≪F1界の構造(その11)≫

このところ、色々あって書く時間がなかったのとちょっとネタ切れ気味(^^ゞでもあり、遅く
なりました。最近は書き込みが減ってきてますし、私としてはなるべく開幕まで続けたいと思
っておりますので、よろしくお願いします。

さて今回は、今年から採用された新しいルールによる「予選」について考えてみたいと思いま
す。予選は今年から大きく様変わりするものの1つであり、既に多くのメディアでその違いが
紹介されていますが、まずは私なりに、昨年までのルールとの違いを簡単に書いてみます。

★昨年までのルール
@土曜日の午後1時間の中で、各ドライバーは最大12周走行できる。
但し、この12周は全てタイム計測されますが、周回数はピットからのアウトラップとインラ
ップも含まれるため、実質的なアタックラップは4周=(アウト+アタック1周+イン)×4回
となっていました。もちろん、変則的には6周=(アウト+アタック2周連続+イン)×3回
も可能でしたが、実際には圧倒的に4周アタックのパターンが多く、コース状況等によっては
3回(つまり9周)のアタックで終わる場合も多くありました。2周連続アタックは、タイヤ
がアウトラップだけでは十分に温まらない場合等に使われますが、それでも6周アタックする
ことは極めて稀なケースだったと言えます。

A予選で使用するタイヤは、金曜日の午前と午後及び土曜日午前のフリー走行の結果から1種
類のものを選択し、これを決勝も含めて使用すること。1GPに使用できるのはマシン1台に
つき最大10セットまで。(但しこれは晴天用タイヤについての規定であり、雨天用タイヤは
別のものを選ぶことが許される)


★今年のルール
@金曜日と土曜日の午後1時間の中で、各ドライバーは最大3周(金・土ともに)走行できる。
つまり、アタックラップはそれぞれの日にわずか1周しか許されません。

A決勝レースのグリッドは、土曜日の予選結果のみで決まる。但し、土曜日の予選出走順は、
金曜日の予選結果の悪い順となる。つまり、金曜日に暫定PPのドライバーは、土曜日の最後
に出走することになる。

B金曜日の予選出走順は、その時点でのポイントランキング順(開幕戦では昨年のランキング
を適用)とし、同時に2台以上の走行は認めない。つまり、今年の開幕戦の金曜日の予選では、
一番最初にミハエルがアタックすることになります。

Cタイヤは、各チーム毎に2種類のドライタイヤを選択可能となり、1GP最大10セットの
規定はこれまで通りですが、予選に使われるタイヤに関する細かい規定は不明(私が知らない
だけかも)。


では、上記のようなルールの変更により何がどう変わるのかを、私のような”脳天気F1ファ
ン”の立場で考えてみます。

@金曜日に見る楽しみが増える。
今までだと、まず金曜日のフリー走行では各チームが何をやっているのか判らないため、その
順位にどのような意味があるのかも掴めず、結果として金曜日にドキドキすることはほとんど
ありませんでした。それが、たとえ土曜日の出走順を決めるためのものとはいえ、トップドラ
イバーから順に、しかも1台ずつアタックしてくれるのですから、これは絶対に楽しくなると
思います。個人的には、スカパーで金曜日の予選も放映して欲しいぐらい。

A予選で実質的に楽しめる時間が大幅に増える。
何といっても、ファンの立場で一番嬉しいのはこれでしょう!。これまでなら、予選が開始さ
れても最初の20分ぐらいは誰も走らない上、多くのドライバーの渾身のアタックが見られる
のは、最後の10分と相場が決まっていました。ところが、今年からはフルに1時間、全ての
ドライバーのアタックを順番に見ていくことが出来るのですから、これは本当に楽しみです。
例えば昨年、琢磨の渾身のアタックが国際映像に捉えられることはほとんどありませんでした
が、今年からは少なくとも予選においては、トップチームのドライバーしか映らない、といっ
た問題は解消されると思います。これで今年琢磨が走ってくれれば・・・(笑)。

B予選がより安全になる。
これまでの予選では、常にアウトラップやインラップでスロー走行する車に混じって、アタッ
クラップを敢行する必要がありました。もちろん、全てのドライバーがクリアラップを狙って
出て行くのですが、特にコース上が混雑する予選終盤には、必ずと言っていいほど遅い車に引
っかかって、これを半ば強引に抜く場面が見られました。実はこれ、とても危険を伴うことで、
抜くドライバーと抜かれるドライバーがお互いの位置を正確に確認していないと、ちょっとし
た誤解でとんでもない事故になったりします。

このシリーズの(その4)で書きましたが、昨年のイタリアGPの予選で琢磨がライコネンと
クラッシュしたのは、まさにこのケースでした。この時琢磨は、変則的な2周連続アタックを
敢行中でしたが、マクラーレンのピットでは既に琢磨がインラップに入っていると勘違いして
いたために、ライコネンに琢磨接近の無線連絡が行われず、両者が接触した事故でした。

また、とても古い話になりますが、ジャック・ビルヌーブの父親であるジル・ビルヌーブが
30歳の若さでこの世を去ったのも、このケースの典型的な事故によるものでした。82年の
ベルギーGP、ゾルダーで渾身のアタックに入っていた彼のフェラーリは、前をスロー走行し
ていたヨッヘン・マスとの一瞬の誤解からコース上でラインが交錯、200キロ以上出ていた
赤いフェラーリはマーチに乗り上げる形で飛び上がり、コース上を何度ももんどりうっていき
ました。そして、ようやく止まったフェラーリのコクピットに、ジルの姿は無かったのです。
そう、彼は縦に回転するマシンから途中で投げ出されて、キャッチフェンスに激突していたの
でした。この時、ジャックはまだ11歳になったばかり、そんな辛い経験を持つ彼が父親と同
じF1ドライバーになったことは、やはり尊敬すべきことですよね。

また話が逸れましたが、このような危険が無くなることは、ファンだけでなくF1に関わる全
ての人々の願いですから、これが今回の予選ルールの改訂の1番のメリットなのかもしれませ
ん。

では、最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。

その10に戻る                                         その12に進む

「KEN-G図書館」に戻る