(註)Web上でウムラウト表示が出来ないので、ae,oe,ueと綴ってあります。ドイツでも、空港などはそう綴っていますし、修辞法が変りエセットも使われなくなっています。

ドイツからの音楽情報、今昔

ドイツの音楽事情(特にテアター)に付いては、音楽の友、パイパーズなどの雑誌でも詳しく取り上げられる様になりました。私が学生だった時(1970年代)には考えられない事です。

昔はベルリンフィルとウィーンフィルくらいしか登場しなかったものです。実際、来日するドイツ、オーストリアのオーケストラなどもこの2つ以外は、ほとんどありませんでした。ドレスデンのオーケストラが来た時など衝撃的な事でした。レコードでも、コンサートホール・ソサエティーと言う通信販売のカタログには、ドイツの放送のオーケストラ(フランクフルトの放送オケが上手いんでびっくりした。その程度の認識だったのです)なども登場していましたが、一般のレコード店にはありませんでした。

今は情報は充分?

ドイツの劇場で活躍する日本人は多かったのですが、正確で詳しい情報は得られませんでした。今はドイツの劇場の情報も良くなりましたが、有名な町以外の活動はまだ少ないと思います。最近注目されているヴィースバーデンWiesbaden(ヘッセン州の州都、ヘッケルがある)州立劇場のシェフ、上岡敏之氏(2003年にヴッパータールに移る模様)を音楽ジャーナリズム(パイパーズ誌上)で最初に取り上げたのは、多分私です。テナーの前多さんのインタヴューを通じてでしたが。

とある日、ブレーメンに行く人に「テアターでオペラを見ると良いですよ」と言ったら「あんな町にあるんですか?」と言われてびっくり。その人はアマチュアのファゴット吹きで合唱もされている方でした。まだ、基本的な情報が足りないんだなあ、と思い知らされた瞬間でした。ドイツ(欧米なんて事も)と一括りに考える日本人の悪い癖があります。日本人だって日本にいても、住んでいる所以外の情報は大して持っていませんよね。それでも首都集中型の我が国では、文化の90%は東京にあると言われています。それに比べて、行政が州単位のドイツはえらく違うものです。ついでながら、ブレーメンは市と州が同じです。こうした市=州と言うのはベルリンとハンブルクも同じです。ブレーマーハーフェンは飛地になります。ブレーメンの州立劇場にはAクラスのオーケストラ(99人編成)があり、規模としては大きい方になります。

ソーセージだって直火焼きだったり、鉄板焼きだったり地域で変わるんですから(余り劇場と関係は無いんですが、根が食いしん坊なのでつい)。まあそんなこんなで、私もそれほど詳しいとは言えませんが、友人を通じて知った情報を、HPで出来るだけ紹介しているのです。しかしながら、個別の情報とは別に基礎的な所を押さえないと、(分かっている前提で進めては)理解し難いとも思うのでこのページを設けました。と言う訳で、それでは始めます。

ドイツの二種類の劇場

基本的に州立(Staats)と市立(Staedtisch)の経営形態があります。州立の場合前身は宮廷の劇場です。マンハイムやミュンヘンなど、モーツァルトが訪ねた所はこれがほとんど。後に王侯貴族がなくなると政府、自治体が後を継ぎLandestheater(訳としては州立で良いのだと思います)、そしてStaatstheaterと名称が変わります。いまでも、ランデステアターを名乗っている所もあります。オーストリアの場合はドイツの様な連邦では無いので、ウィーンのStaatsoperは「国立」、ザルツブルクのLandestheaterは「州立」と訳されるのが良いと思います。

市立は市民階級の勃興と共に設立された劇場で、歴史的には少し新しいと言えます。しかし、市立は小さく、州立は大きいと考えてはいけません。フランクフルト、ケルンやニュルンベルク(2003年、州立に)の劇場は大きいものですが市立、コブルク(追記;整理されてオーケストラが消滅しました。ただし歌手はいて、マイニンゲンのオケとオペラもやり、芝居とバレエは続いています)、デットモルトは小さいですが「州立(名称はLandestheater)」です。州立(Staats)と市立(Staedtisch)双方ともオーケストラがあり(別組織化は進んでいます)、オーケストラは公務員としての身分が保障されています。定年などはばらついていましたが、現在は連邦で統一されて(連邦の拠出金が不況で増えている為)65歳です。

上記の情報は、ウルムの杉本さんから伺った事に拠っています。2003年にニュルンベルクの市立劇場が「州立」に変ります。想像ですが、経済的な情況からそうする面が大きいのでは無いでしょうか。ですから、必ずしも先述の事が当てはまらない事もあると思われます。

テアターに何があり、何をするか?

以上はその出自からの区分です。ここで私はテアターTheaterと書いてオペラOperとしていません。それは、劇場で上演されるものはオペラに限らないからです(大きい所だとオペラが独立している事もあるが、建物を意味しないのが普通です)。産経の世界文化賞を振り付けのピナ・バウシュPina Bausch が受けた事でヴッパータールWuppertalのTanztheater(舞踊団とでも訳すのでしょうか)が注目されていますが、合唱とバレエ、そして劇団も付き物なのです。オーケストラ以外は、Buehneビューネ("舞台"の意)と呼ばれ、大体別な組織になります。そのスタッフの多さはびっくりします。詳しくはウルムUlmの項で取り上げます。その為、二つの劇場を合併してビューネを共通にする事で、経費の削減をはかったりしています。ライン・ドイツオペラDeutscheoper am Rheinは、デュッセルドルフとデュイスブルクのビューネが共通です。前出のゲルゼンキルヒェンとヴッパータールも同様になりました。現在(1996)はゲルゼンキルヒェンGelsnkirchenと共同のシラー劇場Schiller Theater(下の追記参照)です。1995年ゲルゼンキルヒェンとレクリングハウゼンのオケも合併しています。

劇場自体の休みの日を除けば、何かしら文化活動をしているのが「劇場」なのです。オペラは総合芸術ですから、全てが必要な贅沢品です。それにコンサート、バレエ、合唱、芝居、各種の展示、講演etc.ここに行けば何でも手に入るのが本来の姿です。ウェスト・サイドの様な演目は全員出演でいけます。

大都市では、劇場と名の付くものは他にもありますが(Movietheaterは何処にでもありますし)、インフォメーションで「Theater」と言えば間違いなくこうしたものの事です。ドイツに旅した折りにこうした劇場のプログラムを集めるのも楽しみです。

さて、大まかに説明をしましたが州や町が違うと、運営や特徴も大分違います。そうしたところは、友人、知人のいる劇場の情報で説明したいと思います。

追記/合併してSchiller Theaterになった筈でしたが、また分かれたらしいです。

ヴッパータールはWuppertaler Buehnen(ヴッパータールの舞台)、ゲルゼンキルヒェンはMusiktheater im Revier(「その地域、地区の音楽劇場」と言った所でしょうか)と言う名称で別々に活動している様です。この経緯に付いては2002年12月にドイツに行って調べる予定でしたが、果たせませんでした。またの機会に。

 

何か、情報質問文句その他あれば、是非メールを下さい。

トップページに 森川にメール