下タ沢会によせて(覚書)

新通洞余談 − 熊の出る話し −

 ここまで書いてきて、「ふと」思った。新通洞のドウは、なぜ「道」でなく「洞」 なのだと。そこで考えた。これは鉱石を掘ったり運んだりするためではなく、下タ 沢や下新田の人達、別所や十二所の方から働きに来る人達の通るための通路だから、 「洞」にしたんだと思ったが、何んとなくすっきりしない。そこで字典を見たら、 洞には、つきとおす、とおりぬける、という意味があるというので、なんとなくわ かったような気分で、それでいいやと思った。がまてよ、鍾乳洞などという場合は どうなるか、また字典を見直したら、洞は、ほら、ほらあな、がけや岩などにある 穴、とある。新通洞も奥は千畳敷ではないが、坑道を継ぎ足すと東京に行ける程の 距離になるという。まさに尾去沢鉱山は、人間が作った巨大なるほら穴だ。そのせ いではないだろうが、新通洞には、親子連れの熊が出たという、誰か見たようだ。 それはそれとして、もし誰か迷いこんで事故でも起したか大変だということで、閉 山後、坑口は閉鎖されてしまった。

[次へ進む]  [バック]  [前画面へ戻る]