36 日本人の創った色(赤)
 
〈赤〉
 太陽を「御日様」とか「御天道様」と尊称したように、人々は太陽に感謝と敬虔な気
持ちを持っていました。生命の営みの根源が太陽の「赤」にあるのです。人間が色を意
識した一番初めは、この太陽の「赤」の色であると思います。
 人類の得た火も「赤」です。ここにも火の「赤」に対する畏敬の感情が生まれるので
す。
 そして「赤」は、血の色です。「赤」は生命の色です。
 
 赤系の顔料の代表は「朱」で、それは硫化水銀鉱物です。福井県若狭地方の鳥浜貝塚
から出土した縄文時代の彩文土器に、朱の痕跡が窺われます。天然朱の上質のものを「
真朱マソホ」、取り分け優れたものを「辰砂シンシャ」と呼びます。
 次は「弁柄」で、これは土中の酸化鉄が、腐食したように状態になったもので、わが
国中のどの土地でも産出します。
 
 染料とは基本的には、植物の根や葉、又は花や樹皮の部分を煎じて、水に溶かしたも
のです。その水乃至お湯に布や糸を浸けて染色するのです。
 「茜アカネ」はアカネ科の蔓性の多年草で、二年目以降の赤色を帯びた根を煮出して染液
を作ります。
 「紅花ベニバナ」はキク科の一年草で、原産地はエジプトやエチオピアなどアフリカの
北部と云われます、それが中国を経て、五世紀にわが国にもたらされました。中国の呉
ゴから来たので呉藍クレアイ(藍は染料の総称)と呼ばれました。
[詳細探訪(古来の植物染色「草木染」)]
関連リンク 「茜」
関連リンク 「紅花」
 
 日本人は「色」のその微妙な違いによって、色々な「色名」付けました。ここでは赤
系の色名をご紹介します。
 
朱色シュイロ
真朱マソホ(しんしゅ)
洗朱アライシュ
弁柄色ベンガライロ(紅柄・紅殻)
代赭色タイシャイロ
赤銅色シャクドウイロ
珊瑚色サンゴイロ
煉瓦色レンガイロ
蒲色カバイロ
茜色アカネイロ
緋アケ
深緋コキアケ
紅葉色モミジイロ
朱跋(糸扁の跋)シュフツ
熏(糸扁+熏)ソヒ
曙色アケボノイロ
東雲色シノノメイロ
紅クレナイ(べに)
掻練カイネリ
紅絹色モミイロ
艶紅ツヤベニ(ひかりべに)
深紅フカキクレナイ
韓紅カラクレナイ
今様色イマヨウイロ
桃染モモゾメ(つきぞめ)
撫子色ナデシコイロ
石竹色セキチクイロ
桜色サクライロ
桜鼠サクラネズミ
一斤染イッコンゾメ
聴色ユルシイロ
退紅タイコウ
粗染アラゾメ
朱華ハネズ
紅鬱金ベニウコン
橙色ダイダイイロ
赤香色アカコウイロ
支子色クチナシイロ
牡丹色ボタンイロ
躑躅色ツツジイロ
鴇色トキイロ
小豆色アズキイロ
羊羹色ヨウカンイロ
赤朽葉アカクチバ
赤白橡アカシロツルバミ(あかしらつるばみ)
蘇芳色スオウイロ
紅梅色コウバイイロ
黄櫨染コウロゼン
柿色カキイロ
黄丹オウニ(おうだん)
萩色ハギイロ
臙脂色エンジイロ
猩々緋ショウジョウヒ
 
 推古天皇十一年(603)に「冠位十二階」の制度が作られました。それは冠の色によっ
て朝廷内の序列を示そうとするもので、「徳・仁・礼・信・義・智」の六段階をそれぞれ大小
に分けて、大徳・小徳、大仁・大仁などの十二階として、位階ごとに冠の色を定めました。
大小の色は濃淡で表しました。
 「紫・青・赤・黄・白・黒」がその序列で、例えば、大徳は濃い紫、小徳は淡い紫、大智は
濃い黒、小智は淡い黒となります。
 この六色は紫を除いて、「青、赤、黄、白、黒」と云う、中国の古い五行思想に基づ
くものです。古代中国において、既に色の三原色である青赤黄が知られていたと云うこ
とは、この三色によって、白以外の何色でも表すことが出来ると云う色彩の法則が明確
にあったと云うことになります。
[7742]易・五行
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