≪F1界の構造(その7)≫
皆さん、明けましておめでとうございます。本年も「F1界の構造」共々、よろしくお願い します。昨年末よりずっとお休みなしで働きづめだったので、ちょっとご無沙汰してしまい ましたが、ようやく新年号を書き上げることが出来ました。前号をアップした時から、次回 は新年に相応しい内容をと思っていたんですが、あいにく私の拙い知識の中ではそのような ネタが思い付きませんでしたので、こうなったら単純に量で勝負(笑)、”超長文新年号” (しかもラッキー7♪)とさせていただきます。 さて、今回は「チーム監督編」として、それぞれの監督が置かれている立場などにスポットを 当てて、現在のF1界の置かれている状況等を考えてみたいと思います。但し、例によって私 の知っている範囲でのお話ですので、間違いのご指摘や補足説明等はどうぞ遠慮なさらずに、 よろしくお願いします。 F1のチーム監督というのは、一般的にはチームの活動を全て掌握し、采配を振るう仕事を している訳ですが、一方で今のF1チームというのは企業体でもあるので、チームによって は監督がチームオーナーでもあったり、さらにはチームの創設者でもあったりします。但し、 最初にお断りしなくてはならないのは、チームオーナーと一言で言っても、実際にはチーム の株式を何割か持っていて、残りは他の出資者が保有していたりするので、ここではチーム の株式を何割か持っている人=チームオーナーと呼ぶことにします。 ☆チーム監督&チームオーナー&チーム創設者 フランク・ウィリアムズとエディ・ジョーダン、ペーター・ザウバーが該当します。 単純にチーム名からも想像できるから、分かりやすいですよね。この中でも、プライベート チームとしてトップまで駆け上がったフランクは、最初に触れるべき人物でしょう。彼は 72年にチームを設立していますが、サウジ航空等のオイルマネーをスポンサーに得てから 突然強いチームに変身し始め、私がF1を見出した82年には、既にトップチームの仲間入 りを果たしていました。 私が彼に持つイメージは、根っからのレース屋。ホンダと組んでいた86年に、不幸な交通 事故により車椅子生活を余儀なくされていますが、それ以後もレースに賭ける情熱は少しも 衰えていない、尊敬すべき人物だと思います。ちなみに、ジョーダンは91年、ザウバーは 93年からF1に参戦していますが、トップチームに上りつめるには、今の環境はあらゆる 意味で厳しいと言えるでしょう。 ☆チーム監督&チームオーナー ロン・デニス(マクラーレン)が該当します。但しマクラーレンの場合、66年にチームを 創設したのはニュージーランド出身の元F1ドライバー、ブルース・マクラーレンなのです が、現在のチーム(というより会社組織)は1980年にロン・デニスが自分のチームで あった「プロジェクト4」をマクラーレンと合併させて作った「マクラーレン・インター ナショナル」であり、その意味では彼も半分はチーム創設者であると言えます。ちなみに、 私はミナルディ(創設者はジャンカルロ・ミナルディ)のポールストッダートもチームオー ナーだと思っていたんですが、最近読んだ雑誌によると、彼は他の資産家からチームの運営 を任されているだけの”雇われ社長”なんだそうです。 ここで一つ書いておきたいのは、彼等チームオーナーと後述する”単なるチーム監督”では、 チームへのスタンスが自ずと違ってきます。彼等にとって、チームは自分の興した会社であ り、自分の分身とさえ言えるものですから、自分のチームやF1に注ぐ愛情は、後述する ”雇われ社長”とはレベルが違っていて当然です。これは私個人の考えですが、本当の意味 で縁の下でF1を支えているのは、彼等なんだと思っています。 ☆チーム監督(いわゆる雇われ社長) 上記以外の全て。つまり、ジャン・トッド(フェラーリ)、オベ・アンダーソン(トヨタ)、 フラビオ・ブリアトーレ(ルノー)で、ニキ・ラウダ→トニー・パーネル(ジャガー)、 デビッド・リチャーズ(BAR)、ポール・ストッダート(ミナルディ)の面々です。ちな みに、トヨタとルノーは既に変わっているかもしれません(自信がない)。雇われ社長とは いえ、彼等はそれぞれに優秀なマネージャーであり、F1に賭ける情熱があるのは間違い ないのですが、彼等は自動車メーカーやスポンサーの一存で簡単に首を切られる立場にあり、 F1と全く関係ない分野に”転職”する可能性があるという点で、前述したチームオーナー とは全く異なるスタンスでF1を見ているはずです。 今のF1は、自動車メーカーやスポンサーの影響力が極端に大きくなってきているので、 その筋からやってきて突然、監督に就任するパターンが増えています。ジャガーがこの典型 ですし、BARも同じ。フェラーリはちょっと事情が異なるとはいえ、ジャン・トッドに しても元プジョーのラリーチーム監督であり、その点ではデビッド・リチャーズと同じと 言えます。F1は良くマネーゲームと言われますが、私は彼等が単なるマネーゲームに うつつを抜かすことを一番恐れています。(彼等がそうだと言っている訳じゃありません) 自動車メーカーやスポンサーは、自分の都合だけで突然F1から撤退します。もちろん、 単なる営利団体である彼等にとってこれは当たり前のことであり、責められる理由は全く ありません。しかし、F1とその文化をこよなく愛し、健全な形での成長を願う1ファン として、現在の状況はかなり危機的だと感じています。これを打開していくには、F1界 全体のコストダウンしかないと信じているのですが、これについては後にこのシリーズの 中で書いていきたいと思っています。 ※訂正 公式に本文をアップした際、craftmanさんより、トヨタのオベアンダーソンもチーム オーナーの一人では?とのご指摘がありました。私も確認した訳ではありませんが、 現TMGの前身であるTTEは彼が興した会社とのことであり、TMGにおいても彼が 株式等を保有している可能性は高いと思われますので、上記の分類ではオベ・アンダー ソンは「チーム監督&チームオーナー」に入ると思われます。 |