62 育ててみたい植物〈アヤメ類〉
 
〈アヤメ〉
 アヤメ菖蒲はアヤメ科の多年草で、わが国全域の山間部の日当たりの良い草地に生え
る。根茎は横に伸びて硬く、繊維に被われている葉は細く直立し、長さ30~50㎝、幅5~
10㎜、細い中央脈がある。花茎は高さ30~60㎝で枝分かれしない。5~6月に2、3個の
大きな紫色の花を開く。花は径8㎝内外、子房下位、2~4㎝の花柄がある。外花被片は
3個、広倒卵形で垂れ下がり、基部は急に細くなって爪部ソウブとなる。爪部は黄色で細
かい紫色の横脈が目立つ。内花被片3個は倒披針形で小さく直立し、基部で外花被片に
繋がる。雄蘂3個、外花被片の基部から出て、葯は外向きである。花柱は上部が3裂し
て花弁状となり、それぞれが2深裂して、その外に柱頭がある。子房は3室、朔(草冠
+朔)果サクカは長楕円形で長さ約4㎝、多数の種子が出来る。
 白花のシロアヤメ、内花被片が大きいクルマアヤメ、全体が小さいチャボアヤメなど
がある。
アヤメ
 カマヤマショウ釜山菖蒲は、アヤメより大きく、葉は硬くて捻れ、蕾は点頭する性質 があり、朝鮮の釜山フザンから移入された。   〈エヒメアヤメ〉  エヒメアヤメの花は単生し、青紫色、外花被片には突起がない。   〈カキツバタ〉  カキツバタ杜若はアヤメ科の多年草で、わが国全土の湿地に生える。根茎は分枝し、 古い葉の繊維が付く。茎は高さ約50~70㎝、分枝せず、短い葉が少数付く。葉は多くは 根生し、剣形で尖り、幅2~3㎝、中肋チュウロクは著しくない。花は5~6月に咲き、紫色、茎 頂の包ホウの間に3個着き、外花被片の中央下部は普通白色、内花被片は小さく直立する。   〈ノハナショウブ〉  ノハナショウブ野花菖蒲はアヤメ科の多年草で、わが国全土の山中の湿地に自生する。 根茎は褐色の繊維に被われる。葉は根茎上に左右2列に重なって付き、剣形で幅1~1.2 ㎝、高く隆起した中肋がある。花茎は高さ50㎝以上に達し、少数の包が付く。晩春に包 の中の短い柄の頂に花を着ける。花は赤紫色で径約10㎝、外花被片は楕円形で基部に黄 色の爪があり、内花被片は直立して小さい。
ノハナショウブ
   ハナショウブは、ノハナショウブから日本人の手により改良された。  キショウブは、地中海沿岸から西アジアに自生し、明治中期に渡来、野生化している。   〈ヒオウギアヤメ〉  ヒオウギアヤメはアヤメ科の多年草で、本州中部地方以北の高層湿原などに自生する。 葉は剣状広線形で互いに相重なって2列に数個並び、幅1~2㎝、中肋ははっきりしない。 花茎は高さ60㎝位で数個の包が付き、初夏に包内から径約8㎝のアヤメにやや似た花が 咲く。花は青紫色で花筒は短く、外花被片3個は広倒卵形で、爪部は黄色の地に青紫色 の支脈がある。内花被片3個は小形で尖り、披針形をなし、直立する。   〈イチハツ〉  イチハツ鳶尾はアヤメ科の秋植え球根草で、中国南部原産、江戸時代からコヤスグサ の名で栽培されていた。4~5月に花茎を30㎝位伸ばし、先端に淡碧紫色タンペキシイロ地に紫 の小斑点のある花を2~3個着ける。根茎を乾燥したものをイリス根と云い、緩下剤、吐 剤となる。   〈シャガ〉  シャガ射干はアヤメ科の常緑多年草で、丘などの林中の斜面に群生する。葉は根生で、 根茎の先端に左右2列に密に互生し、長さ40~50㎝、幅2.5~3㎝の剣状、中肋は目立た ず、先端は尖る。春に葉心から高さ60㎝内外の花茎を出して、少し枝を分け、数個の包 がある。花は径約5㎝、淡青紫色で各包に2、3個着く。外花被片は倒卵形で、細牙歯 ガシがあり、中肋は内面が隆起して、鶏冠状となる。内花被片は少し小さく、斜開する。 庭園の日陰に栽培され、結実しない。    ヒメシャガは全体が小さく、花色は薄青から白色まである。   〈ヒオウギ〉  ヒオウギ檜扇はアヤメ科の多年草で、本州中部地方以西、四国、九州、沖縄に自生す る。高さ1m以上になり、葉は互生し、広倒状で長さ40㎝前後、下部は左右2列に並んで 扇状をなす。夏に茎は上部で分枝し、その先に数花を着ける。花は6弁で径約5㎝、黄 赤色に赤色の斑点がある。果実は熟すと3裂し、球形の黒い種子を出す。  花が桃色や黄色もの、斑点のないもの、丈の低いダルマと呼ばれるものなどの園芸品 種がある。   △アヤメ・カキツバタ・ハナショウブの簡単な見分け方  外花被片の爪部の違いで見分ける。 アヤメ 黄色で細かい紫色の横脈、つまり「綾目」を呈する。 カキツバタ 白色。 ハナショウブ(ノハナショウブ) 全ての品種とも黄色。 [詳細散歩]
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