まず餅には、二種類あった。一つは、糯米をふかして(蒸して)
臼でついた「餅」と、
もう一つは、米の粉で作る、いわゆる「餅菓子」である。 餅菓子には必要により、ウルコメ(粳米)やモチコメ(糯米)の粉を用い、 一つは、茹でてから(ふかしてから)成形する(丸める)ものと、 もう一つは、成形してから茹でる(ふかす)ものとがあった。 「チケシ餅」と云うのがあったが、これは「打ち返す」のことであろう。 即ち、米を研いで笊に取って、臼ではたいて粉にして、ふかしてから又 臼で打ち返して、成形した餅菓子である。 彼岸餅などように、中に餡を入れて、トリゴ(餅とり粉)で仕上げる。 糯米をふかすときは、直径二十数センチ、高さ四十センチ程度の円筒形 の杉桶を使用していた。これは、もっぱら餅を作るときや、オコワを 作るときに使い、「チケシ餅」をふかすときは、大鍋の湯で茹でていた。 一、彼岸餅 一旦ふかした餅菓子を丸め、中に餡を入れる。トリゴには、 ジャガイモをすって作ったカダクリコ(片栗粉)を用いた。 何日か経つと固くなるが、それをヒビドで焼いて、「熱い!熱い!」 と言って食べた。 近い親戚の間では、彼岸餅を相互に交換(上げたり、もらったり) していた。 二、クルビ餅(醤油餅とも) よく夏になると作ってもらった。米の粉を醤油で味付けし、中に ザラメ(黒砂糖も)やクルビ(胡桃)などを入れて丸め、茹でる(ふかす)。 それをミョウガや笹の葉に載せる。中のザラメが溶けて、美味しい。 クルビは山のもので、ヒビドで少しあぶって口を開かせ、その中に 包丁を差し込んで割り、中の実をタダミパリ(畳針。千枚通しでも可) で取り出し、みじん切りにする。香ばしい。 三、鍋餅(ぼたもち・おはぎ) ナベモヂ(鍋餅)は、柔らかく炊いた糯米のご飯を丸め、表面を 粒餡で被う。冬、スキー遊びなどで帰宅し、炬燵で温められている ナベモヂを食べた。美味しかった。 |
[次へ進む] [バック] [前画面へ戻る] |