下タ沢会によせて(覚書)

山の幸の身上書(抄)

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 カシマメやジョミだと山のなり物のことを書いたので、それを少し整理し てみることにする。本当にそれは戦中戦後の物のない時代、生命をつなぐ大 事な糧てだったと思う。山の幸、山の恵みは実感として生活の中に生きてい たと思う。今の子供達は山の物を見向きもしないだろうが、その良し悪しは 別として、再び山の恵みに生命をつなぐような時代が来ないことを切に願う と共に、木であれ草であれ、山の物、自然の恵みを大事にする心を失いたく ないものだと思う。

 トジラ = クロウメモドキ科のクマヤナギ(熊柳)、オオクマヤナギもある。
 トジラの紫色のきれいな果実酒は、ご馳走になったことがあるが結構いける。
 トジラ鉄砲を作って遊んだというが、私は作ったことはない。大人の人達は、適 当な長さに切って、パイプを作っていた。

 カシマメ = カバノキ科のツノハシバミ(角榛)。
 二百十日の頃になると、カシマメに実が入って、カッチャから自然に尻がはなれ た。子供の頃は、二百十日が待通しかった。

 コハズケ = ツツジ科のナツハゼ(夏櫨)。
 紫色のきれいな果実酒ができ、私もつくった。

 マツフサ = モクレン科のマツブサ(松房)。秋に紫黒色の液果を結び食用。

 コカ = マタタビ科のサルナシ(猿梨)。
 瓜畑の高橋久雄さん(鉱山の火薬係)の家にあったが、今はない。

 マタタビ(木天蓼) = マタタビ科。
 果実酒としては最も多くつくられ。市日などでは、「虫喰い」といってデコボコ してコブのような感じのするのを売っているが、この方が効能がよいということで、 値段も高い。

 ジョミ = スイカズラ科のガマズミ。果実は食用。

 スグリ(酸塊) = ユキノシタ科で、マルスグリやセイヨウスグリがあり、食用。

 サナズラ(さなづら)は、ヤマブドウの一種で小粒のものである。

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