≪F1界の構造(その13)≫

いよいよ、開幕まで3週間を切りましたね。今年は、これまでにも様々なレギュレーションが
改定され、さらに先週にも新たな改定案が示されるなど、F1界にとって非常に大きな変化の
年になりそうです。その意味では、シーズンの展開予想が立てにくいと思っているのですが、
冬のテスト等を通して色々見えてきていることもあるので、これから開幕までの間は、各チー
ムの置かれた状況などを書いていきたいと思います。まずはトップチームから。

@フェラーリ
現在のフェラーリは、豊富な予算や安定した組織運営もそうですが、次々と新技術をものにし
ていく開発陣の能力についても、本当に非の打ち所のない状態にあるようで、それが新車F
2003−GAにも現れているように感じます。もちろん、彼等には”手本”とすべきクルマ
が無いのですから、新機軸が盛り込まれるのはある意味当然なのですが、ここ数年の流れを見
ていると、彼等は車を速くしていくための多くのアイディアと、そのために必要となる技術の
開発プランを明確に持っていて、これを着実に実行してきているように感じるのです。

冬のテストを見ていても、昨年モデルに新しいパーツ等を組み込んだハイブリッドマシンで、
速いだけでなく極めて安定したタイムで多くの周回をこなしており、楽々トップタイムを記録
していましたし、先週フィオラノのテストコースで実施された新車でのテストでは、日々コー
スレコードを塗り替える速さを示しながら、大きなトラブルも一切なし。さらに言うと、今の
F2003−GAはまだ仮の姿らしく、実はフロント部分にはまだ披露されていない”秘密兵
器”があるとか・・・。やはり今年も、彼等の独走を見ることになるのでしょうか。

彼等にとって唯一の心配事は、フェラーリの親会社であるフィアットが、自動車部門をGMに
売却するという噂が出ていることでしょうか。もちろん、すぐにF1活動に影響するようなこ
とは無いでしょうが。


Aマクラーレン
ここも冬のテストでは、ハイブリッドマシンで安定してトップタイムを連発していました。
昨年のフェラーリの速さの秘密として、非常にコンパクトで且つシフト時のタイムロスを極小
化するための技術を盛り込んだギヤボックスが注目されていましたが、これの開発に携わった
人物をマクラーレンは昨年前半に引き抜いており、彼等の今年のギヤボックスも大きく進化し
ていると予想されます。

さらに、先週のテストではとても変わった、大きく波をうった形をしたフロントウィングを持
ち込んでおり、ここも色々と新機軸を用意しているのは間違いなさそうで、フェラーリを追い
かける筆頭と言って良いでしょう。但し、この5年間を見ていると、フェラーリとの一番の違
いはマシンの信頼性にありました。フェラーリは本当に信頼性を証明されたものしか、決して
レースには持ち込まないのです。もし、マクラーレンの新車にトラブルが集中してしまうよう
なら、5月末頃にはフェラーリを追いかける夢が消え去っているかもしれません。


Bウィリアムズ
ここは早くに新車を発表してテストを開始しており、しかもこれまでにかなりの走行距離を稼
いでいるという点では、既に準備が整っているという見方も出来ます。但し、心配なのはテス
ト期間を通じて、あまりタイムが良くないことです。そして、新車が走り始めてしばらく経っ
た時点でも、ハイブリッドマシンよりタイムが遅かったりと、今までの状況を見る限りでは必
ずしも”速さ”は約束されていないようです。その意味では、フェラーリを追うのはかなり厳
しそうに見えます。


Cトヨタ
はっきり言って、ここは大化けする可能性があります。というのも、新車TF103はテスト
を通じて非常に速く安定しており、タイム的にもウィリアムズを凌駕することが度々あり、こ
のチームの本来の力が発揮されれば、今年はひょっとすると・・・と思わせてくれます。もち
ろん、開幕してみないことには分かりませんが、少なくともトップ3に次ぐ位置というチーム
の目標は、既に非現実的とは言えない所まで来ているように感じます。

以上、トップチーム編でした。長文に最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。

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