同じ空




 葉桜。
 日中の嵐気味の雨で満開だった桜が散ってしまったようだ。

「いや、桜が散っちゃってたんだよ。満開だったのになぁ」
『へー』
「日中の雨でやられちゃったんだなぁ。多分」
『雨降ってたんだ。今日』
「あ・・・」
『桜も咲いてないや。こっちはまだ』

 迂闊だった。天気や時節ネタはタブーだったのに。
 北海道と東京。
 天気や気候が同じはずがない。

 普段は意識して天気の話などしないはずなのに、
 不意に目に入った桜の樹の変わり様に言葉にしてしまった。

「・・・ごめん」
『何が?』
「いや、別に・・・」

 続きの言葉が出ない。

 気がつくと家の前に到着していた。
 雨に濡れた門が キィ と音をたてる。

『あ。家着いた?』
「うん」
『じゃあそろそろ切るね。明日の予習もするし』
「うん」
『おやすみ』
「おやすみ」


  


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