葬式のやり方は、宗派やその家によって若干の違いはあると思うが、大体同じよ
うなやり方だと思う。私達(相馬家)は曹洞宗(尾去の長泉寺)だが、「葬式役割
之覚」という帳面を作った。それを順々に読み上げて、それぞれの物を持って、墓
まで行列をつくっていった。身内の者は、男は三角に折った白い紙を額に結んだ。
女の人は、後ろ襟に細長い白い布をはさんだ。
お寺の前までくると、棺をのせたレン台は、左まわりに3回まわって、そこで棺を 下ろして、背負って墓所へ向った。行列の途中、所々で(曲り角など)カネと太鼓 をジャンポン、ジャンポンとたたいた。それで子供の頃葬式のことを、ジャンポン がある、といったりした。 それにしても、子供頃なじんだカネとタイコだが、正式にはなんというのか知ら なかった。そこで、今年の春、お寺に行ったとき、お尚さんに聞いてみたら、あれ は、「鼓ハツ(金偏+祓の旁、クハツ)」(また鼓鉢クハツとも)という、と (SYSOP注:現在では普通ポンは太鼓、ジャンはハチと呼んでいる)。たたくとき、 どっちが先かと聞いたら、ポンが先だ、という。私の頭は、ジャンポンでジャンが 先だ。今度葬式があったら確めてみようと思った。 このあたりの我々階級の葬式では、お尚さんがたいてい二人だ。となるとジャンだ けでポンがない。お尚さんが三人いないと(導師とジャンとポン)ジャンポンにな らない。そのうちに花輪というより、鹿角の名士ともいうべき人が亡くなった。い ろいろお世話になっていたので、敬意を表して葬儀に参列した。お尚さんは5〜6人 だった。亡くなった人には大変申訳ないが、今日こそチャンスと耳をすました。や っぱりポンとたたいてジャンだった。しかしだんだん早くたたいてゆくと、ジャン だかポンだか、どっちが先かわからなくなる。結局おしまいの方になると、私の耳 はジャンポンジャンポンになってしまう。ともあれ、それで一件落着と、後は神妙 にご冥福をお祈りしてきた。 ところで、「ク」の方の鼓は、ツヅミ、タイコで、しょっ中お目にかかるが、中 々お目にかかることのないのがハツの方の「ハツ(金偏+祓の旁)」、そこで辞典 をみたら、楽器の一種。シンバルに似た楽器。円い皿形の二枚の銅板を打ち合せて 鳴らす。とある。お寺でよく見ているので、そのとおりだと、これも納得。 |