下タ沢会によせて(覚書)

また下タ沢語 − ユルギなど − (抄)

△ユルギとは
 ユルギとは、囲炉裏(いろり)の縁のことで、どこの家にもあった、3尺四方くら いの木枠である。その6尺くらい上には、火棚が吊ってあって、その上には、何にか ぬれたものを上げて乾かしたり、冬は藁(わら)で編んだ深グツやシベなどもか乾 かしていた。

 ユルギの真中の火の焚くところを「ほど」といった。ホド(火床)とは、囲炉裏 の中心部で、「あんまりホドをホッキャますな」と怒られた。
 ホッキャますな、ほっきゃすな = かますな、かっちらかすな
 ホッチャぐるな = かっちゃますな、掻っ散らかすな

 お盆近くになると、お墓の掃除に行くのであるが、「墓、ホッキャすに行く」と いった(思いちがいかもしれない)が、その時のホッキャますには、仏さんを大事 にする、先祖を供養するという思いがこもっていたような気がする。

 父親か誰かの話しによると、餅をつくキギ(キネ)やユルギの縁を作るのには、 梨の木がいいとのことである。梨の木は、ささくれ立たないということで、木に逆 目ができると、手にささったり、足に刺ったりするので、痛かった。

 ホドといえば、ホドイモがある。ホド(塊芋・土芋)はマメ科の蔓性多年草で、山 野に自生する。下タ沢では畠山定雄さんの家の脇の赤ダシに行く横道の山ぎわのと ころにあった。私は小学校の3〜4年生の頃だったろうか、2〜3度それを掘ってきて、 煮てもらって食べた記憶があるが、うまかったか、うまくなかったか、味は記憶に ない。
 軽井沢辺りでは、郵便局の向かいの奈良幹雄さんが、家の後ろかの垣根のところ にあるという。

 家のまわりには、トコロとトロロイモ(自然薯)があった。トコロは苦い。上み のガニコジャ(蟹子沢)の方に掘りに行ったこともあった。

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…… 囲炉裏 ……
 鹿角の郷(秋田県)辺りでは、囲炉裏のことを「ひびと・ひびど」、 囲炉裏を取り囲む四角い木枠のことを「ひつぎ・ひづぎ」と云う。
 
 因みに、旧秋田藩佐竹領〜津軽地方辺り(日本海側)では、 囲炉裏のことを「ユルギ」と呼んでいるようである。
 「下タ沢」集落は、行政区域は鹿角であるが、鹿角盆地(旧盛岡藩南部領)の外側(西側)に位置 − この流域は北秋田(大館)地域に含まれる − しているので、 囲炉裏のことを「ユルギ」と呼んでいるものと考えられる。
GLN企画普及室