同じ空




「もしもし?」
『あ。おつかれー』
「うース」
『今日はバイトどうだった?』
「まぁ普通。ぼちぼち「教える」ってことに慣れてきたかな?」

 家庭教師のバイトを始めておよそ1ヶ月。
 帰り道、サユリに電話するのが習慣となった。

『そっかぁ』
「そっちはどーよ?」
『ん?こっちも普通(笑)
 授業時間が高校ん時より長くて少し疲れるかな?』
「あ。それあるある。長いよねー」
『2時限目で午前中終わりって、なんか変だよね(笑)』
「そーそー(笑)」

 他愛もない話をできる相手ってのは案外少ない。
 そんなことが何となく嬉しかったり。
 バイトで疲れた神経も癒される感じがする。

 すれ違った会社帰りのOLさんが傘を畳みながら歩いている。
 いつのまにか雨は止んでいたようだ。

「ちょい待ち」
『ん?』

 携帯を胸ポケットに入れ、傘を畳む。
 空の隙間から月の光が見え隠れする。雲の流れが速い。

『どしたの?』
「なんでもない。あっ」
『何っ?』


  


back