[詳細散歩] 参考:北隆館発行「野草大百科」など 〈アヤメの仲間〉 アヤメの仲間はアヤメのほか、カキツバタ、ノハナショウブ、シャガなどが野生種と してある。園芸種のハナショウブは、ノハナショウブが原種で、これから品種改良され たものである。ハナショウブの園芸種は500種余りある。イチハツやキショウブは中国原 産であり、栽植されているが、キショウブは河川や沼などに野生化している。 ヨーロッパ産のアヤメの仲間はイングリッシュアイリス、ジャーマンアイリス、スパ ニッシュアイリス、ダッチアイリスなどの名称で栽植されている。アイリスIlisとは、 ギリシャ語で「虹」であり、ギリシャ神話のイーリスから来ている。イーリスは、天と 地を結ぶ神々の使者と考えられていた女神の名である。 野山の花の集会に青い着物を着て、気高い少年が現れ、其処に日が刺し、突然虹が出 て少年のエメラルドの玉飾が美しく輝いた、と云う「虹の使者」の物語もある。 「何れがショウブ、アヤメかカキツバタ」と源三位頼政がどれも優劣を付けがたい美 しい女性に対して言ったと云う言葉のように、この類は良く似ている。 生態的に見るとカキツバタは池沼の水中に、ハナショウブは水湿地に、アヤメは乾燥 地に生えているので、生態でも大体の見分けは付く。形態的には、カキツバタは花より 葉先が上に伸びていて、葉脈が何本も見える。ハナショウブは葉先は花より上に出ず、 葉の中肋(主脈)が高くなっていて目立つ。アヤメは丈が低く、葉の表面は平らで脈が 見えず直立している。また、アヤメの花は外花被の基部近くに網目模様があるのが特徴 である。 アヤメはシベリアから日本にかけて分布しているので、英名はSiberia Ilisとなって いる。学名の種名Sanguineaサングイネアは、「血赤色の」と云う意味である。 古くはショウブやハナショウブなど茎葉の形が似ているものは、共に菖蒲アヤメと云って いたようである。