≪F1界の構造(その8)≫

ついにトヨタのニューマシンが発表されましたね。2003年シーズンの開幕に向かって、い
よいよ各チームに具体的な動きが出てきました。今年、琢磨がレースドライバーとして参戦で
きないのはとても残念ですが、F1というのは本当に色々な見所、楽しみ方があります。

琢磨にはテストを通じて、マシンと自分の両方を進化させるという重要な任務がありますから、
彼を応援しつつBARのマシンの進化を楽しむという見方もできます。また、例えば一昨年に
ミナルディで印象的なパフォーマンスをみせた後、昨年1年間、今年の琢磨と同様にレギュラー
ドライバーからテストドライバーに1歩下がって”牙を磨いていた”ルノーのフェルナンド・
アロンソが、今年どんな活躍を見せてくれるのか、注目してみるのも面白いでしょう。もちろん、
ドライバー以外にも見所は沢山あります。このシリーズではこれから開幕戦まで、なるべく今季
の見所に焦点を当てて書いていきたいと思っています。

さて今回は、既に多くの皆さんが話題に上げられている「金曜日のテスト」について考えて見ま
す。これは、F1のコストを何とか削減しようとするFIAが、各チームが毎年膨大な予算を注
ぎ込んでいるテストに制限を設けようと考え出した、今年から採用された新しいルールによるも
のなんです。

新しく決められたことを簡単に書いてみると、

①シーズン中(3/1~11/1)に限り、各チームがテストに費やせる日数を10日以内に制限
する。但し、これはテストに使用するマシンの台数を掛けた延べ日数であり、例えば常に2台での
テストを行う場合は5日以内となる。

②上記に同意したチームは、グランプリ金曜日の午前9時~11時に設けられる特別枠に、テスト
走行を行うことが可能となる。またこの時間帯に限り、テストドライバーの参加と3台目の走行も
許可される。

③金曜日のテスト走行は、上記のテスト制限に最低でも3チーム以上が同意した場合に限る。

ちなみに、この申し込みの締め切りは昨年12/15だったのですが、FIAは3チーム以上の申
し込みがあったことを公表しながら、そのチーム名は公表しませんでした。今のところ、ルノー、
ジョーダン、ミナルディの3チームだと言われていますが、これはもう少しすれば明らかにされる
でしょう。

トップチームというのは、今のようなオフシーズン中のテストでは3台同時に持ち込んだりするこ
とも珍しくありませんが、シーズン中でも2週間毎のレースの合間にそれこそ毎回のように、各地
でテストをしています。フェラーリやトヨタに至っては、プライベートテストコースさえ所有して
いますから、益々頻繁にテストすることが可能なのです。

いつだったか、フェラーリはモナコのレース期間中に、シューマッハを一度イタリアに戻らせて、
フィオラノのテストコースでシステムの確認テストをさせて、またモナコに戻してレースをさせる
という裏技までやってのけています。これは、モナコが他のグランプリと異なる変則的なスケジュ
ール(木曜日にフリー走行、金曜日は休日、土曜日に予選)であるために、金曜日のテストが可能
となったという稀な例ですが、トップチームというのはそこまでしてテストしている訳です。

これはもちろん、マシンをいかに素早く進化させていくかが勝負の分かれ目となるからで、トップ
チームのF1マシンというのは、同じマシンに見えても開幕戦と最終戦ではラップ当たり1~2秒
は違うと言われるほど、シーズン中に大きな進化を遂げます。そうしないと、トップのままではい
られないからです。そして、この進化を支えているのがシーズン中のテストなのです。

本来、F1のコストを削減するのが目的なら、テストに青天井とも言うべき予算をつぎ込んでいる
トップチームに、まず最初に制限をかけるのが筋のはずです。つまり全チームに制限を加えるとい
うことです。個人的には出来るだけ早くそうすべきだと思っていますが、FIAがこれを打ち出せ
ない背景には、自動車メーカーの強い圧力が存在します。つまり、青天井に予算をつぎ込めるチー
ム(自動車メーカー)にとっては、テスト制限など百害あって一利なし、なのですから。

しかし一方では、そうも言っていられない状況も生まれつつあります。世界的な経済状況が、自動
車メーカーにも「青天井のF1予算」を許さなくなってきているからです。ルノーがテスト制限に
同意した事がこれを如実に示していますし、フェラーリにしても親会社のフィアットが、膨大な赤
字を垂れ流し続けている事実があります。私としては、自動車メーカーがF1のコストを膨らませ
るだけ膨らませて、突然撤退していく事が最も恐れていることです。現存する7メーカーの内、3
~4メーカーが突然撤退を決めれば、F1界は大きな被害受けることでしょう。そうなる前に、
コスト削減を進める必要があるのです。

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