さて、術後2日目です。
さすがに手術の後で体力を使ったようで、目をつぶると眠ってしまいます。飯もまだ食えないし。3日目には食べられそうです。とにかく動けない事が辛いんです。チューブが邪魔だし、抜けたらどうしようと思うと寝返りもうてません。身体が痛くて気分は最悪です。でも、傷は不思議なほど痛みません。元々痛みには強くて、歯医者に行って親知らずを4本抜いた時も全く痛まず、抜いて1時間後には飯を食ってました。傷が化膿した事もありません。看護婦が来るたびに「痛みませんか」と言うのですが、痛く無いんです。相変わらず、枕の固さの方が駄目。
3日目には歩き回っていました。食事は制限無しなので普通の食事です。不味いのかと思うと、これが結構美味い。機内食の様に大きなレンジで温めるらしく、冷えて侘しいと言う事もないし量も充分でした。昼には尿道のチューブを取って貰い(これは痛い。入れる時はもっと痛いらしいが、眠っていたので)、行動の自由を取戻した時は嬉しかったですねえ。治療は点滴だけです。抗生剤と栄養剤らしいのですが、冷えた薬液が入って来ると寒くなるのが難点。夜になってリード倶楽部会員で、ファゴット仲間でもあるAさんが花を持って見舞いに来てくれました。なるほど、嬉しいものなんですねえ。今までも友人や知人が入院した時は見舞いに行っていましたが、これからは体験後なので気持ちも分かります。
4日目になると、やる事の無い辛さが出て来ます。3日目からiBookでメールの遣り取りは、し始めました。毎日メールをくれる人がいる事が本当に嬉しかったですね。改めて感謝です。食事だけが楽しみになって来ました。味に飽きて来たのでごま塩や振掛け、お菓子を買って来てもらいました。当たり前にして来た事が、恵まれた事だと実感。PCで文章を書いたり、DVDを見たり始めてみたのですが、顔面神経にダメージがやはりありました。長い時間目を開けていられないんです。瞬きが上手に出来ないのです。鏡で見ると(紙とガーゼで包まれて酷いものだ)確かに左目がつぶれていません。片目を閉じると言う簡単な作業が、こんなにも難しいとは! 死者は通常目を開くそうですが、これは閉じる事の方が特別だということなんですね。その上、頭が痒くて痒くて死にそうです。
耳鼻科に行っての診察が始まりました。傷に差し込んであるドレーンチューブも余り浸出液が出なくなっています。順調です。「手術の後が引っ込んでますね」との言葉に「鏡で見たいんですが」と言うと「もう少し癒ってからにしましょう」との返事。げっ、どんな顔になっているんだろう。子供の頃、近所に怪我か病気か分からないけれど顔の4分の1くらい肉が削げたおじさんがいたのを、思い出してしまいました。そんなになっているのだろうか・・・・・。
5日目に再び耳鼻科へ。診察後ドレーンチューブと抜糸を明後日する事に。嬉しいの何のって頭が洗えるのが嬉しい。出た事の無いフケが出るんですよ。痛さは無かったけれど、痒いのは酷い!治療する事は何も無いので、明日は飯を食うだけで1日過ごすらしいよ。この日に長かった点滴が外れました。実は昨日「今日で終わりです」と外されたのだけれど、これがフライング。朝にその看護婦さんが「済みません、実は...」で、また留置針刺されました。男の看護士に。これが下手。最初に刺された場所(何度もやられて)痣になりました。でも夜には自由の身になれました。それに、この看護士が可笑しい。「森川さんはお子さんいらっしゃらないんですか」といきなり訊くので「ネコしかいないよ」と答えると「ご予定は?」だって。爆死しそうになりました。確かにカミさんは若く見えますがね。私もそこそこに。でも、そう訊かれる年齢じゃないと思うけどねえ。この日は煙草も吸ってしまったし、売店にも自分で行きました。まあ、元気な事。
午後から、涙目になりながら見ていなかったDVDで「ボエーム」を見ました。これがアメリカ版で字幕が英語。英語の勉強も兼ねて見始めたのだけれど、カレーラス(ロドルフォ)とストラータス(ミミ)で泣きました。途中で薬剤師が薬の説明に来た時は3幕でボロボロ。「涙目なんですよ〜」と言いながら誤魔化して、一人になってまたボロボロ。英語でも泣けるボエームは偉い!人の心は、移ろい易く、哀しく、しかしこの上無く美しく、確かでもある、そんな事をいつも感じるのです。何があっても人生は愛おしく、生きる事は素敵だと思わせてくれます。それに音楽凄いし。涙、枯れるけどね。
6日目は全く暇。HP用に旅行記を書いて、疲れると将棋をしました。もちろんPCとね。棒銀で行くと結構勝てますね。振り飛車は難しい。将棋は大学オケに好きな奴がいて覚えました。どうしても勝てなかったのですが、ある日そいつの弱点を知る男に4間飛車を教えて貰い、勝った事を思い出しました。夜になって「キャメロット」を見始めました。3時間の大作。ボーナストラックも含めると4時間。リチャード・ハリスのアーサー王、バネッサ・レッドグレーブのグエナヴィア、フランコ・ネロのランスロットの壮大な心の物語。素晴らしかった。前半最後のアーサー王のモノローグを涙無しに見る事は不可能だったなあ。長い間見なかった事を後悔しました。もう、2日間泣きっぱなし。入院はしない方が良いとは思うけれど、iBookのお蔭で良い時間も持てました。毎日、メールでも貰えて慰められたし、PCが無かったらどうなっていた事か。
さて、明日は抜糸してチューブも抜けるし楽しみに寝ました。