、パドリングの練習。息が合ってきたと感じる間もなく、最初の瀬が現れます。

大石橋の手前、「少し波が高そうだけど大丈夫だろう」と、そのまま突入しましたが、いやぁ驚きました。予想以上に厳しく長い瀬でした。ざぶん、ざぶんと何度も大波をかぶったあと、カヌーが右側に大きく傾いたのです。「まずい!」って、大いに慌てましたが、何とか態勢を立て直して、沈することなく無事にクリア。前方のコックピットに座る井上くんは、もうびしゃびしゃ。瀬に突入する恐怖もひとしおの事だったでしょう。


前方に見える橋(大石橋)の手前に最初の瀬があります

 

いきなりの瀬でたっぷり水をもらい重くなった
カヌー。そのまま運ぶのは大変な重労働。
早めに水を抜かなければなりません。

そのため、上陸して休憩するときには、カヌーを
傾け水抜きをします。

背の高い井上くんがエイと持ち上げると、
十分な角度が確保され、先端のバルブから、
水が勢いよく飛び出す。
それにしても、よくぞこんなに溜まったものだ。

 

 

 

 

落ち込み
険しい表情で漕ぎ付けてきたくぼっち。何があったかというと、落差1メートル以上あろうかという落ち込みを、無事に通過してきた直後なのです。場所は、大きな中州により、流れが左右2筋に分かれた右側。ちょうど北から流れてくる神川と合流するところ。

「いやぁ、突然落ち込むから驚いたよ」と、くぼっち。ちなみに私たちは左へ進み、程なく上陸。休憩していたところでした。

 


野田知佑サイン入りTシャツなのだ

 

堰越え
大きな中州での休憩を終え再スタートにあたり、この先の様子を窺います。するとどうでしょう。少し先で水面が一直線に切れ、はっきりとホライズンラインが見えています。

「どうみてもいけんやろぅ。先が全く見えんよ」と井上くん。すぐに意見はまとまり、出来るだけ早くカヌーを右岸に寄せ、ポテージする事となりました。

堰かなり手前に葦生い茂る右岸に上陸、周辺を散策して回ります。落差の大きな堰(上田農水頭首工)を目の当たりにし、正しい判断であったと納得。堰の下も危険な状態は続いており、頭上にかかる斜張橋、新幹線の駆け抜ける上田ハープ橋の更に下流まで、ポテージせざるを得ません。

よーし、頑張って運ぼうぜ

 

休憩地点からの上田ハープ橋
ホライズンラインが見えます

 

長いポテージ
ハープ橋の下流で再スタート。でも、すぐに次のホライズンラインが見えてきました。今度は堰ではなく、一筋の岩の帯。河川局のホームページに掲載されている航空写真でも、この岩の帯がはっきり確認できます(注)。この岩の帯、水平ではなく北側に傾いているようで、水が流れているのは右側のみ。中央から左にかけては岩が完全に露出しています。

(注)流れの方向を示す矢印の下に引かれた白い線です。

その中央部付近に上陸。断崖の下に降りて、その高さを確認。目の高さまであるので1.5メートルぐらいでしょうか。3人で手分けして、えっさ、えっさとカヌーを運び降ろしました。

この高い岩の上からだと下流までよく見渡せて、十分な下見ができます。で、下見の結果はというと、もう200メートルほど下にも同じような落ち込みがあり、更には、その先も水深が浅くあちこちに岩が露出しているというもの。

「無理せずに慎重に行こう」 意見は一致。すぐに右岸に漕ぎ寄せ、またしてもポテージ。こうして今日最長距離のポテージが開始されました。もう全身くたくた。思わず天を仰ぐ。

長い長いポテージを終えてえ、カヌーに身を委ねた瞬間は、「やっぱりカヌーは漕いで進むもので、担いで運ぶもんじゃない」 などと、あたり前のことをしみじみと実感したのです。ほんとに辛いポテージでした。

 

激沈
小牧橋をくぐると、左岸に迫っていた山が大きく後退し視界が開け、常田新橋が見えてきました。新しく架けられた橋のようで、持参した5万分の1(平成10年発行、最新版のはずです)には記載されていません。上田駅までもさほど離れていないところです。

瀬音が響き、この橋の手前に瀬があることを知らせます。山の後退から、瀬も少しはゆるくなっているんではないかと期待し、一気に漕ぎ下ることに。

流れの右寄りを進んでいたので、中央へカヌーを寄せるべく、斜め方向へ漕ぎ出しました。そして、間もなく流れの中央部。流速も速くなってきたので、瀬に迫るべくカヌーの向きをまっすぐに変えようという時、瀬の全容が目に入ってきました。思っていた以上に厳しいようだ。ここでの無理は禁物と思うや、

「突入中止。このまま斜めに流れを突っ切り、瀬の直前の河原に漕ぎ付けよう」 と叫ぶ。

「了解」と、井上くんの声。速い流れの中の予定変更。ここは落ち着いて漕ぎきらねばなりません。パドルを持つ手に一層の力を込める。「右、左!」 二人の呼吸がピッタリとあい、みるみるスピードアップ。水面を滑るがごとくカヌーは進み、見事に左岸に漕ぎ付けることができました。

「あーよかった」とカヌーから出て、「しばし休憩。コーヒーでも入れて暖まろう」などと、井上くんと話をしながら、くぼっちを振り返りました。当然、我々と同じように上陸してくるだろう思っていましたが、やる気満々のくぼっち。果敢にもそのまま瀬に突入し、みごとに激沈を遂げたのでした。

「いけると思ったんだけどね。やあ、まいった。でも、沈した後の動作が完璧だった!」 さすがはくぼっち!! 堂々としたものだ。

左前方、かすかに見える常田新橋

 

常田新橋をくぐり右岸に上陸。ここが本日のゴールです。

 

上陸地点から徒歩10分で上田駅。電車で2駅、もとの大屋駅へ。この間の営業距離は5.3kmでした。

 

千曲川ツーリングを検討されている皆さん、もう少し下流から始めた方がいいかもね。


航空写真が参考になります

 


千曲川2008


千曲川 菜の花まつり

ホーム