≪F1界の構造(その9)≫

トヨタに引き続いて、ついにBARも新車を発表しましたね。真新しいレーシングスーツに身
を包んだ琢磨を見て、新しいシーズンの到来を実感した方も多いのではないでしょうか?また、
前々から噂されていたとは言え、FIAから非常にドラスティックなレギュレーションの変更
も発表され、話題の展開についていくのも大変ですね。

私もレギュレーションの変更にはとても関心がありますが、未だ運用面を含めて不明な点も多
く、またこの話題については他にも多くの方が書かれていますので、今回はこれには触れず、
今シーズンのドライバーラインナップについて書いてみたいと思います。例によって?、途中
から話が大きく逸れてしまったために、またまた超長文になってしまいましたが、お付き合い
頂ける方は是非最後まで読んで下さいね。

ではまず、チームの予算・規模の大きい順にドライバーを並べて、その横に5つの説明(@A
B、C、D)を入れてみました。ちょっと見にくくて申し訳ありませんが、それぞれの意味は
下記のようになっています。

@F1での実績:○優勝経験あり、△表彰台経験あり、×どちらもなし

Aトップチーム在籍経験:○レースドライバー、△テストドライバー、×どちらもなし

BF1以前の実績:○ヨーロッパのF3以上のカテゴリー、又はCARTでチャンピオン
         △ヨーロッパのF3以上のカテゴリーでシリーズ3位以内
         ×上記に該当する実績なし

Cドライバーの年齢:F1デビュー年齢−現在の年齢

DF1勝利数:未勝利は記述なし

M・シューマッハ(FERARRI)   ○○○、22-34、64勝
R・バリチェロ(FERARRI)    ○○○、20-30、5勝
D・クルサード(McLAREN)    ○○△、23-31、12勝
K・ライコネン(McLAREN)    △○×、21-23
JP・モントーヤ(WILLIAMS)   ○○○、25-27、1勝
R・シューマッハ(WILLIAMS)  ○○△、21-27、4勝
O・パニス(TOYOTA)      ○△△、26-35、1勝
C・ダマッタ(TOYOTA)     ××○、29
J・トゥルーリ(RENAULT)    △×○、23-28
F・アロンソ(RENAULT)     ××○、19-21
M・ウェバー(JAGUAR)     ××△、25-26
A・ピッツォニア(JAGUAR)   ×△○、22
J・ビルヌーブ(BAR)      ○○○、24-31、11勝
J・バトン(BAR)        ×○△、20-23
G・フィジケラ(JORDAN)    △×○、23-30
未定(JORDAN)        ????
HH・フレンツェン(SAUBER)   ○○△、26-35、3勝
N・ハイドフェルト(SAUBER)  △△○、22-25
J・フェルスタッペン(MINARDI) △○○、22-30
J・ウィルソン(MINARDI)    ××○、24

@の項目から注目してみると、当然のことながらトップチームには優勝経験のあるドライバー
が集中していますが、何といってもシューマッハの圧倒的勝利数にまず驚かされます。それか
ら、メーカー系のチームというのは特に、1stドライバーにはF1での実績を求める傾向が
強いと思っていたのですが、今年はトヨタとBARが優勝経験のあるドライバーを据えている
のに対し、ルノーとジャガーは若いドライバーに賭けた布陣であり、ちょっと対照的で面白い
ですね。

それから、ジャックは最近とかく色々言われていますが、結局のところジャックをエースとし
て推しているのは、誰あろうホンダ自身なのではないか、とも思っています。リチャーズとの
不仲は相当根が深いようですし、違約金のことなどもあるんでしょうが、もしホンダが望まな
ければ、既に他のドライバーに変わっていると思うんですよ。あっ、私自身はジャックのファ
ンでも何でもないので、誤解されませんよう、そこんとこヨロシク(爆)。

Aの項目は、最近の傾向として各チームのドライバー選定基準の1つになっているため、あえ
て書いてみました。テストドライバーまで含めると、結構多いですよね。もちろん、ただ”在
籍した”だけではダメでしょうが、パニスなんかはマクラーレン時代にチームからの評価が凄
く高かったようですし、その部分をホンダやトヨタにかなり高く評価されているみたいです。
あと、ピッツォニアなんかもウィリアムズでの実績を評価されているようです。

Bの項目は、彼等のF1以前のレース実績ですが、これは現在のF1界に存在する不文律とし
ての、”F1チーム採用基準”であり、実際にライコネンを除く全てのドライバーが△以上で
基準を満たしています。(琢磨はもちろん○です)ライコネンについてちょっと書くと、彼は
極めて異例の形でF1入りしました。彼は、カートでの実績こそ豊富でしたが、F1以前の4
輪レース経験は、2000年にイギリスのフォーミュラ・ルノーを1年間戦っただけ(もちろ
ん連戦連勝でチャンピオン)に過ぎません。そんな彼が何故ザウバー入り出来たのでしょうか。
実は、ちょっとした物語があるんです。(あー、また話が大きく逸れる予感が・・・)

2000年の夏の終わり、トヨタに突然ミカ・サロを引き抜かれたペーター・ザウバーは、代
わりのドライバーとしてジェンソン・バトンに目をつけ、バトンのマネージャをしていた人物
に連絡を取ります。ところが、バトンは翌年ルノー(ベネトン)に移籍することが既に決まっ
ていたため、このマネージャはその代わりとしてライコネンを紹介します。もちろん、Fルノ
ーの経験しかないということでザウバーも最初は半信半疑、とりあえずテストに参加させまし
た。ところが、このたった1回のテストでザウバーもエンジニアも、ライコネンの才能に驚嘆
したそうです。ザウバー曰く「彼のブレーキングからコーナーに入っていく様は、ミハエルに
も匹敵する!」

いかにザウバーの受けた衝撃が大きかったかは、その後の彼の行動が物語っています。何とい
っても、当時のメインスポンサーの一つであったレッドブルが「もし、全く無名のライコネン
とかいうドライバーを採用するつもりなら、うちはスポンサーを降りる!」と言ってきたにも
関わらず、彼は迷わずライコネンとの契約を決めたのでした。さらに、ライコネンの経験不足
を心配したFIAは、スーパーライセンスの発給に難色を示します。この問題にもザウバーは
辛抱強くFIAを説き伏せ、最初の3レースに関する仮ライセンスの獲得に成功します。つま
り、最初の3レースでF1に不適格であると判断された場合は、ライセンスを剥奪されるとい
う条件付きでの発給でした。

ところがこのライコネン、その最初のレースで6位に入賞してポイントまで取り、以後誰も仮
ライセンスを話題にもしなくなります。それどころか、このデビューシーズンの中盤には、彼
の才能に惚れこんだロン・デニスが、ライコネンと翌年の契約に踏み切り、見事マクラーレン
のシートを獲得してしまうのです。これは、彼が初めての4輪レースであるFルノーで連戦連
勝していた、わずか1年後の出来事なのですから、ちょっと開いた口が塞がりませんよね。

彼のことは、多くのF1関係者が高く評価しています。フランク・ウィリアムズは「グランプ
リカーに乗るために生まれてきたような男だ」と言っていますし、元ホンダ監督であり、現・
ザウバーのテクニカルマネージャーである後藤治氏は「ライコネンには、セナに感じたのと似
たものと感じたんだ。残念ながら、マッサにはそれが感じられなかったけどね」と話していま
す。私は特に彼のファンと言う訳ではありませんが、彼がごく近い将来にF1初勝利を上げる
ことを信じている1人です。

さて、あまりに横道が長くなってしまったので、最後の項目であるCについては特に説明しま
せんが、1つだけ、ドライバーのF1デビュー年齢に注目して欲しいですね。平均的F1デビ
ュー年齢が21〜26歳であること、今年トヨタからデビューのC・ダマッタが、意外にオジ
サンドライバー(失礼)であることが分かって頂けると思います。

では、最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。ではまた、次回をお楽しみに。

<加筆修正>
あえて、日本人ドライバー版を追加しておきます(笑)。尚、引退したドライバーは現在年齢
ではなく、引退年齢を示しています。

中嶋悟    ×○×、34-38 引退
鈴木亜久里  △××、28-36 引退
片山右京   ×××、29-34 引退?、パリ・ダカで奮闘中
中野信治   ×××、25-31 CARTで活躍中(今年からIRL?)
高木虎之介  ×××、24-28 CARTで活躍中(今年からIRL)
佐藤琢磨   ××○、25-25 言わずと知れたBARテストドライバー

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