「誘拐」03a/郊外のファミレス

「お子様ランチがいいっ」
隣の席の女の子が言い出した。
「おいおい、もう6年生なんだぞ。お子様ランチは卒業しなくちゃ」
「お子様ランチがいいの〜」
「もう来年は中学生なのよ」
「でも〜」
その時、僕達のテーブルにウェイトレスが食事を運んできた。
「とんかつ定食ふたつと、お子様ランチですね」
隣の女の子がこっちを向いて
「あの子、私より大きいのにお子様ランチだよ〜」
その子の両親が困った顔でこちらを向いている。
「あのー、申し訳ありませんが、そちらのお譲ちゃん、何年生でしょうか?」
「5年生です」
その両親はほっとした表情になった。
「随分大きいですわね。うちの子は小さい方ですけど」
「そうですね、学年で一番ってほどではないですけど」
「ね、背は小さくてもおなたはお姉ちゃんなんだから」
女の子はがっかりした顔でメニューを眺め始めた。
「さ、早く食べてしまいなさい」
隣の女の子がちらちらこちらを見ている中で、僕は仕方なくスプーンをとって、 野菜で顔が描かれたピラフを食べ始めた。

僕がプリンを食べ終えると、
「車酔いされると困るからね」
と子供用酔い止めを目の前に置かれた。車酔いなんてしないよ、と思いつつも飲んだ。
「あら、これはおまけかしら?髪飾りね。でもこんなに短いと使いようがないわね。手首にでも巻いておこうね」
赤いお花のついた髪飾りのゴムを手首にはめられた。そして立ち上がって店を出た。

再び車に乗り込み、どこかに向かって走り出した。 飛ばしている車の小さな振動の中、段々眠くなってきた。 僕は割と遅くまで起きてる方なのだが、もうそんな時間なんだろうか。 それともさっきの酔い止めの薬のせいだろうか。しばらくして僕は眠り込んでしまった。

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[深く寝る]


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