「松館今昔:食べ物今昔」

漬物いろいろ

 漬物の主な存在意義は、
@塩分の摂取
A乳酸菌の摂取
B食欲増進
にあると思う。
 特に、私共は、知らず知らずのうちに、漬物を食べることで乳酸菌を摂取して いることになる。
漬物・ヨーグルトの整腸作用参照
 
 ところで、私見ながら私共は、自分の身体の健康をより維持増進するためには、 「地元の乳酸菌」を摂取することが必要であると思う。何故なら、 「土地が違えば、乳酸菌も違う」と……。
発酵の力で心身豊かに参照

一、醤油の一夜漬け
 私の家では、祖母がよく作ったものに、「醤油の一夜漬け」がある。 終戦後の金欠難のときに、よく醤油を買う余裕があったのか不思議であった。
 作る季節(旬)は、ミョウガの出る晩夏の頃であったろうか……。
 細かく切ったミョウガ、キュウリ、ナス、シソの若芽に 醤油を入れて掻き混ぜ、次の日に食べられる。
 具がなくなったら、次々に足してゆく。
 とにかく美味しかった。旬の味であった。
 
二、アケビ殻の漬物
 秋彼岸の中日には毎年、祖母や兄たちと、黒沢の平 (八幡平字黒沢集落の奥で、放牧地跡) に行って、アケビやサナヅラブドウを採ってきた。
 まだ硬いアケビは、コノガ(米糠)に入れて、熟ませるのだった。
 アケビの殻を茹でて水出し、確か、中にシソの実や米麹(ご飯も)、 ミョウガなどを入れて漬け込む。 ほろ苦いところが、また格別であった。
 
三、切り漬け
 初冬になると大根の切り漬けが始まる。確か直径三尺程度の コガ(杉桶)に、鉈切りした大根と米麹などで漬け込む。
 冬になると、コガに何層にも張ったシガマ(氷)を叩き割って 取り出す。冬の漬物の定番であった。
 
四、アカカブ漬け
 漬け方は、切り漬けに準ずるが、米麹の替わりに甘酒を入れる。 甘口に出来上がるので、酒の肴と云うより、女性たちの「おやつ (お茶受け)」になる。歯のなくなった老人たちは、ちょっと茹でて 食べていたようだ。また一緒の漬ける葉の部分も乙なものであった。
 
五、沢庵漬け
 掌ぐらいに柔らかく干した大根を、これまた大きなコガに漬け込む のである。春頃になると食べ始めたと思う。しなびた歯ざわりが懐かしい。
 夏頃になると、コガの底の方になるのか、やや水分を含むようになる。 それを煮て食べると、これまた乙な味……。
 
六、味噌漬け
 大根を味噌瓶の底に付け込むのである。私は子供の頃は、この味噌大根 を食べれなかった。概して漬物は食べれなかったが、お酒を飲めれるよう になってからは、漬物は勿論、何でも食べれるようになった。
 キャベツの固い部分なども、味噌に漬けて食べた。
 
 なお、味噌は、春に、大豆をよく煮て臼でつき、いわゆる「味噌玉」 に丸めて日当たりのよい縁側などに干し、頃合いをみて水や塩などと 一緒に臼でつき直し、大コガに仕込む。赤味噌の誕生である。

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