鋏と奴(やっこ)使いがら。
解釈:鋏は使い方次第でよく切れたり、切れなかったりする。使用人も使い
方で、よく働きもするし怠けもする。人使いの心得を言ったもの。
類義:小僧と鋏は使いようで切れる。鋏と若い者は使いようで切れる。
麻疹(はしか)に薬はない。
解釈:麻疹は、暖かくして安静にしていれば自然に治るもので、看病が大切
だよということ。
橋が無(の)うて、渡りがない。
解釈:橋がなければ川向こうへは行けないように、目的を達するには、まず
手段がいるということ。
類義:橋が無ければ渡られぬ。港無うして舟着かず。
麻疹は目から。
解釈:麻疹に罹ると、その特有の症状は、まず目かに現れるということ。麻
疹かどうかを見極めることが大切だという教え。
梯子と姑婆は、置き所がない。
類義:年寄と仏壇は置き所がない。
恥と頭は掻き次第。
解釈:恥を掻くことなど頭を掻くくらいのことと、一向に気にしないで、不
品行を重ねること。
馬耳東風(ばじとうふう)。
解釈:馬の耳に春風が吹いても何も感じないように、人の意見や批評などを
聞き流して、気に留めないこと。
類義:馬に経文(きょうもん)。馬の耳に念仏。柳に風。
箸と主(しゅう)とは太いがよい。
解釈:箸は太くて折れないのがよく、主人も太っ腹でしっかりした人物の方
が頼りがあってよい。
類義:亭主と箸は強いがよい。端と身代は太いがよい。寄らば大樹の蔭。
箸に当たり、棒に当たり。
解釈:当り散らすこと。八つ当たり。
箸に目鼻(めはな)を付けても、男は男。
解釈:箸に目鼻を付けたように痩せて貧相な男でも、男として立てなければ
ならないということ。
類義:痩せても枯れても男は男。藁(わら)で束ねても男は男。
箸にも棒にも掛からぬ。
解釈:どうしようもなく、手が付けられない状態。取り扱いようがなく困る
ことのたとえ。
類義:縄にも鬘(かつら)にも。縄にも杓子(しゃくし)に掛からぬ。
恥の上塗り。
解釈:不名誉なことを重ねること。
類義:恥の掻き上げ。恥の恥。
反義:汚名を雪(すす)ぐ。
箸の転んだも可笑しい。
解釈:若い娘が、一寸したきっかけでよく笑うこと。箸が転んでも、風が吹
いても可笑しがる。若さに包まれて生き生きと弾む少女期をよく表した言葉。
類義:壁の崩れたのも可笑しがる。木の葉が飛んだのも可笑しい。糠の崩れ
たのも可笑しがる。
始めあるものは、終わりあり。
解釈:物事には必ず始めと終わりがある。生ある物は必ず死に、盛んであっ
ても何時までも滅びないものはない。
類義:盛者必衰(しょうじゃひっすい)。生者必滅(しょうじゃひつめつ)。
始めが大事。
解釈:どんなことでも、最初に執った方法や態度が後々の行動や結果にまで
影響するから、最初の段階を慎重に、大事にしなければならないということ。
類義:初心忘るべからず。始め半分。始めよければ終りよし。
始め煌(きらめ)き、奈良刀(ならがたな)。
解釈:鍍金(めっき)は剥げやすいというたとえ。奈良刀とは室町時代中期
以降に奈良付近で大量生産された粗悪な刀の代名詞。このような鈍刀は、初め
は光っていても、直ぐに錆びてしまい、使い物にならない。
類義:始め煌き、神烏帽子。(かみえぼし)。始め煌き付け焼刃(つけやき
ば)。
始めに二度なし。
解釈:何事も始めが大切だ。人生は一度切りで、遣り直しがきかないから、
慎重に、しかも真剣さが必要であるということ。
類義:始めが大事。
始めの囁(ささや)きは、後のどよみ。
解釈:始めは密かな内緒話も、やがては世間の評判になるということ。また、
事の始まりはごく些細なことからという意。
始めは処女の如く、後は脱兎(だっと)の如し。
解釈:始めは弱々しげに振る舞っていて、後で見違えるような実力を発揮す
ること。油断させて攻撃する孫子(そんし)の兵法から。
始め半分。
解釈:最初のやり方が大部分を左右するので、第一歩を確実に踏み出せば、
半分成功したようなものだということ。
類義:始めが大事。はね(跳ね)半分。
始めよければ終わりよし。
類義:始めが大事。
始めよし、後(のち)悪し。
解釈:始めのうちは勢いよく物事が進み、そのうちに調子が悪くなること。
また、始めにおまり力み過ぎると、後が続かなくなるという戒め。
類義:頭でっかち、尻窄(すぼ)まり。竜頭蛇尾(りゅうとうだび)。
始めを言わねば、末が聞こえぬ。
解釈:話は最初から順序立てて説明しなければ、訳が分からないということ。
論理的に話すことの大切さを言ったもの。
類義:機(はた)は裏から解かせ、、話は本(もと)から話せ。話は根から、
毛は末から。
箸も持たぬ乞食。
解釈:全くの無一物(むいちもつ)。綺麗さっぱり何も無いこと。
類義:御器(ごき)も持たぬ乞食。箸を持たぬ丸焼け。
箸より重い物を持たない。
解釈:裕福な家に生まれて大切に養育され、全く労働の経験がないこと。
類義:乳母日傘(おんばひがさ)。堅い物は箸ばかり。
柱無き処に宿取るな。
解釈:危ないと思われる所に身を寄せるなという戒め。
類義:君子危きに近寄らず。
反義:寄らば大樹の蔭。
柱には虫入(い)るも、鋤(すき)には虫入らず。
解釈:常に働いている人は神経も張り詰めていて、誘惑に負けることもない
が、怠けている人は、心身が緩み勝ちで、病気や誘惑に負けやすいというたと
え。
類義:使う鍬は光る。
走り馬に、捨て鞭を打つ。
解釈:一目散に走り去ること。
類義:尻に帆を掛ける。走る馬に鞭。
走り馬に鞭。
解釈:よい状況の上に、更によくしようと努めること。
類義:駆け馬に鞭。行く馬に鞭をおおす。
走る馬に鞭。
解釈:更に勢いを増すこと。
類義:虎に翼。帆掛舟に櫓(ろ)を押す。
走れば躓く(つまずく)。
解釈:慌てて物事を行うと失敗するから、急ぐときほど落ち着いて事に当た
れということ。
類義:慌てる鰹は鈎(はり)を呑む。急がば回れ。
参考:Make haste slowly.(ゆっくり急げ)
恥を言わねば、理が聞こえぬ。
解釈:自分の立場を理解して貰おうと思ったら、恥ずかしいなどと言わずに、
洗い浚(ざら)い内情を話すことだということ。
類義:恥を言わねば、理が立たず。
恥を知らねば、恥掻かず。
解釈:恥ずかしいという観念のない人は、どんな不名誉なことも平気だ。こ
のような価値観の違う人と、道徳の話をしても無駄である。
類義:恥を恥と思わねば、恥を掻いた事が無い。
バスに乗り遅れるな。
解釈:チャンスを逃すな、新しい時代の波に取り残されるなということ。
参考:Miss the bus.の訳語。
蓮の台(うてな)の半座(はんざ)を分つ(わかつ)。
解釈:死んで後も極楽往生して、一つの蓮の花台に仲よく身を託し合い、死
後の幸せをも分け合うほどの仲をいう。
類義:一蓮托生(いちれんたくしょう)。一つの蓮の縁。
鯊(はぜ)の鈎(はり)で、ハタヤは釣れぬ。
解釈:鯊を釣る針で鯛を釣ることはできないことから、利益を僅かしか与え
ずに人を動かそうとしても駄目だということ。「はたや」は鯛のこと。
類義:蝦で鯛は釣れぬ。
反義:蝦で鯛を釣る。
|