下タ沢会によせて(覚書)

ハナ・ハトからサイタ・サイタへ

 私達が小学校に入った時は、国語の教科書(それまでもいろいろ変遷があったと 思うが)は、ハナ・ハト・マメ・マス・ミノ・カサ・カラカサ・カラスガヰマス・スズメガ ヰマスであったと思う。後は忘れたが(今はひらがなから教えるが、私達の頃はカ タカナからであった)、それが妹(栄子)が小学校に入る時(昭和8年)から教科書 が変ってしまった。それまでは学校に入るというので、一生けん命ハナハトを読む のも書くのもおぼえたのに、学校へ行ったら色刷り(それまでは黒一色)の本にな り、文章もサイタ・サイタ・サクラガサイタ・ススメ・ススメ・ヘイタイ・ススメとなっ たのでめんくらった。こうして軍国主義教育が色こくなって行くわけだが、まだ子 供だからそんなことは考えもしなかったと思うが、その時は私も5年生になる年で、 母親にいわれて一生けん命妹の先生をしたと思うので、古いことはみんな忘れてし まう方だが、妹が1年生になる、本が黒から色づきになりサクラ・サクラに変った、 というので、そのことだけ記憶に残ったのだろうと思う。

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