61 水辺の小動物
参考:鹿角市発行「鹿角市史」
〈両生類〉
鹿角地方に生息している両生類の中で、特記されるものとして、モリアオガエル・カジ
カガエル・タゴガエルやサンショウウオ類が挙げられる。
これらの小動物は、何れも特別な自然条件の中で生息しており、近年そうした自然環
境の破壊や汚染が進んできて、その生育分布域が著しく狭まって来ていると云う。
(1) サンショウウオ
サンショウウオの生息地は、トウホクサンショウウオ・クロサンショウウオ・ハコネサ
ンショウウオの3種が分布している。
トウホクサンショウウオ
最も普通に見られる低地性の種類で、鹿角市南部、扇状地末端の湧水から続く細い渓
流の淀みなどが一般的な産卵場所になっており、また止水域(水溜まり・沼)でも多く見
られる。分布高度範囲は100〜1000mとされているが、八幡平の大深付近の海抜1200m地点
の小渓流での産卵を発見したとの報告もある。
クロサンショウウオ
高地性の停水型の種類で、八幡平の高地の湿原や沼、五ノ宮嶽の小沼など、標高の高
い場所に多くの産卵が見られる。分布高度は200〜1400mとされ、山麓から山頂にかけて
の止水域などにも見られ、稀にトウホクサンショウウオと同じ場所に産卵しているのを
見かけることがある。
ハコネサンショウウオ
幼生・成体とも山頂或いは山腹の渓谷に生息しており、その分布高度は100〜800mで、
地形・水温・水流等の環境条件に制約されることが多く、従ってその分布域も非常に狭く
限られている。尾去オサリの山の北斜面の、20〜30度の急勾配の渓流で発見したと云う報告
もある。
[詳細探訪]
(2) モリアオガエル
モリアオガエルは指趾に吸盤を持ち、林中の池や沼の周辺の樹上に登って、水面に張
り出した枝に白い泡状の卵塊を産み付け、この中で孵化フカしたオタマジャクシが雨を待
って洗い出され、水中に落ちて泳ぎ出す、と云う興味深い繁殖の習性を持つわが国特産
のカエルで、学術上からも貴重な動物である。
モリアオガエルは大気中で生活している場合でも、肺呼吸よりは大部湿った皮膚で呼
吸をしている。そのために、適度の湿度を保ち風の当たらないブナなどの原生林の中に
ある池や沼が、モリアオガエルにとって最も適した環境である。その意味で、原始的な
森林生態系を破壊しないように留意したいものである。
現在、モリアオガエルの生息範囲は狭くなっており、八幡平など1000〜15000mの高地
の冷温帯〜亜寒帯の、比較的厳しい気候下に残る自然林地帯に生息していると云う。
[詳細探訪]
(3) 米代川水系のカジカガエルとタゴガエル
清澄な渓流に生息し、真夏を迎える頃から人々の涼を誘う美しい鳴き声を聞かせてく
れるカジカガエルは、米代川水系上流の湯瀬温泉付近の渓流地帯や大湯川の上流地帯に
多く生息している。
また、タゴガエルの生息地は秋田県内ではあまり多く知られていないが、山間の雪解
け水で洗われる岩や石の間、伏流水で穿ウガれた土中の穴の奥などに産卵し、夜明島や湯
瀬の旧道剣ケ岩付近での産卵生息が報告されている。
[詳細探訪]
(4) ヤマアカガエル
水田地帯にはニホンアマガエル・ツチガエル・トノサマガエルと共に、ヤマアカガエル
がよく見られる。しかし、秋田県では平野部に普通なニホンアカガエルは、鹿角には生
息しないなど、鹿角地方はカエル類において、北方系と南方系のものの混生地帯でもあ
ると云う。
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